2カ月前にインドへ行ってきたばかりだという東洋思想文化学科の平野玲子さんは、「現在の自分の環境がいかに恵まれているかを実感できた」と語る。昼間は社会人として働き、夜間に学ぶなかで、ヨーガの教典を原典で読むという目標を掲げている。ヨーガに興味を持ち、それが大学での学びにつながるまでに、どのような経緯があったのだろうか。

ヨーガをもっと深く知りたい

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もう一度大学で学ぼう。私がそう決意したのは、東日本大震災がきっかけでした。

漠然と哲学に興味を持っていたのは高校のころ。しかし、深く学ぼうとはまったく考えず、大学進学後は数学を学び、そのままシステムエンジニア(SE)として社会に出ました。

社会人になって、少しは運動をしなくては、と思い立ち、気分転換のつもりでヨーガを始めました。それが、いつの間にかその魅力に取りつかれ、ヨーガをもっと深く知りたいと思うようになっていったのです。

ヨーガを少し勉強するとたどり着く「インド哲学」の文字に、哲学への興味が再びわき上がりました。インド哲学を本格的に学びたい。その思いは日増しに強くなっていきます。

そのころ、忙しいSE職から病院の広報へと転職しました。定時に職場を出て自宅に帰り、時間に余裕のある日々を過ごしていましたが、何となく過ごす毎日に、これでいいのかな、という疑問を抱くようになりました。そんなとき思い出すのは、決まって東日本大震災のことでした。

学びたいという気持ちに正直に

震災が発生し、自分が明日生きている保証は何もないのだと震えました。それなのに、自分は今のままでいいのか。学びたいのになぜ学ぼうとしないのか。時間がないわけじゃない。お金がないわけでもない。大学に行けないのと、行かないのは違う。行かずに後悔したくない…そうして私は、イブニングコースで学ぶことを決意したのです。

いざ入学すると、働きながら勉強するという大変さに直面しました。1年次は月曜~土曜の毎日が授業で、休みは日曜だけというハードスケジュール。ヨーガを深めたくて大学に通い始めたのに、そもそもヨーガをする時間がありません。これでは本末転倒ですよね。

そこで、2年次の今年は時間の使い方を考えようと、自分の生活を見直しているところです。

『ヨーガ・スートラ』を原典で読む!

今の私の目標は、単位を取ることや資格を取ることではなく、ヨーガの教典『ヨーガ・スートラ』を原典で読むことです。これはサンスクリット語で書かれているので、サンスクリット語の習得も必要となります。

ヨーガはそもそも古代インドが生み出した修行法で、さまざまな姿勢や呼吸法を実践していきます。今年はヨーガの実習授業もあり、みんなで楽しく学んでいます。

イブニングコースには、現役入学の人、私と同じように働きながら学ぶ人、そして今年定年退職したばかりという人など、幅広い年代の学生が在籍していて、お互いに刺激を与え合っています。普通に働いているだけでは出会えない人たちと一緒に学べるのは、やはりイブニングコースならではの魅力ですね。

卒業したその先で、いつかヨーガに関する仕事に就くことができれば幸せですが、それが叶わなかったとしても、インド哲学を学んだことはきっと、これからも私の軸となって支えてくれることでしょう。

平野玲子さんイブニングコース 文学部 東洋思想文化学科 2年

  • 所属ゼミナール:沼田一郎ゼミナール
  • 東京都・私立京華女子高等学校出身

  • 掲載内容は、取材当時のものです