井上円了の教育理念

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- ずしもよいことではない(いや、企業も同じかもしれない) 。空疎化されてならぬもので が今日の課題となる。
あれば、大衆化を余儀なくされた大学がそのなかでこれを実質化する工夫をどう進めるか
歴史はそのつど現在が作る。現在の人々が作る──前方に向ってだけでなく、後方に向
っても。過去の知られた事実への現在の意味付与において歴史は成り立ち、それを教訓と
する同じ現在の意味付与において踏み出される未来への歩みが歴史となるからである。伝
統もそうである。東洋大学は第二世紀入りを控えた大きな節目の今、その歴史と伝統の大
枠を作り証示する又とない時に際会している。客観的情勢も有利と思われる。
こう考えるとき、改めて学祖円了博士の志と教育理念を思う。明治二十年の時勢とその
時代の人である彼と、昭和六十二年の今の時勢とわれわれとの間には、否むべくもないあ
らゆる違いがあるにもかかわらず、幸いにもそれを越えて、学校・社会・家庭教育を通じ
て在野の教育の事業を生涯の使命とした彼の教育理念のうちには、われわれの共鳴を呼び である。
おこすものがあり、大学の歴史と伝統に定位するにふさわしいと思われるものがあるから
序
昭和六十二年一月
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