話し手
西原 廉太
立教大学 総長
※所属・役職等は、2026年4月取材当時のものです。

立教大学講師で芸術社会学者の河原啓子先生は、芸術作品とは「芸術家の沈思黙考の痕跡」であるとおっしゃいました。
では、芸術を鑑賞する側はどうでしょう。作品を前に、作者の意図を深く考えてみたり、直感的に心に響くものを感じ取ったりと、そこにはひそやかな内的思索が引き起こされます。
こうした、人間の頭の中で巡る思考や対話は、記録に残さない限りその場で消えてしまうもの。AIが学習するような「データ」として蓄積されることはありません。
また、数学者の藤原正彦先生は、次のように語られました。
「数学にとって重要なのは、論理よりも美を発見する感受性だ」。そしてその感受性は、人間だれしもが持つ(かつ、AIには持ち得ない)「死」という有限性から生じるものだと。命に限りがあるから、私たちは悲しみや恐れ、儚さを感じる。それが情緒、感受性です。
数学で発見されてきた幾多の真理は、まさに人間固有の美的感覚により導き出されたもの。芸術も学問も、その根底には、データ化できない人間ならではの営みが存在しています。

今日持ち帰りたい学び
AIの学習データが取りこぼす思考の揺らぎや沈黙の時間。
AIが持ちえない情緒や美的感性、身体性。
西原総長は、こういった人間特有の感覚や経験を育み、そこから学ぶ力を養うことこそが高等教育の重要な使命だと考えます。
これらの感覚や経験は、学生時代ならではの体験でも形作られていきます。
歩き、旅をして、さまざまな出会いをし、自分の目で確かめる。
立ち止まって、自分の頭で考える。
こうした時間の積み重ねが、人間を人間たらしめるのです。


小石があった場所
いのちは、つながっている。
あなたの「感性」が、地球の未来をつなぐ。
言葉にならないリアルな
経験を学生時代に


