井上円了の教育理念

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- 文部省の見解
ま ず、 『読売新聞』に隈本有尚の反論が掲載された。隈本は「もし目的が善ならば手段
は構わぬとすれば、伊庭想太郎や島田一郎、来島恒喜、西野文太郎も否認されぬわけとな
り、日本の国体上容易ならぬことになりましょうから、学説は学説として、講師たる人は
学生の誤解を避けるため、説明を加え、批評を添えねばなりませんが、これをせぬのは注
意を欠いたもので、文部省ではこれを過失と認めたのであります」と主張した。ここに出
てくる人物は、伊庭想太郎は星亨元逓相刺殺事件、島田一郎は大久保利道参議斬殺事件、 いずれもテロリストである。
Ⅱ 教育理念の発展
来島恒喜は大隈重信外相襲撃事件、西野文太郎は森有礼文相刺殺事件のそれぞれ犯人で、
中島徳蔵はこれに対して「文部省視学官の言果して真ならば」と題した文章で、問題の た。
焦点が教授法から学説上のことに変わったことを指摘し、学説上の問題をからめて反論し
ここにいたって、文部省の見解が二月十六日付『時事新報』に「哲学館事件に関する文
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