井上円了の教育理念

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- 認可にともなって、哲学館学則という従来の内部規則は、国の定めるところにしたがっ
て「私立哲学館大学学則」に変更された。第一条で「本校は高等なる哲学、文学等を教授
する所とす」と規定し、第二条以下で新しい学制を定めている。大学部は第一科、第二科
および別科からなり修業年限は五年、専門部は教育第一科、第二科、哲学第一科、第二科
および別科からなり三年、また予科が一年と定められている。このうち第一科では哲学・
宗教関係、第二科では国語・漢文関係の教育を行うことになっているが、第二科において
も哲学や倫理などの科目が設けられていて、哲学による精神教育の重視という創立以来の
方針を堅持している。また、別科というのは、中学校や師範学校などの学歴を持たない人
のために、本科とは別の教育課程として設けられたものである。
Ⅲ 井上円了の教育理念
明治三十七年三月二十五日に哲学館同窓大会が開催された。哲学館の講堂には井上円了
ほか講師、校友、館内員多数が出席していたが、その講師の中の一人に気がついた参会者
たちの間にざわめきが走り、にわかに活気がみなぎった。一年余り前、哲学館事件で辞職
した中島徳蔵が、 再び講師として戻ってきたのである。中島は万雷の拍手に応えて登壇し、
中島流の処世法について持ち前のユーモアを交えながら講演した。
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