大学院の研修で東松島へ
漁業従事者の方々からお話を伺い、自分たちも船に乗って海に出ました。東松島での学びは今なお心に深く刻まれています。
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学部在学中は大学祭実行委員などの課外活動に力を入れていたが、4年次に調理学研究室に所属し、研究の面白さに目覚める。大学院進学後は自分の知りたいことを主体的に追究し、漁業の現場を訪ねて知見を深めた。2024年にリニューアルされた朝霞キャンパスの学生食堂「Umart!」にて運営チームのリーダーを務め、産学連携でのメニュー考案や食材選定にも取り組んだ。広告業界で働き、いつか「食」の魅力を発信する仕事をするのが夢だという。
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食環境科学部を志望したのは、「食べることが好き」というシンプルな理由からです。特に興味を持った「調理学」は、加熱や発酵といった調理を通じて食品に起こる変化を科学的に分析する学問で、生活に直結している点が面白いと感じました。
ただ、4年次に研究室に所属するまでは、大学祭実行委員などの課外活動に積極的に取り組んでいたこともあり、学業に対してそこまで熱心というわけではありませんでした。実験の授業は楽しかったのですが、「指示されたことを実行する」という受け身の姿勢で取り組むことも多かったように思います。
しかし、研究室に所属し先生との距離が近づいたことで、気になったことをどんどん質問できる環境になりました。先生は私の思った疑問を解決する手段を一緒に考えてくださり、できることの幅が一気に広がりました。例えば、「食パンのもちもち感をパンの成分に着目することで数値化できないだろうか」など、自分が「知りたい」と思ったことを確かめる方法を考えるプロセスはわくわくして、実験でデータを集めて考察する研究活動はものすごく奥が深いことだと気づきました。主体的に取り組めば研究はこんなに面白いのに、受け身の姿勢でいた私はなんてもったいないことをしていたのだろう。「私はもっと研究がしたい!」そう後悔する気持ちから、就職活動を中断し、大学院への進学を決意しました。
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研究と並行して力を入れたのが、朝霞キャンパスに新設された学生食堂を食環境科学部の学生主体で運営する「Umart!」の取り組みです。50人ほどの学生で始まったプロジェクトでリーダーを務め、「食について学んでいる私たちが運営する学食はこうありたい」という学食の名称やロゴを含めたコンセプトを考えるところから活動を始めました。
「おいしさ」と「できたての臨場感」を感じてもらおうと、使う食器にもこだわり、南部鉄器の鉄鍋を用いたメニューを考案。同時に食器産業の現状を学び、岐阜県多治見市の美濃焼の産地にも足を運びました。メニューや食材に関しては、食品製造を専門とする企業の方々と連携して話し合いを重ねました。一部のメニューでは地域の農園で採れた野菜を使用して、自分たちも畑を借りて野菜づくりの面白さや難しさを体験しました。厨房での調理に学生スタッフが従事しているのも「Umart!」ならではの特色です。
学生目線では「おいしいものを食べたい」という消費者視点に留まりがちなところを、「お客様にどんな価値を提供したいのか」「原価と利益を考慮した上で値段はいくらにすればよいのか」といった経営者目線での考え方で実践できたのは大きな収穫でした。「Umart!」に関わる後輩たちは100人を超え、学生が主体的に「食」×「大学」の新たな可能性に挑戦していける土壌づくりができたことを誇りに思っています。
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大学院に進学してからは、学会発表や論文執筆などで他の研究者の方々と情報交換をする機会も増えました。先行研究から学ぶことも多く、一つひとつの研究の蓄積が新しい研究につながっていることをひしひしと感じました。研究を通して学べることは知識だけでなく、実験に必要な思考のフレームワークや言語化のスキル、コミュニケーション能力など幅広く、それはどんなフィールドでも役に立つ一生ものだと思います。
大学院の研修では東松島を訪れ、漁業に従事される方々から直接お話を伺い、船で海に出る体験もすることができました。一次産業の現況を肌で感じたことで、日本の食文化を守るにはもっと多くの人に食に関心を持ってもらう必要があると感じるようになり、そのために自分には何ができるのかを就職活動中はずっと考えていました。
広告業界を志望するようになったのは、調理学研究室で先生の書籍出版のお手伝いをしたことがきっかけです。伝えたいメッセージを読者に届けるために、皆で力を合わせて一つのものを創り上げていくことに面白さを感じ、「伝える」仕事や「創る」仕事に興味を持つようになりました。将来は「食」の魅力を発信できるようになることで、東洋大学で「食」をきっかけに得られた数々の体験から得たものを世の中に還元していきたいです。
漁業従事者の方々からお話を伺い、自分たちも船に乗って海に出ました。東松島での学びは今なお心に深く刻まれています。
朝霞キャンパスへの移転前は、群馬県の板倉キャンパスに5年間通いました。フィナーレの花火は雷祭の誇りです。
一緒に学食の立ち上げに取り組んだ仲間と、「Umart!」の「U」のポーズで。私の大好きなメンバーです!