井上円了の教育理念

- ページ: 123
- 見を求められたが、以前から井上円了にうらみを抱いていたので、十分な検討もせずに処
分すべきだと答えた、という報道があった。井上哲次郎は、井上円了と学説上の見解は異
なるが、今回のことには関知していないと反論している。ほかにも、中島と隈本は以前激
論したことがあるとか、また隈本は功名心から文部大臣の私学撲滅策に迎合して個人的に
事件を仕立てたのだという真偽の定かでないものまである。 る批判である。
哲 学 館 の 対 応 批 判 型─ ─ 哲 学 館 が 事 件 に 関 す る い っ さ い の 行 動 や 発 言 を し な い こ と に 対 す
学生が処分反対の公開演説会を予定していたが、 ロンドンの井上円了から「静粛にせよ」
という電報が届いたため中止したということもあった。また、ある新聞が卒業生はなぜ抗
議しないのかと指摘したのに対して、例の答案を書いた加藤三雄は、館主の不在、哲学館
Ⅱ 教育理念の発展
の立場や自分の家族のことを考えて沈黙していると回答している。こうした哲学館の態度
は、外部の人々には理解しにくいことであった。 『太陽』は「哲学館卒業生はいかに卑屈
なるかよ。自家の権利を蹂躙せられて、何らの反抗すら試みざるは」と、その優柔不断な
態度を批難している。こういう声は決して少なくなかった。
119
- ▲TOP