生命科学研究科博士後期課程の院生2名が2023年度日本学術振興会特別研究員(DC2)に採用内定となりました

日本学術振興会特別研究員(DC2)に本学生命科学研究科博士後期課程1年の赤羽根健生さん、岡崎夏鈴さんが採用内定となりました。
上記2名はそれぞれの研究課題に特別研究員として日本学術振興会から奨励金を受け、研究を進めていく予定です。

※参考 日本学術振興会HP
https://www.jsps.go.jp/j-pd/pd_gaiyo.html

なお、今回の採用内定に併せてお二人にインタビューを行いました。

氏名:赤羽根 健生(植物生理学研究室 廣津直樹 教授
研究課題:イネ粒重抑制酵素のアンタゴニストは玄米収量を向上させるか?

―――どのような研究になるのでしょうか?
イネはアジアを中心に世界人口の半数以上の主食であり、増大する食料需要に対してその収量増加が求められています。イネの収量は、土地面積当たりの穂数、穂当たりの籾数、粒重および登熟歩合の積で表すことができます。その中で、イネのTHOUSAND-GRAIN WEIGHT 6 (TGW6) タンパク質は、粒重を抑制する「リミッター」として収量にネガティブに作用していることが知られています。今回ご採択いただいた研究課題は、このTGW6タンパク質のリミッター作用を阻害する薬剤を開発するというもので、食糧問題の最前線である発展途上国でも応用可能な簡便な手法でイネの収量を向上させることを見据えた研究です。本研究課題が完遂した際は、作物科学分野で同定された新規タンパク質をターゲットとする創薬によって、作物科学とタンパク質科学の異分野融合の有効性を示すことができると考えています。また、農学研究で得られた成果の社会実装を加速化し、ひいてはSDGs項目2の「飢餓をゼロに」の達成にも貢献できると期待しています。

―――これからのキャリアについて目標を教えてください。
本学創設者の井上円了先生は、哲学には知識を追求して真理を解明する「向上門」と、学んだことを駆使して人々に利する「向下門」があるとし、「向上するは向下せんためなり」 (他者のために自己を磨く) という言葉を残しています。そこで私は、諸学の基礎となる哲学の精神をもとに、飢餓や栄養欠乏といった社会的な課題に挑戦する研究者を目指していきたいと考えています。そのために、多様な知見を吸収するための複眼的視点を獲得することや、地球規模の課題に挑戦するにあたり必要な国際感覚や外国語での対話力など、土台となる様々な要素を身につけることにチャレンジしていきたいです。最終的には、自立した研究者として、国内外の研究機関で活躍したいと考えています。

―――最後に一言お願いします。
この度は、名誉ある特別研究員に採用内定をいただき、身に余る光栄であると共に、改めて身の引き締まる思いです。「研究」というと、研究室に閉じこもり、一人で黙々と作業に没頭するようなイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんが、実際は多くの方々に支えられて成り立っています。今回の内定も、日頃より多くのご指導ご鞭撻をいただいている生命科の廣津直樹先生や食環境科の加藤悦子先生をはじめ、皆様にお力添えをいただいたおかげです。この場をお借りして、厚く御礼申し上げます。また、特別研究員の名に恥じぬよう、より一層精進を重ねて参りますので、今後とも変わらぬご支援のほどよろしくお願いします。


氏名:岡崎 夏鈴(植物生長制御研究室 梅原三貴久 教授
研究課題:切れば切るだけ増殖する植物の不定芽形成開始スイッチの特定

―――どのような研究になるのでしょうか?
種子を得にくい植物、絶滅危惧の植物、遺伝子組換え植物などを増殖させるには、植物組織の一部からクローンを形成させる、「植物の組織培養」という技術を用います。多くの植物では植物組織から新しい芽を形成させるためには、植物が生長するための基本的な栄養の他に、芽の形成に必要な植物ホルモンを生育培地に添加する必要があります。しかし、添加する植物ホルモンの量や種類は植物種によって異なるため、培養条件の検討は容易ではありません。現在、私は植物の組織培養をより簡易的にするために植物ホルモン無添加で、植物の茎を切り出すだけで簡単に新しい芽を形成する植物を用いて、芽の再生メカニズムについて研究しています。この植物は茎が切られたことを合図に芽の形成に必要な植物ホルモンを自前で産生し始めます。しかし、植物の組織が切られてから、どのようにその植物ホルモンを作り始めるかは分かっていません。私は特別研究員の採用期間中に、その植物ホルモンの産生を促進する新規因子を特定することを目標としています。将来的にはその新規因子をほかの植物に応用することで、植物組織を切り出すだけで簡単にクローンを増殖できるような、植物の組織培養にブレイクスルーを起こしたいと考えています。

―――これからのキャリアについて目標を教えてください。
私は将来、世界規模で発生している食糧不足の解決や自然環境の維持に貢献し、世界の人々の生活を豊かにしたいと考えています。そのために、植物の発生・生長メカニズムに関する研究を通じて、植物の効率的な増殖・保全を実現させ、国際的に活躍できる女性研究者を目指しています。特別研究員の採用終了後は、研究所での研究員を目指しています。固定概念に捉われず、挑戦的な研究をしていくためには物事を多角的かつ柔軟に捉える力が必要だと考えています。そこで、国内だけにとどまらず、海外で様々な考えを持つ方とも一緒に研究をしていきたいと思っています。失敗を恐れず様々なことに果敢にチャレンジしていきたいです。

―――最後に一言お願いします。
今回、特別研究員の内定をいただけたのは、指導教員の先生をはじめ、共同研究で関わってくださった皆様、研究をサポートしてくださった先輩方や後輩、東洋大学、家族など、非常に多くの方のお力添えいただいたことで実現したものです。また、今年1年間、JSTの次世代研究者挑戦的研究プログラムで研究に集中できる環境があったからこそ、研究を大きく進めることができました。研究を遂行するにあたり関わってくださった全ての方への感謝の気持ちを念頭に、また、研究の楽しさを忘れずに、特別研究員としての2年間でさらに研究を発展させていきたいと思います。特別研究員の名にふさわしい研究者になれるように努力を惜しまず、日々成長していきます。




内定、おめでとうございます。

※なお、両名は東洋大学次世代研究者挑戦的プログラム「人間の安全保障分野における研究成果の社会実装支援プロジェクト」にも採択をされており、本学広報誌「東洋大学報 268号(2022年12月発行)」にも二人の紹介がされています。
東洋大学報のページはこちら。"

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