1960年代から80年代頃にかけてのバンコクは都市化が進み、人口増加に住居が間に合わずスラムができました。80年代には2,000カ所以上のスラム街が存在しましたが、UCDO(都市コミュニティー開発局)のサポートによって、大きく改善されたのです。
UCDOが行うスラムのまちづくりは、その場所に住む人たち自身によるスラムの改善、区画整理、土地の共有、再建、そして土地の移転や購買という5つの方法で行われました。さらに小口融資も行われた結果、水上家屋に住んでいた人々も生活が改善され、普通のアパートや家に住むことができるようになりました。同じ地域に暮らす人々がお互い助け合い、情報交換するコミュニティ―ネットワークも機能するようになりました。90年以前のタイはトップダウンで発展してきましたが、UCDOによって、ボトムアップによる発展が実現したのです。最近ではこのスタイルが世界中に広がりを見せており、小口融資やコミュニティーネットワークなどは、世界のスラムのまちづくりでは常識となっています。

髙橋 一男教授国際学部 国際地域学科
- 専門:社会学、アジア社会論、情報・コミュニケーション論、メディア論
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