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あの熱戦を振り返る 第93回 箱根駅伝 誌上プレイバック

あの熱戦を振り返る 第93回 箱根駅伝 誌上プレイバック

2017年3月16日更新

あの熱戦を振り返る 第93回 箱根駅伝 誌上プレイバック

今年も激しい戦いが繰り広げられた第93回箱根駅伝。観衆の声援の中、全力で走る選手たちの姿に胸を打たれた人も多いだろう。2日間にわたる激走を、本学卒業生で陸上競技ライターの石井安里氏のコメントとともに振り返る。

石井安里氏
いしい・あり/東洋大学社会学部在学中から、陸上競技専門誌に執筆を始める。卒業後、大学勤務の傍ら陸上競技の執筆活動を8年間続け、フリーライターに。『陸上競技マガジン』(ベースボール・マガジン社)への寄稿のほか、著書に『魂の走り』(埼玉新聞社)など。

往路

第1区 大手町~鶴見【21.3km】 走行1位

服部 弾馬
経済学部
経済学科4年
【区間賞】1:03:56

1区にはエースの服部を起用して、先手を取る作戦に出た。スタート直後から主導権を握り、5km手前で一度仕掛けたが、最も実力がある服部への他校のマークは厳しく、なかなか抜け出せない。速いペースで引っ張り他校を振り切るのが理想だったが、スローペースに付いてくる選手が多く、引き離せなかった。それでも、ラスト1kmで意地のスパート。2位の東海大学から1秒差で逃げ切り、11月の全日本大学駅伝に続いて1区の区間賞を獲得。役割を果たした。


序盤はスローペースで進み、抜け出しても後続がすぐに追い付く難しい展開。

第2区 鶴見~戸塚【23.1km】 走行8位

山本 修二
経済学部
経済学科2年
区間11位 1:09:05

エースがそろう“花の2区”は、往路5人のなかで唯一の下級生・山本。1位でタスキを受けると、中継所で8秒差までにいた5校と共に先頭集団を形成した。2年生になって力をつけ、チームの主軸に成長した山本は、強豪を相手に奮闘。難所である権太坂を越え、16kmまで先頭争いをした。20kmで足が痙攣し、2区で最も苦しいとされるラスト3kmの上り坂で順位を落としたが、粘りの走りを見せ、1位の神奈川大学から1分43秒差の8位でつないだ。


先頭集団に位置取った山本。強豪ぞろいのエース区間だが、しっかりと粘った。今後の活躍も楽しみな選手だ。

第3区 戸塚~平塚 【21.4km】 走行4位

口町 亮
法学部
法律学科4年
区間3位 1:03:41

3区は主軸の口町。9月にケガをした影響で、10月の出雲駅伝、11月の全日本大学駅伝を欠場したが、最後の箱根駅伝に間に合わせた。タスキを受けたのは8位ながら、前の選手たちが見える好位置。前半で6位に浮上すると、湘南の海岸線を力走し、残り1kmでさらに2つ順位を上げた。先頭に立った青山学院大学と1分43秒差の4位で、2位の早稲田大学まで21秒差。口町らしいダイナミックなフォームから繰り出される、懸命のラストスパートが光った。


しっかりと順位を上げてタスキをつないだ口町。主力としてチームに貢献した。

第4区 平塚~小田原【20.9km】 走行3位

櫻岡 駿
経済学部
経済学科4年
区間4位 1:03:52

4区は前回まで最も距離が短く、下級生や初出場者が多い区間だったが、12年ぶりに2.4km延びて準エース級が集まった。櫻岡は2年前の初出場時にも4区を走っているが、今回は主軸としてこの区間を任された。「2区の山本修二に負担をかけた分、自分が取り返すつもりだった」と、3kmで神奈川大学を抜いて3位に浮上。一時は2位の早稲田大学に3~4秒まで迫るも、後半に離されたことから自己評価は50点と厳しいが、「後輩たちに何かを残したい」という櫻岡の思いは伝わった。


主軸として活躍してきた櫻岡。距離が変更された4区だが、順位を押し上げ、トップを射程圏内におさめた。

第5区 小田原~芦ノ湖 【20.8km】 走行4位

橋本 澪
理工学部
応用化学科4年
区間12位 1:15:51

4区が延びた分、2.4km短縮された5区は、最初で最後の箱根駅伝となるキャプテンの橋本。今大会に向けて努力を重ね、準備を進めてきた橋本は、出雲、全日本、箱根を合わせた“三大駅伝”を通じて初出場となった。23秒前にスタートした早稲田大学に一時は5秒差まで迫ったが、中盤から離され始め、13kmでは順天堂大学に抜かれた。往路は1位の青山学院大学と2分40秒差の4位。ただ、橋本は順天堂大学に抜かれてからの7km以上で16秒差にとどめ、復路の後輩たちに望みをつないだ。


