多くの学生にとっては、遠い将来のことであり、ネガティブなイメージのある「社会保障」は、なぜ必要なのでしょうか。私たちは、当たり前に毎日が続いているように思いがちですが、一秒先の未来のことなどわかりません。自分自身や、家族など周りの大切な人が、病気やケガ、失業、災害といった問題に直面するかもしれないのです。何歳まで生きることができるのか、どう備えればよいのか、こうした不確実な将来に向かって生きていくうえで直面するリスクをカバーする。そのために、社会保障があるのです。社会保障以外でも、個人や民間での備えで対処することもできますが、備えのために消費を削って経済の悪循環を招くことや、貧困や障害で備えができない人を支えるためにも、社会保障は必要なのです。ただし、再分配を伴い、リスクと負担能力の時期が連動しないため、なかなか社会的な合意形成が難しい、という問題点もあります。高齢化社会のため給付費が増大し、この数字が不安をあおっているのも事実です。しかし、まずは社会保障の良くないイメージをなくし、私たちが安心して社会生活を営むための仕組みだということを理解するべきです。そして、誰がどのように負担し、どこまでカバーしていくのかということを、これからの若い人たちが中心となって、議論していかなければならないのではないでしょうか。

中澤 克佳教授経済学部 総合政策学科
- 専門:経済学、応用経済学、財政・公共経済学、社会保障論
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