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TOYO people:国際地域学部 国際観光学科 矢ケ崎紀子准教授

TOYO people:国際地域学部 国際観光学科 矢ケ崎紀子准教授

2015年7月7日更新

これからの日本を支える観光を学ぼう

国際地域学部 国際観光学科 矢ケ崎紀子准教授
国際地域学部 国際観光学科 矢ケ崎紀子准教授

毎年のようにイタリアを訪れるほど昔から旅行が好きで、学生時代から国内外問わず旅をしていたという矢ケ崎紀子准教授。旅先で海外の人々と触れ合う中で、観光産業の重要性に気づいたといいます。東京オリンピック・パラリンピックに向けて、今一番注目されている日本の「観光」。その奥深さ・おもしろさについて、お話を伺いました。

チームワークが鍵になる「観光」という分野

私は観光政策・観光行政などを専門としています。観光産業は、行政と民間が協力して進めていかなければなりません。例えば最近、街中に消費税免税店が増えたと感じませんか? これは、2014年10月からの法改正で、今まで免税の対象外だった食品、化粧品、医薬品などの消耗品が新たに免税対象になったためです。この法改正は、民間からの声を受けて実現したもので、観光分野における民間と行政の近さがよく分かる例だと思います。こういった法制度や観光政策のほか、インバウンド(訪日外国人旅行)振興、観光需要の平準化などが研究の主なテーマです。

国際観光学科の学生は1年生のうちに、観光ビジネスに関する重要な法律である旅行業法を学びます。それを土台にして、3年生では観光分野の憲法である観光立国推進基本法、観光地域を整備するための法令、宿泊施設に関する法令、旅行の時間資源である休暇に関する法令・ルール等を学ぶ「観光法制度論」を受講することができます。この講座では、旅行業法が今後どの方向に変わっていき法改正がなされていくのかについても勉強します。それから「インバウンド・ツーリズム論」では、インバウンドに関する国内外の政策を学ぶとともに、訪日旅行商品がどのように組み立てられ、流通しているのかを学びます。実は、海外の旅行会社が現地の人々に販売する訪日旅行商品は、日本から輸出した部品を海外で組み立てて販売しているのです。日本滞在中に宿泊するホテル・旅館の部屋、国内を移動する交通機関の切符、食事のクーポン、観光施設の入場券等の単品も輸出されますが、これらを組み合わせた浅草ツアーや京都一日観光等のパッケージのものもあります。こうした商品の輸出代金が日本の観光関連企業や地域の収益になり、さらには商品を購入してくれた外国人旅行者が日本にやってきて滞在中に観光消費をしてくれるのです。インバウンド・ツーリズムは、言わば観光というサービス業が日本にいながらにして外需を獲得する輸出戦略なのです。観光が経済に深く関わっていることが分かりますね。

観光に関わる講義はまだまだたくさんあります。「まちづくり関連法規」では、観光まちづくりを行うために知っておくべき法制度について勉強するだけでなく、観光地として売り出すために活用するゆるキャラの版権はどうなるのか? 景観を守る条例はどう決めるのか? 現行の法制度を超えていく特区はどう活用するのか?など、実践的な知識を習得します。ほかにも「観光安全・リスクマネジメント論」では、観光地のブランドはどんなリスクにさらされているか? 旅行商品造成の際に気をつけるべきリスクは何か? アウトバウンド(海外旅行)のリスクとは? 訪日外国人旅行者(訪日外客)にも災害などのリスクがありますが、その際の情報提供はどうやって行うか? など、事例分析をしながら勉強します。観光に関わる人が学ぶべき内容は本当に多岐にわたります。

観光を「ひとつの学問」と呼ぶべきかどうかは、意見が分かれます。複数の分野にまたがっているため「学際的な学問領域」と表現する先生もいます。
観光は学際的で総合力が必要とされ、そして現場での実践が最も重要なもの。さらに私は、常に動いている観光の世界を定点観測して分析する学問的な視点も必要だと思っています。
このような考え方を共有していますので、国際観光学科では教員同士の情報共有が盛んです。異なる専門分野をもつ人たちがチームを組んで共に研究していけるのが、観光の特徴でもあります。

