井上円了の教育理念

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- ⑵ 教科書には国体上不都合な内容が含まれていて、もし卒業生がそれを中学校や師 ⑶ 教師が不都合な考えを持っている。
範学校で教えるとすれば容易ならざることである。
これらは哲学館が文部省に提出した文書、 あるいは中島が哲学館に提出した文書からも、
また学生の答案に不都合な文句が引用されていて、しかもその答案が最高点を取っている
ことからも明白である。したがって、このような教師を使っている哲学館の罪は重い。本
来ならば閉鎖を命じるところだが、哲学館の内情も察して、認可取消の命令で済ませるこ
とにした。さらに、倫理科主任教授は責任をとって辞任すべきである。
これは非公式の訪問であって、野尻が告げたような理由は文書にはなっていない。
十二月十八日、 文部省から正式に認可取消が通知された。 文部大臣菊池大麓から館主井上
Ⅱ 教育理念の発展
円了宛で「貴館教育部第一科および第二科卒業生に対し明治三十二年文部省令第二十五号
第一条取扱を与うるの件は自今取消す 明治三十五年十二月十三日」 という内容であった。
これによって哲学館事件は公式に発生したことになる。
中島は十二月十三日付で哲学館を辞任した。しかし、その後もこの問題を解決しようと
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