井上円了の教育理念

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- 応義塾の福沢諭吉はアメリカとヨーロッパ、同志社の新島襄はアメリカ、早稲田の小野梓
は中国とイギリス、明治の岸本辰雄はフランスと、それぞれの国で学んでいた。
井上円了は生涯に三度の海外旅行を経験しているが、 その範囲は全世界に及んでいる(表
4) 。また、中国、朝鮮などに講演旅行をしている。第一回の外遊は哲学館開設の翌年、
明治二十一年(一八八八年)六月から一年間にわたって行われ、目的は欧米の政教関係およ び東洋学の研究状況を視察・調査することであった。
この外遊は、彼にとって、書籍などで伝えられていた欧米諸国の「列強」の現実を肌で
感じ、日本と西洋の関係を相対的に見直す機会であり、また、それまでに学習した知識を
確認し、探究した思想を検討するという意味もあった。彼は外遊によって得られた見聞や を練りあげていった。
深められた確信によって、哲学館の教育と日本の現実の改革とを関連づけ、その教育構想
外遊 の経過
六月九日、留守中の哲学館を棚橋一郎に託した井上円了は、イギリスの船に乗って、横
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