井上円了の教育理念

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- 序──歴史 はそ の つ ど現在が作る
飯島宗享
時は多くのものを変える。しかし時が容易に変ええないもの、変わらないものをも、時
は示す。また時は、不可逆的ではあるにしても、しばしば回帰的に変えることもする。時
がと云うが、その多くは時にあって人が変えるのである。
百年の歳月は創立時の哲学館を今日の東洋大学に変えた。その間のさまざまな出来事、
曲折の足跡は、 一八八七年─一九八七年の間の日本と世界の波瀾に富む推移、 人々の知見、
感覚、ものの見方・考え方の変遷にともなわれている。この激動の百年の時に耐えたとい
うことは、それだけでも慶賀に値いすることであり、大学を挙げてこの節目を祝いたい。
他面、その百年が変わらない何を東洋大学において明示したかとなると、いささか心も
とない。事情は諸大学とも同様である。それぞれの大学に学祖があり、建学の精神と称さ
れるものがあるが、おおむね空疎化して今日の大学の実状はいずれもそれを証示してはい
ない。巨大化がこの空疎化を招いたのである。大学は企業とは異なり大きくなることが必
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