この授業は、2019年に刊行した書籍『保育者の関わりの理論と実践~教育と福祉の専門職として』(著:高山静子 発行:エイデル研究所)を使用し、4、5人のグループによる演習形式で行います。学生たちは、授業を通して保育者に必要な、赤ちゃんや乳幼児と関わるための技術と原則を学びながら、園内研修の方法についてもイメージします。理論編では、「なぜ、専門性に基づく関わりが必要か」「不適切な関わりとは何か」についてグループで読み合わせをし、意見を共有します。さらに実践編では、演習問題をもとに、子どもに伝わりにくい話し方と、伝わりやすい話し方の違いを確認し、乳幼児に生活のスキルや社会のルールを一つ一つ教える必要があることを学びます。例えば、2歳児が電車内で騒いでいた時は、「静かに」よりもさらに具体的に「電車の中では小さな声でお話ししようね」と声を掛けます。乳幼児には、「脅したり、叱ったりせずに、短くわかりやすく、率直に、どうすればよいかを伝える」ことが大切です。一度で理解できる子どもはいませんから、何度も繰り返し伝える必要があります。また、保育者は、「保育所が、福祉の機能を果たす児童福祉施設」であることを忘れてはなりません。基本的に保育所や認定こども園は、福祉ニーズの高い家庭が優先的に利用できるシステムです。例えば、共働きで経済的にも豊かで教育熱心な家庭がある一方、ひとり親や若年出産により経済的に困窮している家庭や保護者が精神疾患を患っている家庭など、幼稚園に比べて幅広い家庭の子どもたちが集まります。場合によっては虐待のリスクを抱えているケースもあるため、保育者が家庭で十分なケアを受けられない子どもを守っていくためには、教育の視点だけではなく、児童福祉の専門職であるという意識と技術を持つことが重要なのです。学生たちには将来、保育や幼児教育のリーダーとして社会に貢献してほしいと願っています。

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高山 静子教授福祉社会デザイン学部 子ども支援学科

  • 専門:保育学、幼児教育学
  • 掲載内容は、取材当時のものです