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TOYO people:ライフデザイン学部生活支援学科 高野龍昭准教授

TOYO people:ライフデザイン学部生活支援学科 高野龍昭准教授

2015年10月2日更新

高齢者福祉と介護の中核的人材の輩出へ

ライフデザイン学部 生活支援学科 高野龍昭准教授 
ライフデザイン学部 生活支援学科 高野龍昭准教授

医療ソーシャルワーカーや社会福祉士、ケアマネジャーとして、19年にわたり高齢者の福祉や介護の実践現場に携わってきた高野龍昭准教授。次世代の介護専門職などを育てる立場から、日本の高齢者福祉や介護のあり方、学生たちへの期待を語っていただきました。

就職を契機に高齢者福祉や介護にかかわる

学生時代の私は、高齢者福祉や介護にあまり関心を抱いてはいませんでした。当時(80年代前半)は「校内暴力」や「拒食症」といった言葉をよく耳にしていたように、子どもたちのこころの問題が社会的な話題の中心。私が社会福祉学や心理学を学んだのも、こうした子どもたちに関心を持ったからです。しかし、地元(島根県)には高齢者が多いこともあり、大学卒業後は病院に就職しました。ここではじめて、医療ソーシャルワーカーとして高齢者の福祉や介護の問題に向き合うようになります。

当時の社会状況は、高齢者の看護や介護、医療・リハビリテーションを行う「老人保健施設」が生まれたばかりの時期。将来的に高齢化が進み看護や介護に携わる人材が増えると予測されていましたが、まだ切実ではありませんでした。1989年に導入された消費税が社会保障の財源に充てられることとなりましたが、それでも業界の人材不足に対する危機感はまだまだ希薄。「現場の担当者の“志”があれば対応できる」といった認識が支配的で、専門性や知識に対する関心は薄かったように思います。

介護保険制度が促した人材育成

介護に対する社会の認識が変わったのは、介護保険制度が始まった2000年以降と言ってよいでしょう。高齢者介護へのニーズが飛躍的に増加し、福祉や介護を受け持つ全国各地の自治体の部局や関係団体から、介護福祉士や社会福祉士、ケアマネジャーをはじめ、介護に携わる人材の育成を求める声が上がるようになりました。

増え続ける介護へのニーズに対応するには、質の高い人材の育成はもちろん重要です。目の前で困っている人を助けたいと思う「志」はもちろんですが、その人はいったい何が原因で困っているのか、その背景まで見ることのできる視野の広さと知識を持たなければ、根本的な解決にはつながりません。また、これからの時代は「高齢者の福祉や介護」を「社会や地域の課題」と位置づけて、仕組みや制度などをとらえ直し、体系化することが必要にもなります。

そのような現場での経験から、私は学生たちに「『熱い心』と『クールな頭』を持つこと」を求めています。高齢者の福祉や介護は熱意がないと続きませんが、肩に力が入り過ぎるとかえって高齢者のためにならなかったり、本質を見誤ったりしがちです。冷静に高齢者の福祉や介護の現状に向き合い、課題について賢く考える力を持つことが大切だと思います。

高齢者福祉と介護の充実に必要なことは

高野龍昭准教授

いろいろと問題が指摘される日本の介護ですが、実はわが国の介護技術やしくみは、北欧などの福祉先進国と比べても遜色なく、アジア諸国からは日本に学ぼうという声があるほどです。相手の気持ちを思いやる「おもてなし」の精神が、介護においてもプラスに働いているといえるでしょう。そこに専門性が上積みされ、わが国の介護は国際的にも一定の水準にあると言って良いと思います。

そうした人材養成に、大学での介護福祉教育は大きな意味を持ちます。基盤教育(一般教養教育)をもとに、4年間かけて専門的な知識や技術をしっかりと学ぶことで、単なる介護の専門性だけでなく、他の介護のスタッフを動かし、いろいろな専門職や地域の人びととともに動き、地域や社会を変革できるような力量を得る。これが大学で養成する福祉・介護専門職のアドバンテージでしょう。
課題はやはり、必要となる社会的な費用をどのように確保するかということ。ここでも日本人の美徳である「助け合い」の精神を発揮して、国民全体で負担することが必要だと考えています。

また、少子高齢化がさらに進むこれからの日本において、高齢者介護は介護福祉士や社会福祉士、看護師などの専門職だけでは対応が難しくなります。その対策として、例えば定年退職後の仕事や社会貢献として、専門職ではない人が地域の高齢者をサポートできるような体制を創るなど、介護にかかわる人の裾野を広げることも必要です。

さまざまな人が介護にかかわることによって、高齢者福祉・介護への国民的な関心や理解が深まり、制度や資金面の改善などにつながることも期待できます。高齢者介護が日常的な光景になることによって、社会の幅広い支援を獲得することができるはずです。

自分を磨くことができる、充実感のある仕事

福祉や介護は、人びとの暮らしをより良く変えることができる仕事です。それと同時に、自分自身を磨くことができる。これが社会福祉や介護の仕事の大きな特徴です。
例えば、家族以外の高齢者と接することで、さまざまな人生を知ることができますし、体の不自由な人の介護をすることで、障がいを乗り越えて生きるその人の“生き様”に触れることもできるでしょう。こうした経験は、他の仕事ではなかなか得られないものです。充実感を味わえ、さらには自分自身の内面を磨くことにもつながる意義深い仕事なのです。

ライフデザイン学部生活支援学科では、このようにやりがいと価値のある福祉や介護の仕事を担う人材を、少人数での講義と実習の積み重ねによって育てています。
その授業方針や進め方の特徴は、卒業生たちから寄せられる「先生と学生の距離が近い」という声にも表れています。教員と学生が思っていること・考えていることを言い合える関係を持ちつつ、熱い心とクールな頭を持った学生を送り出したいと思っています。

プロフィール

高野龍昭(たかのたつあき)

龍谷大学文学部社会学科社会福祉学専攻修了。社会福祉士、介護支援専門員(ケアマネジャー)の資格を持ち、通算19年間の病院・老人保健施設勤務・居宅介護支援事業所での実践経験を経て、2005年から東洋大学ライフデザイン学部の教員。著書に『これならわかる〈スッキリ図解〉介護保険・第2版』などがあり、新聞・テレビ番組などでのコメント・出演も多数。

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