井上円了の教育理念

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- 会が諸般のことを自治的にやる力に乏しい時代には、やはり政府の力を借りるのが得策で
ある。医者の改良、 法律の改良、 教育の改良、 みな政府の力でできている。民間の事業とし
て放任しておくならば、 とても今日改良をみることはできない」 と述べて、 殖産興業、 富国
強兵策など、 それまでの政府主導型の路線を踏襲すべきだという意見を明らかにしていた。
ところが、哲学館事件では、政府がその強制力をもって哲学館を閉校させることをも考
えていたことから、 日本政府の私学に対する狭量な方針を思い知らされた。これによって、
彼の政府に対する考えは基本的に変わってしまった。そして、イギリス滞在中に、哲学館
のとるべき新しい方針を十分に検討してきたのであった。
専門学校令
Ⅱ 教育理念の発展
ところで、帰朝歓迎会の席で学生たちがいっている「専門学校令」とはどのようなもの だったのだろうか。
事件以前から力を伸ばしていた私立学校は、官学中心主義の政府に対して私学も高等教
育機関として認知させようと運動を続けていた。それに応じて文部省は教員無試験検定と
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