急増する訪日外客 その理由とは

近年、訪日外客の姿をどこでも見かけるようになりました。2014年には訪日外客数1,341万人を達成しましたが、今年に入っても好調が続いており、2015年5月までの5カ月間で660万人に上ります。以前は1年間で800万人程度がやっとだったので、かなり急激な増加です。

実は、これまで日本は観光の目的地としてはあまり選ばれてきませんでした。経済大国、技術大国、安全で安心で正確な国といったイメージはありましたが、観光を楽しむために行く先としてのイメージは十分ではなかったのです。観光庁と日本政府観光局は「日本は旅先としても魅力的」というイメージを海外の人々に持ってもらうため、海外に向けてさまざまなキャンペーンを打ちました。キャンペーンの成果が現れはじめた頃、東日本大震災によって日本の観光産業は大打撃を受けます。しかし今、好条件が揃ったことで、再び訪日外客が増加したのです。
1つは世界的にみて海外旅行をする人々が増えており、市場自体が成長していること。これを背景に、近隣諸国・地域の経済成長により、海外旅行商品を買える所得層が増えたこと。そして、日本に来たいと思う人々に航空機の座席が十分に供給されていること。こうした好条件に円安という強力な追い風が吹いているのです。これらの影響は、5年後の東京オリンピック・パラリンピックの頃まで続くでしょう。観光産業は今まさに、国の成長の柱になろうとしているのです。

ただ、国内の受け入れ体制の整備が追いついておらず、訪日外客からは「入国審査で待たされる」「英語が通じない」「Wi-Fiがつながらない」など、不満も聞かれます。観光客のさらなる増加が見込まれる東京オリンピック・パラリンピックに向け、こうした不満をいかに解消していくのかがこれからポイントになっていくでしょう。

「目線を上げよう」。今学ぶ知識がこれからの日本を支える

国際地域学部 国際観光学科 矢ケ崎紀子准教授

最近の国内観光分野における大きなトピックスは、北陸新幹線の開業です。交通網の整備は、地方観光にとって大きなインパクトがあります。観光客は「近いところからたくさん来る」のが原則。特に新幹線を使えば、移動時間が短縮され地理的な距離を一気に近づけ、また日本の新幹線は冬にも強いので季節に関係なく安定した輸送を可能にするため、その影響は圧倒的です。

新幹線が開業すると、まず終着駅がその恩恵を受けます。北陸新幹線の場合も、金沢が一気に注目されました。そこから、終着駅手前の駅、さらに各駅から離れたところまで、にじみ出るように影響が広がっていきます。
このように、観光振興は段階的であって、影響が出るまでには時間がかかるもの。地方観光にも、ステップを踏んだ戦略が必要です。しかし、そのことはまだあまり理解されていません。学生の中には卒業後、地元に戻って観光に携わるという人もいますので、講義で学んだ戦略的な思考を広げていってくれればと思っています。

今、皆さんは日本の観光産業が急成長していく姿を間近で見ています。オリンピック・パラリンピックの頃に観光産業の中心的存在となる人も、その後に観光に携わる人もいるでしょう。オリンピック・パラリンピック後が日本の観光の正念場です。これからの観光産業は皆さんが支えていくことになるのです。
学生の皆さんには、「目線を上げよう」とよく言います。観光は「人間力」が試される分野です。今はよく分からなくても、実際に観光産業に携わって企業や団体を支えるようになったとき、その深さが分かってくるはず。目の前にある景色だけでなく、もっと先の未来を見据えながら、誇りをもって観光を学んでいってもらえたらと願っています。

プロフィール

矢ケ崎紀子(やがさき のりこ)

2006年、九州大学大学院法学府政治学専攻修了。2008年から2年6ヶ月、国土交通省観光庁参事官(観光経済担当)を務める。株式会社住友銀行、株式会社日本総合研究所、首都大学東京都市環境学部特任准教授などを経て、2014年から現職。日本貨物鉄道株式会社取締役(社外)。東武鉄道株式会社取締役(社外)。国土交通省交通政策審議会委員。国土交通省国土審議会特別委員。

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