【書籍紹介】加藤隆之教授著「プライバシー権保障と個⼈情報保護の異同―イギリス、アイルランド、⽇本の⽐較法的検討―」を出版しました
プライバシー権保障と個⼈情報保護の異同―イギリス、アイルランド、⽇本の⽐較法的検討―
主要目次
序 問題の所在─プライバシー権と個人情報の保護を受ける権利との関係 / 第1章 イギリスにおける法的責任 / 第2章 アイルランドにおける法的責任 / 第3章 日本における法的責任 / 第4章 個人情報の誤用に起因する損害の発生と賠償額の算定 / 第5章 プライバシー権の原理的考察
本書は、プライバシー権と個人情報(データ)保護を受ける権利との関係、異同を明らかにしようとするものである。近年のコンピュータやインターネットに関する技術の急速な進歩、及び、AI技術、生体認証、DNA解析などの分野における新しい技術の誕生により、個人情報保護のための法規制の創設及び強化が急務の課題とされている。この認識は正当である。しかしながら、急速な個人情報保護制度の構築あたって、プライバシー権と個人情報保護を受ける権利との関係に関する考察をおろそかにしてきたのではないかという懸念がある。巷には、情報プライバシーなどと両者を混同する表現も見受けられるが、両者の関係は必ずしも明らかにされてこなかった。そこで、本書では、イギリス、アイルランド、日本のプライバシー権、個人情報、個人データ保護に関する法制度を概観し、民事責任に関する判例を中心として、プライバシー権と個人情報保護との関係をあぶりだそうとしている。プライバシー権は、主にコモン・ロー、判例法を中心として古くから形成されてきたものであり、ここ数十年で法制度が拡充してきた個人情報保護を受ける権利とは出自が異なる。また、憲法上の観点からの考察も加えている。プライバシー権が憲法上の権利であることは、多くの先進国の憲法で認められているところであるが、個人情報保護を受ける権利が同等の憲法的価値を有するものであるのか、さらには、それがプライバシー権の一部であるのか、それとも別の権利として措定されるべきであるのかについて明らかにしている。この点を明らかにすることによって、プライバシー権と個人情報保護を受ける権利との距離を測ることが可能となり、個人情報の保護の程度、個人情報を取扱う者に対する規制態様の是非を論じることができるのである。
【編著者】加藤 隆之(東洋大学法学部企業法学科教授)
1970 年 千葉県生まれ
1994 年 中央大学法学部法律学科卒業
2002 年 中央大学大学院法学研究科博士後期課程単位取得退学
現在 東洋大学法学部企業法学科教授
博士(法学、中央大学)
主著 『性表現規制の限界』(ミネルヴァ書房、2008 年)『 憲法判例から考える 自由と平等――権利をめぐる多様性と妥当性――』(ミネルヴァ書房、2019 年)
四六判・上製・498頁・本体価格3,800円(税別)
ISBN 978-4-908590-10-8 C3032
2022年11月刊行
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