井上円了の教育理念

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- 学問的論争型──事件の発端となったミュアヘッドの学説に関する論争。
代表的なものは『倫理学』の訳者桑木厳翼と一高ドイツ語教師丸山通一の間で数回にわ
たって交わされた論争である。桑木は、動機が善であるならば弑逆といえども認められる
という立場で、隈本は動機論を間違って解釈していると述べた。これに対して丸山は、動
機がいかに善であってもどのような手段をとるかは問題であると反論し、日本では机上の なければならないと教授上の問題も指摘した。
空論にすぎないとしても、学生は決して賢人ばかりではないので、教えるときには注意し
丁酉倫理会の見解
これまで見てきたように、 哲学館事件はマスコミを騒がせ、 大きな社会問題に発展した。
そこで展開される論争には果てしがないように思われたが、 一つの帰着点を示したのは 「丁
酉(ていゆう)倫理会」の見解であった。この会は当時の倫理学界におけるもっとも権威あ うなものであった。
る機関と認められていた。三月十日に発表された「哲学館事件に対する意見」はつぎのよ
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