近年、糖尿病や高血圧などの生活習慣病が世界中で問題になっています。そのなかでも特に肥満を予防することが重要な課題です。患者さんが取り組みやすい肥満の治療や予防を実現するためには、「食行動」をコントロールする必要があります。この食行動を改善するために有効な栄養素の一つが食物繊維です。食物繊維は、私たちが摂取すると腸まで届き、腸にいる腸内細菌によって分解された後、「短鎖脂肪酸」と呼ばれる物質を腸管内で産生します。短鎖脂肪酸は、体内で食欲をコントロールするホルモンの分泌を調節し、直接神経に作用して脳に影響を与えるなど、食行動自体を変化させる効果が期待されている物質です。

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行動生理研究室では、ヒトが水溶性の食物繊維である「イヌリン」を6週間摂取した前後で食行動に変化があるかを調べています。ヒトの食行動は、生命維持のために働く経路(恒常的摂食調節系)と、快感を求めて働く経路(報酬系)の2つの経路によって調節されます。脳にある報酬系は、食べ物を見て「おいしそう」「食べたい」と感じる「快」の感情と関わっています。そのため報酬系経路の調節機能は、食品の画像を使った認知機能テストを応用して評価します。一方、恒常的な経路の調節機能については、血液中にあるヒトの食欲を調節するホルモン分泌量を測定して評価します。これらの評価と合わせて、どのような腸内細菌が存在するかについても調査しています。

当研究室では、食行動と腸内細菌に着目し、肥満予防や改善に役立つ研究に日々取り組んでいます。人々の肥満予防を実現するために、一人一人の腸内細菌叢に合わせたオーダーメイドの栄養処方を目指します。

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小西 可奈助教食環境科学部 食環境科学科 行動生理研究室

  • 専門:スポーツ栄養学
  • 掲載内容は、取材当時のものです