「自動車業界」と「海外とのネットワーク」の2点を重視して就職活動に臨み、最高の環境が整った機器メーカーに内定を得た、理工学部機械工学科の榎本拓哉さん。入学時には漠然としていた将来像が明確になった4年間の歩みを語ってくれました。「日本の技術力で世界の人々に安心できる暮らしを届けたい」。その思いの根底には、機械工学科ならではの“ものづくりの精神”が息づいています。

バラエティに富んだ実験から出会えた興味

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私が機械工学科を選んだ理由は、エンジニアリングについて包括的に学ぶカリキュラムが整備されていたからでした。機器メーカーで開発・設計に携わる人々のドキュメンタリーを見て、漠然とエンジニアに憧れは抱いていたものの、具体的に「どんな製品を扱いたいか」が決まっていなかったため、大学4年間でじっくり将来を描こうと考えていたのです。

ところが意外にも早く、2年生の終わり頃にはある程度の方向性が定まりました。その軸となったのが、1、2年次の必修科目である「機械工学実験」です。この授業の主旨は、実験を通して「機械工学」の基礎知識を養うこと。基礎とは言っても扱う機器は本格的で、普通高校出身の自分にはワクワクする実験ばかりでした。なかでも重金属を加工する旋盤のパワフルな動きには、思わず見入ってしまったほどです。

実験テーマは2週間ごとに変わるため、なかには、正直なところあまり興味を持てないテーマもありました。その一方で「もっと深く追求したい」と思えるテーマに出会えたのも、2年間を通して実にバラエティに富んだ実験を体感できたからだと思うのです。好き嫌いを決めつける前に、まずは飛び込んで、手を動かしてみる。今振り返ると、「機械工学実験」の授業は、そうした精神面からも自分を成長させてくれたのだと思います。

技術者が世界を広く見るべき理由とは

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「機械工学実験」の授業を通して、「金属材料を扱う業界に進みたい」という方向性が見えましたが、さらに「自動車関係」へと業界を絞り込んだのは、3年生で学んだ3次元設計の授業が決め手でした。「3D CADソフト」は、今や自動車業界では欠かせないツール。何となくその存在は知っていましたが、聞くと触れるとでは大違い。立体の製図がコンピュータ上でいとも簡単に描けていくのが不思議で楽しくて、休み時間にも友人たちと集まって製図を試行錯誤するほど夢中になってしまったのです。

学びを通じたステップ・バイ・ステップで自動車業界に目標を定めた一方で、「日本の技術力を世界に伝えたい」という思いも芽生えました。海外に行くとボロボロのクルマが走っていたり、信号機が壊れていたりと日本では考えられない光景を目にすることがあります。現地ではそれが日常なのでしょうが、決して安全な環境とは言えません。人々が安心して暮らせる社会を目指すこと。それが「ものづくりの精神」なのだという教授の言葉を、その光景を見たときに思い出しました。

また、教授たちはよく「研究室に籠るな。外に出なさい」と言います。周りの友人から比べたら、自分はそれほど海外旅行の経験があるわけではありません。それでも日本から一歩出て実感したことは、確実に就職活動の指針となりました。大学とは専門技術や知識に留まらない、人間としての学びができる場なのだと改めて感じています。

確実な基礎を、幅広い応用に生かせる社会人になりたい

内定をいただいた矢崎総業株式会社は、自動車のワイヤーハーネスでは業界トップシェアを誇るメーカーで、アジア圏を中心に広く世界に工場を展開している企業です。東洋大学にはとても充実した語学習得プログラムがあるにも関わらず、自分はあまり積極的に活用してこなかったことを、今になって反省しています。しかし、これからの社会において英語力は必須。実際、就職活動でもそこが自分の弱点だと、やや負い目を感じることもありました。しかし大学の4年間以上に、社会人としての人生は長い。学べる時間はまだ十分にあるのだと、内定をいただいた今、改めて気持ちを引き締めています。

何より大切なのは、学んだことを実地で生かすこと。それは「基礎を養って応用に生かす」という、大学の実習や演習の授業で繰り返し学んだ筋道にも通じます。矢崎総業では留学などの教育制度が設けられており、30歳を過ぎたあたりには5年間の現地赴任もあると聞いています。今はまだ未熟な自分ですが、キャリアアップに努め、10年後には「この仕事は榎本に任せれば大丈夫だ」と信頼される社会人に成長していたいと思っています。

榎本 拓哉さん理工学部 機械工学科

  • 内定先:矢崎総業株式会社
  • 埼玉県立杉戸高等学校出身

  • 掲載内容は、取材当時のものです