往路フィニッシュ。復路の後輩たちに望みをつなぐ。

復路

第6区 芦ノ湖~小田原【20.8km】 走行4位

堀 龍彦
経済学部
経済学科3年
区間13位 1:00:42

復路には、これまで箱根駅伝を走ったことがない3年生たちを4人起用した。トップバッターの6区山下りは部の学年主任である堀が務めたが、大きなブレーキにはならなかったものの、区間13位と本来の力を発揮できず。3位の順天堂大学とは45秒差に広がり、5位の神奈川大学も50秒後に迫ってきた。堀は「良い位置でスタートできたのに情けない。悔しさしかない」と唇をかんだが、「最終学年は、これまでの3年分すべてを超えられる1年にしたい」と雪辱を誓った。


3位と16秒差と、好位置からスタートした復路。初の山下りでの経験は、来年への糧になるはずだ。

第7区 小田原~平塚【21.3km】 走行3位

小笹 椋
経済学部
経済学科2年
区間7位 1:05:16

7区は復路でただ1人の箱根駅伝経験者である小笹。前回は、7区とほぼ逆のコースの4区を走った。序盤から安定した走りを見せ、11.4kmで3位の順天堂大学に追い付くと、競り合いの末に12.6kmで引き離した。2位の早稲田大学との差は2分49秒に広がったが、1位の青山学院大学との差を短縮。前期からケガが続き、11月の全日本大学駅伝の後にも調子を落とした時期があったが、今大会にしっかりと合わせ、駅伝での勝負強さを発揮した。


下級生ながら、落ち着いた走りでトップに迫った小笹。箱根の経験を生かし、次年度のチームの主軸として成長が期待される。

第8区 平塚~戸塚【21.4km】 走行3位

竹下 和輝
経済学部
経済学科3年
区間4位 1:06:49

中継所で、前日に往路を走り終えた4年生たちの激励を受けてスタートした8区の竹下。15kmの給水地点では、リオデジャネイロ五輪20km競歩7位入賞の松永大介(4年)から水を受け取り、遊行寺の上り坂を走り切った。前半から終始、区間3~4番目につけ、最終的に区間4位。神奈川大学の選手が竹下を上回る区間2位の走りで、6秒差まで迫ってきたが、力強いラストスパートで振り切った。4位の神奈川大学に追い上げられた一方で、2位の早稲田大学を射程圏内にとらえた。


4位の神奈川大学も好走を見せたが、竹下はしっかりと順位をキープし、2位との差もじわりと詰めた。

第9区 戸塚~鶴見【23.1km】 走行2位

野村 峻哉
経済学部
経済学科3年
区間賞1:09:47

3位でタスキを受けた9区の野村は、4位の神奈川大学がわずか6秒後に続いていたが、「前を追うことだけを考えた」と、1分06秒前にスタートした2位の早稲田大学を追った。早々に神奈川大学を振り切り、17.5kmで早稲田大学に追い付くと、19km過ぎに引き離した。14.5kmの横浜駅までは区間2位だったが、20kmで区間トップに浮上。中継所手前でさらにスピードを上げ、1時間09分47秒で区間賞を獲得した。野村にとっては、競技生活初の区間賞だった。


区間賞の快走を見せた野村。3位との差を引き離し、アンカーに想いを託した。

第10区 鶴見~大手町【23.0km】 走行2位

小早川 健
経済学部
経済学科3年
区間10位 1:12:32

9区・野村の快走に勢いをもらったアンカーの小早川は、3位の早稲田大学との差が1分近く開いていたこともあり、2位を独走。区間10位ながら、上位選手とも大差なく走り切った。東洋大学は11時間11分31秒で2位。優勝した青山学院大学とは7分21秒差の大差がついたが、9年連続3位以内を守り、伝統をつないだ。小早川はゴールの先に待つ4年生たちへの思いから、手を合わせてフィニッシュ。3年生が4年生への感謝の気持ちを込めて力走し、復路で順位を上げた。


大観衆が声援を送る中、手を合わせてゴールテープを切った小早川。

酒井俊幸監督 インタビュー


さかい・としゆき/1976年生まれ、福島県出身。東洋大学経済学部卒業。1999年、コニカ(現・コニカミノルタ)に入社。退職後、母校の高校にて陸上部顧問を務め、2009年4月より東洋大学陸上競技部長距離部門監督に就任。

今年度は10月の出雲駅伝で9位、11月の全日本大学駅伝で6位だったという結果を考えれば、箱根駅伝の2位は選手、スタッフ一丸となってよくやってくれたと思います。ただ、優勝した青山学院大学には7分21秒差をつけられましたので、このままでは終われないという気持ちも強いです。
復路を走った3年生は4人とも箱根駅伝初出場でしたが、これからのチームを作っていく学年が戦力となったことは大きかったです。今後は現在の1~3年生に新入生を加え、しっかりと選手層を構築し、東洋大スピリッツを継承して、確実に10年連続3位以内を取りに行き、さらには「勝てるチーム作り」をしていきたいと思います。

総合順位

 
1位青山学院大学11時間04分10秒
2位東洋大学11時間11分31秒
3位早稲田大学11時間12分26秒
4位順天堂大学11時間12分42秒
5位神奈川大学11時間14分59秒
6位中央学院大学11時間15分25秒
7位日本体育大学11時間15分39秒
8位法政大学11時間15分56秒
9位駒澤大学11時間16分13秒
10位東海大学11時間17分00秒

 

サイト陸上競技部(長距離部門)