2016(平成28)年9月11日から7日間にわたってアメリカ・シアトルで実施した「Criminologyスタディーツアー」。 企画・実施した社会学部社会心理学科・桐生正幸教授による引率のもと、14名の学生が参加しました。
スタディーツアーを企画・実施した桐生教授は研修の狙いをこう話します。「アメリカは日本よりも犯罪が多く、犯罪心理学や犯罪社会学について先駆的な研究を行っています。シアトルは比較的治安がよく、研修に協力的な地域。ここで研修を行うことで、現地の警察官や裁判官、事件に関わった人たちの声を聞き、“犯罪の動向”を知ることができます」
研修ツアーでは警察署や裁判所、留置所、少年院を訪問したり、犯罪被害者の話を直接聞いたり、さらにそれぞれの現場で活躍する人々に向けて学生がプレゼンテーションし情報交換を行うなど、充実した研修になりました。さらにツアーの中でシアトルと日本の犯罪に対する大きな“違い”を見ることができたと桐生教授は言います。「シアトルでは事件に関わる検事自ら犯罪防止対策をとるなど、社会全体が罪を犯した人の社会復帰に前向きです。これは、多様な人種・国籍・宗教を持つ人々が存在するシアトルが多様化社会を形成しているためです。人種差別や貧困格差が犯罪の温床となる一方で、自分とは異なる相手を理解する意識が犯罪予防につながっているのではないでしょうか」
社会で起きている問題は座学だけでは実感しづらいもの。学生からは、犯罪の背後にある社会を取り巻く諸問題の本質を肌で感じて意識が変わったとの声が聞こえました。「学生たちには今回の経験を生かして、多様化社会の中で自己を確立し、グローバルな視点を養ってほしいですね」
今回参加した学生たちのレポートをまとめた報告書は2017(平成29)年3月に発行されます。
Criminology スタディーツアーのねらい
Criminology スタディーツアーの研修プログラム
2016/9/11~9/17(5泊7日間)
9/12 | 裁判所、留置所および警察署訪問、検察官によるレクチャー |
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9/13 | シアトルに留学する日本人留学生との交流会UW Police Departmentでのレクチャー |
9/14 | Echo Glen Children’s Centerでのレクチャー犯罪心理カウンセラーによるレクチャー |
9/15 | 陪審員によるレクチャー、実際のケースの学習、ロールプレイング |
UW Police Department
Echo Glen Children's Center
参加した学生の声
渡邊菜月さん
社会学部 社会心理学科 3年 渡邊菜月さん 多様な宗教や思想を持つ人々が共に暮らす社会の空気を感じることができました。私が研究したいと考えている「異国文化心理学」に生かしたいです。
大橋勇太さん
社会学部 社会心理学科 3年 大橋勇太さん 初めての海外でしたが勇気を持って参加してよかったです。犯罪に関わる現場を実際に見ることで、根強く残る人種差別を改めて考えるきっかけになりました。
社会学部 社会心理学科教授。専門分野は犯罪心理学。博士(学術)。山形県警察本部科学捜査研究所主任研究官、関西国際大学人間科学部教授などを歴任し、2014年から現職。日本犯罪心理学会常任理事、日本法科学技術学会評議員、日本応用心理学会理事、尼崎市地域防犯アドバイザー、兵庫県地域安全まちづくり審議会委員などを務める。著書に『犯罪者プロファイリングは犯人をどう追いつめるか』(河出書房新社)、『基礎から学ぶ犯罪心理学研究法』(福村出版)など。
サイト社会学部 社会心理学科