夢の舞台が教えてくれた、
“自分の水泳”と向き合う大切さ

競泳 女子4×100mフリーリレー出場

酒井 夏海

SAKAI NATSUMI

全てをかけた大舞台での“一瞬の勝負”。

東京五輪を終えた感想を教えてください。

2016年に日本選手団最年少で出場したリオ大会に続き、私にとって2回目の五輪は「一瞬だった」というのが率直な感想です。あっという間ではありましたが、五輪独特の空気感は印象的で、まるで日本ではないように感じました。レース後は予選敗退の悔しさと「自分にできることがもっとあったのではないか」とやりきれない気持ちが残りました。

決勝進出まであと0秒27、日本記録更新にはあと0秒03という本当に惜しい結果でした。酒井選手は第3泳者として出場されましたが、レースについて何か戦略は立てていたのでしょうか。

迷いが生じることが多いので、普段からあまりレースプランは考えていません。私はその時の感覚で泳ぐことが多いのですが、レースへの挑み方は選手それぞれで異なり、同じリレーメンバーの五十嵐選手、池江選手、大本選手でも違います。東京大会出場が決まってから、リレーメンバーと合同で練習する機会も増えて、その違いを実感しました。レース前の準備だけでなく、練習の仕方や考え方などの違いを知ることができ、学びの多い貴重な時間でした。私は何事も考えすぎてしまう性格なのですが、もう少し楽観視することも必要だと気づけたことは特に大きな収穫です。

リレーメンバー以外との交流もあったのでしょうか。

大会期間中はレースメンバー以外の競泳選手とも交流する機会がありました。そのおかげで試合前にリラックスすることもできましたし、良い刺激にもなりました。選手村の滞在日数が限られ、他の競技の選手とはお話しすることができなかったのが残念ですが、今後機会があればさまざまなアスリートの方と交流して学びを得たいです。

“自然体”が最高の
パフォーマンスを生む。

酒井選手ならではの試合前ルーティンはありますか。

ルーティンとして決めた行動がもしできなかった時に私はネガティブな気持ちになってしまうと思うので、あえてルーティンは作らないようにしています。東京大会のレース前も「今までの経験から自然と身体が動くだろうから、身を任せよう」と気負うことなく構えていました。ルーティンとは少し異なりますが、私は餡子が好きで羊羹をどの試合でも必ず持って行きます。しかし、試合前に好きなものばかり食べるわけにはいきませんので、自炊をして栄養面には気を遣っています。あと、日頃からストレッチは欠かせません。特に重点的に行うのは胸郭まわり。パフォーマンスにも影響する部分なので、ポールなどを使ってしっかりと伸ばすようにしています。

食事管理やハードな練習を大変に感じることもあると思いますが、独自のストレス解消法はありますか。

何かを忘れたい時や何も考えたくない時には塗り絵に没頭します。幼い頃から塗り絵がずっと好きでしたが、高校生になり気持ちが再燃しました。じっくり時間をかけて一つの作品を仕上げることで感じる達成感はひとしおです。

自分に正直に、水泳と向き合う。

今後の目標について教えてください。

時間をかけて水泳と向き合いたいと思っています。日本代表に入り、世界を舞台に戦いたいという気持ちはありますが、それ以上に今大切にしたいのは“より水泳を楽しむ”こと。これまで「代表入り」を一番に考えて取り組んできましたが、心の底から納得できるような泳ぎができていなかったように感じます。自分に嘘をつかず、満足がいく泳ぎに達したその先で理想の結果が生まれる。そう信じて、今後もさらなる高みに向かって練習に取り組みたいと思います。

INTERVIEW MOVIE

酒井夏海選手 インタビュー動画

PROFILE

酒井 夏海 SAKAI Natsumi

東洋大学
法学部企業法学科
 2年(大会出場時)
水泳部所属

2001年6月19日生まれ。埼玉県出身。武南高等学校卒業。2016年、リオ五輪に日本選手団最年少の15歳でメドレーリレーの代表選手として出場。175cmの長身を生かした伸びやかな泳ぎが特徴。2020年の日本学生選手権(インカレ)では、4×100mフリーリレー・メドレーリレー優勝、4×200mの8継では大会新記録で優勝という好成績をおさめた。東京五輪では4×100mリレーに、五十嵐千尋、池江璃花子、大本里佳と出場。決勝進出には惜しくも0秒27届かなかったが、今後も世界に挑戦する泳ぎが期待される。