2016(平成28)年、学校法人東洋大学と東京東信用金庫は産学連携協定を締結。都内の中小企業との共同研究を推進することとなりました。その中核となる事業が、東京五輪に向けた「国産カヌー開発プロジェクト」。本学からは理工学部生体医工学科・望月修教授の研究室が参加し、設計などを担当しています。
現在、日本のカヌー選手が使用しているのは、カヌー競技先進国である東欧で作られたものが多く、身体の大きい選手に合わせて作られているため、日本人には扱いづらいこともあります。そこで、日本人向けカヌーを製作するプロジェクトが立ち上がりました。
望月教授の専門は流体工学とバイオミメティクス。バイオミメティクスとは聞き慣れない言葉ですが、自然や生物の機能を工業製品に応用する学問分野のこと。例えば洋服などのマジックテープも、オナモミという植物が服などにくっつく仕組みを応用して作られています。望月教授の研究室ではこれまでにも、バイオミメティクスを応用した競泳水着の開発などを行ってきました。今回のプロジェクトでは、力強く水をかくカエルの水かきを応用したパドルや、川の流れを利用したカヌーの開発を目指します。
「今までにないものを作ろうとしているので、関係各所を説得したり、協力者を探したりと、組織づくりが大変です。それでも、知識や技術の交流が生まれることは産学双方のメリットになると思います」と望月教授は話します。
研究室では、水路を用いて空気や水といった流体の中での物体の様子を観察する実験などが行われている。
五輪は4年に一度の大イベント。「特に自国開催となればめったにない機会。五輪に携わることは、学生にとって社会と関わる貴重な経験になる」と望月教授は期待を寄せます。
「実際にものづくりの現場を経験してみると、これまで得た知識がどう役立つのかを実感できます。それは我々に限ったことではありません。さまざまな形で五輪に向けた取り組みに参加することは、大学での学びが社会とどうつながっていくのかを知る、重要なきっかけになるはずです」
東京五輪の開催は、私たちの想像以上に貴重な財産をもたらしてくれそうです。
望月修教授
理工学部 生体医工学科教授。1982年北海道大学大学院工学研究科機械工学第二専攻博士後期課程修了。博士(工学)。名古屋工業大学、北海道大学での勤務を経て、2002年より東洋大学工学部機能ロボティクス学科教授に。2009年より現職。著書に『オリンピックに勝つ物理学』(講談社)などがある。
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