井上円了の教育理念

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- を送った。この文書は現在も外務省に保管されているが、この中で林は外務大臣小村寿太
郎に、 ミュアヘッドの文書の内容を説明し、 ミュアヘッドにはこの事件が教育上の問題であ
って、文部省の管轄であることを伝えたこと、さらに、文部省のとった処置はイギリス人
に「いたずらに思想の自由を妨げ言論を束縛するもの」と受け取られ、また一般には読む
ことを許されている本が「一個の学校」では許可されないというのは不条理であり、干渉
しすぎだというのが彼らの見方であり、 そのため外交上の影響は少なくないと伝えている。
林の報告が文部省に伝達されると、 七月に文部大臣名でミュアヘッドに書簡が送られた。
この書簡では、特典は「教授管理の最も完全」な学校にのみ与えられるものであって、哲
学館がそれに該当しないので取り消したとして、問題点を教授上のことに限定し、ミュア
ヘッドの学説の是非を問題にしているのではないと弁明している。政府としては、哲学館
事件の展開が日英同盟に影響しないよう、配慮しなければならなかったのである。
ロ ンド ン の井上円了
事件の知らせを受けた井上円了は、すでに述べたようにその心境を和歌に託して送った
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