井上円了の教育理念

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- 注意だというような、ささいな理由をもって哲学館を厳罰に処したのは、文部省の偽忠君
偽愛国と私学撲滅政策によるものだと主張している。同様の論調は数多い。 中心に論じている。
また『六合雑誌』 『教育学術界』 『中央公論』などの雑誌では、私学に対する排斥政策を
『朝日新聞』は処分の内容を取り上げて、たとえ制裁を加えるにしても、館主に注意を
与え、中島講師を解職すれば十分だし、また検定を無効にするのは答案に不穏当な引例を は冷酷すぎるとしている。
した卒業生一人だけで足りることで、哲学館から無試験検定の特権のすべてを剥奪したの
学問の自由主張型──これも文部省を批難しているが、論点は哲学館を処分したのは学問
の自由を犯すもので、処分自体が不当だということにある。
Ⅱ 教育理念の発展
この型の意見を要約するとつぎのようになる。倫理学は学説を教授するもので、実践道
徳を教えるものではない。しかも、ミュアヘッドの学説はもっとも進歩したものとして広
く支持され、問題となっている教科書は官立学校でも使用されている。学問上の理論とい
うものはあくまでも世界的なものであって、それを研究したり教授したりすることは、官
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