「電気機器」と「パワーエレクトロニクス」が専門の堺 和人教授が取り組むのは、電気自動車や自然エネルギーの有効活用などだ。より良い未来の実現をめざしたそのテーマの数々は、理系志向の人にはきっとワクワクするものばかりだろう。堺教授もまた「理系の力が輝けば、日本はもっと元気になりますよ」と、次世代のエンジニアや研究者にエールを送る。

我慢しない省エネの実現に向けて

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ここ数年、夏になると「消費電力を削減しましょう」というメッセージをあちこちで聞きますね。「省エネ」をうたった家電も増えました。しかし、こうした家電の弱点は「基準の設定のとき省エネになる」こと。たとえば25℃を基準に設計されているエアコンの場合、30℃にすると、とたんにエネルギー効率が悪くなるんです。

これは家電に限らず、電車にしろ、自動車にしろ、電気で動くモータを使ったものすべてに共通した弱点です。(※モータの消費電力は国内消費電力の約1/2)

従来設計というのは、一つの基準しか設定できないため、この課題は解決できないものとされ、これまではいかに「基準の設定」の効率をあげるかが開発のテーマになっていました。しかし、電車も家電も、標準運転のときばかりではありません。

現在、私の研究室ではどんな状態でもムダなくエネルギーを電力に変換できるモータシステムの研究に取り組んでいます。設計で最高効率をめざすのではなく、設計より大元の「原点」を見直すことにしたのです。

省エネを意識するのは大切です。しかし、電気を切ったら困るところもあります。命を預かる病院は、その最たる例です。新たな電気システムが、「我慢の省エネ」をしなくてもいい社会の実現に貢献したいと思っています。

電力インフラにもなるエコカー開発

研究室では自動車メーカーとともに、ハイブリッド車の共同開発もスタートしました。

今、クルマ業界で最も注目されているのが、家庭用コンセントでも充電できる「プラグイン・ハイブリッド車」と呼ばれるクルマと電気自動車です。現状のハイブリッド車は充電ができないため、減速時のブレーキで発電した電気とガソリンを併用していますが、このクルマは家庭で充電して電気自動車として走行できます。

家庭用コンセントは電力会社の電力網とつながっていますから、たとえば、家庭の太陽光発電で作った電気をクルマのバッテリーに蓄えて、使用しない場合にコンセントを通して電力会社に売ることもできるので、エネルギーをムダなく共有して利用できます。自ら発電するだけでなく、充電できるのも非常時にはとても心強いですね。

また、自然エネルギーをムダなく活用できる点でも、このクルマは大いに役に立ちます。自然エネルギーは、人間の都合通りには発電してくれません。夜中に強風が吹いて風力発電所がフル稼働しても、使う人がいなければ、捨てるしかないのです。

こうした余った電力を大きなバッテリーに蓄えておけるのも、このクルマのメリットですね。電力とクルマが一体化した、まさに「動くエネルギーシステム」。そんなクルマが普及すれば、社会は相当大きく変わりますよ。

理系の力が日本を元気にする!

今のところ、電力網は国内でしかつながっていませんが、将来的には通信ネットワークのように世界でつながって、必要なところに必要な電力を送ることも想定されています。

たとえば、太陽光発電は夜には稼働しませんが、日本が夜のときに地球の裏側は昼間です。そうしたシステムの開発にも、私の専門である「電気機器・パワーエレクトロニクス」の分野は携わっています。

日本の電気システムや社会インフラシステムの技術は世界でもトップレベル。大手メーカーが世界的に業績を伸ばしているように、日本の技術は世界各国に貢献しています。

取り組むべき課題もたくさんあるだけに、理系志向の人にはきっとやりがいがあるはず。みなさんの理系の力で、未来の日本を元気にし、世界のエネルギーと環境問題に対して科学技術で貢献しましょう。

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堺和人教授理工学部 電気電子情報工学科

  • 専門:エネルギー変換(電気機器、パワーエレクトロニクス)

  • 掲載内容は、取材当時のものです