未来を哲学する、東洋大学


学校法人東洋大学 理事長
安齋 隆
Profile
1941年生まれ。東北大学法学部卒業。日本銀行、(株)日本長期信用銀行(現・(株)新生銀行)頭取、(株)アイワイバンク銀行(現・(株)セブン銀行)社長などを経て、2009年12月学校法人東洋大学理事に就任し、2018年12月から現職。

東洋大学 学長
矢口 悦子
Profile
1956年生まれ。お茶の水女子大学大学院人間文化研究科(博士課程)単位取得満期退学。博士(人文科学)。専門分野は社会教育学・生涯学習論。複数大学の非常勤講師および他大学教授を経て、2003年4月から東洋大学文学部教授。文学部長などを歴任し、2020年4月から現職。
from Chairperson
Anzai Takashi

真の目的を見定めて
未来のために行動する
学校法人東洋大学 理事長 安齋 隆
人類を含む地球上のあらゆる動植物は、深刻な困難に直面しています。地球温暖化による異常気象、頻発する災害や飢饉--それは単なる環境問題にとどまらず、社会の分断や不安の連鎖をも引き起こしています。これまでの地球の歴史を俯瞰した時、私たち人類は、重要な岐路に立たされているといえるでしょう。人類は今後も破壊の道を歩み続けるのか、それとも地球の未来を守るのか、選択が問われています。私自身は、国連が提唱するSDGsの理念に共鳴し、生きとし生けるものすべてのために行動していきたいと考えています。
「誰のために行動するのか」を見失わずに、真摯に向き合うこと。それは大学経営においても同様です。大学が向き合う相手は、他でもない「学生」。東洋大学は、常に学生を中心に据え、教職員が一丸となって教育・研究に取り組んでいます。そして、学校法人東洋大学は新たな中期計画「TOYO GRAND DESIGN 2025-2029」を策定しました。創立者 井上円了の志を現在に受け継ぎ、先行き不透明な現代社会において、「いま、何をなすべきか」という問いに対する私たちの答えを、この計画に込めました。私が学生に期待するのは、自身の生き方を真剣に考えることです。東洋大学での学びを通じて、自らの人生を切り拓く力を育んでほしいと願っています。

充実した環境で
学びを深める人間力を育てる大学へ
技術革新が著しい現代社会においては、学生のニーズも時代と共に変化します。大学はその変化を的確に見極め、柔軟に対応する経営方針を打ち出していかねばなりません。また、大学は学生や社会からの期待と信頼を背負う存在です。その信頼に応え続けるためには、単に学問を教えるだけでなく、人間としての強さも育む必要があります。どれだけ豊富な知識を持っていても、人の良さから犯罪に巻き込まれてしまうようでは、人間性を育むという教育機関の本来の役割を果たしているとは言えません。自らを守る力、困難に立ち向かうしなやかな強さを備えた心の教育も欠かせないのです。
こうした観点から、学校法人東洋大学では、東洋大学における「総合知」教育をはじめ、附属校や幼稚園においても、それぞれの段階に応じた“学習者本位の教育”を充実させ、本質を見極め、深く思考する力を育んでいます。
創立者 井上円了が特に尊重した東西の4人の哲学者「四聖」のうちの一人が釈迦です。釈迦は、「心身一如」つまり心と身体は一つだと説きました。この教えを現代に受け継ぎ、東洋大学ではスポーツを通じて、心と身体の両面から学生の成長を支えています。競技に打ち込む学生も、それを応援する学生も、大学全体が一つになって全力を尽くします。そんな学生たちのひたむきな姿が、私自身の大きなモチベーションです。これからも学生たちのために、全力で大学改革に取り組んでいきます。

from President
Yaguchi Etsuko

現代社会を生き抜くために
自己の哲学を養う
東洋大学 学長 矢口 悦子
日本では、18歳人口の減少が続いています。今後の動向をしっかりと理解したうえで、私立大学として学問研究を通じて誠実に向き合っていくことが私たちの使命だと考えています。大学が高等教育機関であり続けるためには、基礎学力を備えた学生の確保が重要になります。近年学力試験を課さない入試制度が増加する中、東洋大学では年内入試においても、その一つとして基礎学力を問う入試を導入しました。これは、日々の学びを地道に積み重ねてきた学生を正当に評価し、受け入れることを目的とした制度です。
AIが急速に普及する現代において、東洋大学が育成を目指すのは次のような力を持った人材です。第一に、AIが提供する情報の正しさを検証できる力。第二に、その情報をもとに倫理的に判断して行動する力です。学問を通じて誤情報を見抜く目を養い、他者への影響を踏まえたうえで自律的に判断することは、本学が大切にしている「哲学する力」とも深く結びついています。哲学とは、他者の考えとも向き合いながら、自分なりの答えを掘り下げていくことです。そこには「正解」も「不正解」もありません。粘り強く考え、問い続けることが哲学であり、大学での学びの本質ではないでしょうか。
また、教育理念の一つに「主体的に社会の課題に取り組む」というものがあります。ここでの主体性とは単に自ら望んで行動することだけではありません。誰かのために行動したことで感謝され、喜びを感じる。そうした体験を重ねながら、他者との関係において自分の存在を自覚することの積み重ねが、主体性を育むことにつながるわけです。

対話から生まれる新しい学び
すべての学生に知の扉を開く
2025年4月から「総合知」教育が始まりました。きっかけは、学生の声でした。「ある先生の授業を楽しみにしていたのに、キャンパスが違って受けられなかった」。この言葉にショックを受けた私たちは、東洋大学が誇る豊富な知の資源に全学生がアクセスできる環境を作りたいと考えました。その結果、600科目以上が学部やキャンパスの垣根を超えて履修可能になったのです。関心に沿った学びとの出会いをサポートするため、AIが学生の属性や専門性を踏まえておすすめの科目を提示する「総合知アプリ」も学内で開発しました。一人ひとりが新しい知をデザインし、社会課題の解決に貢献する人材へと育つことを期待しています。
また、あらゆる「いのち」の調和を目指す研究を推進する「いのち総合研究機構」も新たに設置しました。「東洋大学重点研究推進プログラム」の枠組みに哲学的・倫理的視点を加えながら、複合的な観点で研究の価値を高め、一層の社会貢献を追究していきます。
このように多くの大学改革を進める中で、私が大切にしているのが「対話」です。これからも積極的なコミュニケーションを大切にしながら、より良い大学づくりを目指してチャレンジを続けていきます。
