経済学部国際経済学科の宇田川亮輔さんは、消防士のお父さんの背中を見て育つうち、いつしか「自分も消防士に」という思いを抱くように。小学生の頃から続けてきたバスケットボールは高校で終わらせるつもりが、大学の監督がかつての恩師だったというご縁で、大学でもバスケ漬けの4年間。学業と部活を両立させながら消防士になる夢を追い続け、そして叶えたのです。

消防士以外の仕事をしている姿が想像できない

父が消防士のため、消防士は幼い頃から身近に感じる職業でした。小学5年生の時、自転車に乗っていて、自宅近くでトラックと正面衝突するという事故に遭ったのですが、奇跡的にかすり傷で済みました。ちょうど非番だった父が自宅から飛んで来て、そこに到着した救急隊員が父の同僚で、「宇田川さん、何やってるんですか」「これ息子」と(笑)。その時の自分はただ泣きじゃくるばかりでしたが、それは怪我の痛みのせいではなく、父や消防隊員の姿を見て安心したからです。そんな経験を通じて、自分も消防隊員になりたいという思いが育っていきました。そして、東日本大震災で多くの方が被災している様子を目にしたことで、その思いはますます強まっていったのです。

人の役に立てる、それが目に見えてわかるところが「消防士」という職業の魅力だと思います。大学入学時はすでに消防士以外に、自分の働いている姿がイメージできませんでした。スーツを着て営業している姿はどうしても思い描けなかったので、もし公務員試験に失敗したとしても、就職浪人して翌年もチャレンジするつもりでいました。

20歳の時、10年前の自分から手紙が届いたんです。学校か何かで「未来の自分に手紙を書く」というイベントがあったのだと思いますが、その手紙には「消防士になりたい」と書いてありました。10歳の頃からもう思っていたんですね。

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バスケ部に捧げた4年間に悔いはない

幼少時、喘息もちで、1年に2回は入院していた私は、体力づくりのためにバスケットボールを始めました。中学生になってクラブチームに入りましたが、その時に指導を受けたのが、現在の東洋大学バスケットボール部の監督です。自分が中学を卒業した後は弟がお世話になり、監督とは家族ぐるみの付き合いとなりました。実は、バスケットボールは高校で終わりにして大学では学生生活を謳歌するつもりでした。それが、東洋大学に進学することを知った監督から誘われ、断れませんでした(笑)。とはいえ、一度やると決めたことを途中で投げ出すのは嫌だったので、引退まで全力で頑張りました。この4年間、練習していた記憶しかなく、思い描いていた大学生活とは全く違うものになりましたが、悔いはありません。

ただ、勉強と部活の両立は、履修科目の多い1年生の頃は大変でした。バスケットボール部は上下関係が厳しくなく、和気あいあいとした雰囲気なのですが、それでも1年生にはやらなければならない雑用があります。1限から授業を受け、部活を終えて帰るとすでに23時ということも珍しくありませんでした。しかし、公務員試験を受けることは決めていたので、1~2年生のうちにできるだけ単位を取っておきたいという思いがあり、必死で頑張りました。「部活のせいで時間がなかった」ではなく、むしろ「部活によって最後まで投げ出さないでやり通す力、忍耐力が身に付いた」と感じます。

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公務員試験合格目指しスイッチを切り替えた

3年生になり、公務員試験の勉強を始める時期になりましたが、10月のリーグ戦が終わるまでは部活に意識が向いていて、なかなか試験勉強と部活を両立することができませんでした。そしてリーグ戦が終わり、これはさすがにまずいと思っている時に、大学で行われた消防と警察の内定報告会に参加しました。合格した先輩から「自分は去年のこの報告会に参加していなければ、勉強を始めるのがもっと遅くなっていた。報告会で尻に火が付いた」と聞き、自分もまったく同じ状況であることを客観的に理解しました。本格的に試験勉強をスタートしたのはそれからです。

周りに同じ公務員を目指している人がいない中で、自分のため、将来のためと思い、ひたすら勉強しました。朝6時起床、7時までに朝食を済ませて正午まで勉強、午後も20時まで勉強して24時就寝と、ロボットのような生活でした。今までの人生で一番勉強した時期です。苦しい日々でしたが、自分もここまでやれることがわかり、得たものも大きかったです。

入庁後は全寮制の消防学校に半年間入校し、9月に消防署に配属されます。まずは一人前の消防士になることを目指し、最終的にはハイパーレスキュー隊の一員になることが目標です。東京消防庁の職員1万8000人のうち、ハイパーレスキュー隊は300人。狭き門ですし、それにはレスキュー隊に選抜されなければなりません。危険を伴うこともあるでしょうが、「死なない消防士が優秀な消防士」と言われているので、訓練をしっかり積み重ねつつ、日々勉強をモットーにこれからも頑張ります。

宇田川 亮輔さん経済学部 国際経済学科 4年

  • 内定先: 東京消防庁
  • 私立京北高等学校出身

  • 掲載内容は、取材当時のものです