井上円了の教育理念

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- して奔走したようである。年を越した三十六年一月十八日、 加藤弘之を訪ねて助言を求め、 されている。
十八日と十九日には岡田良平を訪ねたが、結局面会することはできなかった、と日記に記
一月二十二日、小石川区長名で四人の学生の検定不合格の通知が届いた。
哲学館の対応
認可取消は卒業試験受験者四名だけの問題ではなく、この影響は教育部第一科(倫理・教
育)と第二科 (国語・漢文)の三学級の合計八十三名に及んでいた。事件発生直後に、学校側
はこれら在学生を講堂に集め、今後特典がなくなることを告げ、進路については転校も可
能であることを話した。これによって、学生の一部は御茶ノ水高等師範学校などに転校し
てしまい、約半数にまで減ったともいわれる。私立学校発展の条件の一つであった無試験
検定の認可を取り消されたことによって、哲学館は危機に追い込まれたのである。
哲学館は、館主が不在のため「本館出身にして、本館に関係せる者は一同協議の上謹慎
の意を表し、慎重の態度を取ることに決議いたし候間、すべて該事件に関しては何らの意
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