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UMAP国際事務局として グローバル化を進めてきた 東洋大学の これまでとこれから

髙橋一男
副学長(国際担当)
国際学部教授
芦沢 真五
国際学部教授

現在、大学のグローバル化が世界的に推し進められている。国境を越えた学生の交流や大学同士の連携を促進することによって、教育の質の向上が図られているのだ。アジア太平洋地域においてもその動きは活発で、1991年には「アジア太平洋大学交流機構(UMAP:University Mobility in Asia and the Pacific)」が発足。2016年1月から2020年12月までの5年間、東洋大学がUMAP国際事務局を務め、学生交流のさらなる発展を図ってきた。
その中枢で任に当たってきたのが、UMAP国際事務局事務次長を務めた国際学部の芦沢真五教授、そして「アジア太平洋地域の学生交流促進に向けた実証的研究-UMAPの活性化をめざして-」と題した科研費研究で研究代表者を務める副学長の髙橋一男教授だ。今回は国際事務局としての5年間にわたる活動と、研究から得られた成果と今後の展望について二人に話を聞いた。

各国の教育交流の状況を分析し、
有効なガバナンスモデルを提案

「ヨーロッパ地域においては、1987年に『エラスムス(ERASMUS: European Region Action Scheme for the Mobility of University Students)』という学生による教育交流を目指したプロジェクトが設立されました。UMAPは、そのアジア太平洋地域の政府・大学関係者が集まり、エラスムスのアジア版として発足したという歴史があります。しかし、近年に至るまで、エラスムスほどのインパクトを及ぼす活動につながっていないことが大きな課題でした。そこで、我々は国際事務局を務めるとともに科研費研究を行い、組織の活性化を目指すことにしたのです」(髙橋教授)
まず行ったのは、各国政府の留学交流政策と主要大学の国際戦略を比較分析し、ネットワークをより有効に活用できるガバナンスモデルを提案することだった。
「ヨーロッパに比べ、アジア太平洋地域は広範囲にまたがっており、国ごとに大学のシステムが大きく異なるという特徴があります。そのため、各国がどのような形でUMAPに参画しているのか詳しく調べる必要がありました。調査した結果、参加国の政府が直接UMAPに参画して国内事務局を形成しているケースと、その国の複数の大学が大学連合を形成し、代表大学が国内事務局を形成しているケースの二通りあることが分かってきました。このように、システムが統一されていないことで強制力が働かないという点が弱みでもありますが、非常に緩やかな連合体であり、国の実情に合わせて多様な参加形態が可能だという強みもあります。そうした強みを生かし、弱みをカバーしながら、各国の政策と大学の国際戦略を有機的に連動させ、大学間ネットワークを有効に機能させていくガバナンスモデルを提示していくこと。それが今後の目標となっています」(髙橋教授)

学習成果を可視化と
共同教育プラットフォームを構築

国際事務局として成し遂げた大きな成果として、単位互換制度や共同教育に関わる共通プラットフォームの構築を進めてきたことが挙げられる。
「UMAPでは、UCTS(UMAP Credit Transfer System)という単位互換方式を基盤として、教育の質保証を伴った学生交流の実現を目標としています。しかし、日本の現状は教室内の学修時間数が単位互換の主たる根拠になっており、国際的に通用する学習成果分析手法と成績評価基準の明確化が課題となっていました。そのため、我々はUMAPが開発・運用している学生交流オンラインシステム『USCO(UMAP Student Connection Online)』の改善とともに、大学間の共同授業などを支援するオンライン共同学習プラットフォームを運用しています。この共同教育はCOIL(Collaborative Online International Learning)と呼ばれていますが、日本のUMAP参加大学の学生が自身の学習を記録する媒体である『eポートフォリオ』の機能も果たします。学習成果の可視化を進め、近い将来には異なる大学の成績や学位証明書などを比較検証できる共通プラットフォームを目指していきます。」(芦沢教授)
UMAPを軸としながら、地域学生交流ネットワークを独自に拡充してきたことも特筆すべき成果だ。
「積極的に各国に連携を働きかけた結果、カナダ、アメリカ、オーストラリアが新たに加盟国となりました。これにより、さらに大きな枠組みで学生交流が進むこととなります。また、『ASEAN 大学連合(AUN:ASEAN University Network)』、『大メコン圏大学コンソーシアム(GMS-UC:Greater Mekong Sub-region University Consortium)』、『ASEAN国際学生交流事業(AIMS:ASEAN International Mobility for Students Programme)』など、アジア地域にあるさまざまな共同教育ネットワークとも提携し、UMAPを基盤とした傘下型ネットワークの形成を試みています。そのために、実務者へのヒアリングや国際シンポジウムでの議論を進めてきました」(芦沢教授)

コロナ禍における
国際交流の道筋を探る

UMAP国際事務局は精力的な活動を続けてきたものの、昨年以来、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、国際交流が困難な状況に陥っている。しかし、教育のグローバル化の動きを止めるわけにはいかないと二人は口をそろえる。
「コロナ禍により、従来の渡航留学が難しくなっている中、オンラインでの国際交流を迅速に推進しました。コロナ禍以前の2019年からオンラインと対面の両方を活かしてUMAP参加大学の学生が共同学習するCOIL(Collaborative Online International Learning)の取り組みを始めています。関西大学などUMAP加盟大学の協力により『UMAP-COILプログラム』を2年続けて実施しています。2020年は国内でも非対面のオンライン授業を余儀なくされましたが、それにより学生も教員もオンライン教育への理解が進み、抵抗感も減ったことも良い効果をもたらしました。今後も『UMAP-COIL』を拡大していきたいと思っています」(芦沢教授)
「とは言え、やはりオンライン国際交流は渡航留学の完全な代替手段にはなり得ません。学生には実際に海外にわたり、色々な国の文化を直に体験して欲しい。今後の情勢は不透明ですが、渡航留学と『UMAP-COIL』を併用し、それぞれの良さを生かしたハイブリッド型の留学環境を整えることに注力していきたいと思います」(髙橋教授)
今年からUMAP国際事務局はカナダに移り、2022年3月には科研費研究の期間が終了する。しかし、東洋大学として、引き続き教育のグローバル化を推進していきたいと髙橋教授は語る。
「東洋大学は134年の長い歴史を持ちながら、国際化に遅れをとっている面がありました。しかし、2014年に『スーパーグローバル大学(SGU)創成支援』事業に採択され、さらにUMAP国際事務局を務めたことで、アジア太平洋地域のハブ大学を目指せる環境が整いました。今後はスーパーグローバル大学として、UMAPとも連携しながら独自に国際交流を推進し、東洋大学のプレゼンスをさらに高めていきたいと考えています」

PROFILE

髙橋 一男(国際学部 教授 副学長)

学習院大学にて政治学修士を取得後、放送教育開発センター(国立大学共同利用機関)を経て1997年より現職。地域活性化研究所教授 、国際学研究科国際地域学専攻教授を兼任し、副学長も務める。UMAPに関する科研費研究では、研究代表者も務めている。

芦沢 真五(国際学部 教授)

1995年にフルブライト奨学生としてハーバード大学教育大学院に留学し、教育学修士を取得。慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス、大阪大学、慶應義塾ニューヨーク学院、明治大学国際連携機構などを経て、2013年より現職。

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