井上円了の教育理念

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- 礼のうち半分を講演会の経費に充てたり、 町村の公共事業や慈善事業に寄付した。そして、
残りの半額を哲学堂の建築費や維持費に充てた。というのは、彼は哲学堂を修身教会の本
山というだけではなく、精神的な修養に役立つ公園にしようと考えていたからである。そ
の発想は西洋にある。彼は、西洋には体を養う公園と心を養う教会堂があり、人々は公園 のを哲学堂公園として実現しようとしたのである。
で半日を、教会堂で半日を過ごすことによって体と心を養っていると考え、そのようなも
こうして、四聖堂からはじまった哲学堂には、六賢台、三学亭、唯物園、唯心亭、三祖
苑などがつくられ、 やがて一般に公開されて、 彼の目的どおりの精神修養の公園となった。
修身教会の設立
井上円了は、外遊中に西洋と日本を比較し、日本の国民性を向上させなければならない
と考え、そのために道徳の普及・徹底をはかる必要を痛感した。そして、修身や道徳を教
える場を「修身教会」と名付けて、学校教育以外の民間教育・社会教育に取り組んだ。
その考え方は、欧米と日本を対比した「欧州所感」で明らかにされている。彼は第一回
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