2022年度国内外部評価を実施しました
東洋大学グローバル・イノベーション学研究センターの2022年度の活動を外部有識者(国内在住)の方より評価していただくため、外部委員として4名の先生にお願いいたしました。
今回は、センター側からオンラインにて個別に外部委員の先生方からご意見を伺う形で実施いたしました。
委員の先生方:
君塚直隆先生(関東学院大学教授)
高橋幸先生(武蔵大学非常勤講師)
若江雅子先生(読売新聞編集委員)
開沼博先生(東京大学大学院情報学環准教授)
各委員からの評価は、下記の通りです。
1.多様な研究活動の継続について
(1)客員研究員からのさらなる関与をうながせないだろうか。
センターには、すでに客員研究員として貴学外の研究者が委嘱されているが、奨学寄付金をもとにしたプロジェクト以外では、活動が見られなかった。奨学寄付金については効果的かつ効率的に運用されている点を確認したので、「イノベーションランキングの作成」や「研究センター紀要発行」なども、客員研究員の手を借りて、予算の適切かつ適時の執行をもとに、研究活動の充実へとつなげてほしい。
(2)貴センターからの根拠資料・説明にあった通り、2022年度も、GICセミナーをはじめ、韓国ソウル大学とのレクチャーシリーズを継続している様子を確認した。とりわけ2022年度は、社会学というよりも、より実務家を中心とした印象を受けた。広告代理店(博報堂)、実務家経験をもつ教員(梅村仁氏)といった、これまでのセンターの活動をより広げる人脈の構築へとつながっている点を確認できた。
(3)外部との連携の継続について
2022年度は、従来からのソウル大学や九州大学だけではなく、とりわけシンポジウムでは、地方自治体や企業等との積極的な連携が見られている。シンポジウムでは、前センター長の竹中平蔵客員研究員からの基調講演をはじめ、長時間にわたるインテンシブな議論が行われたものと説明を受けており、その点は資料からも確認できた。
2.広報活動の充実について
(1)広報活動については、たしかに、昨年度も提言をしたものの、やはり充実しているとは言い難い。センターからの説明によれば、ソーシャルメディアの活用にはまだ障壁があるものと思料される上、なにより人員の点で、研究助手に大きな負担がかかっていたことは否めない。昨年は、セミナーなどの写真や動画をWebサイトに掲載してはどうかと提言したものの、今年度は、そうした活動が見られなかったのは残念である。来年度は、研究助手に加えてアルバイト職員を増員する予定とも説明を受けており、充実が期待されるところである。
(2)センターからの説明では、ソーシャルメディアの活用は障壁があるとのことだったが、センター長をはじめとして、個人の資格でツイッター等を運用するというわけにはいかないのだろうか。
(3)昨年度の評価では、各学会のメーリングリストの活用を提言したのだが、今年度のように実務家を中心にしたイベントであると、学会にはリーチしづらいかもしれない。
そこで、昨年度の提言をより発展させて、センターみずからメーリングリストを開設するというのは、どうだろうか。
今年度までに蓄積した人脈は、センター長を中心として幅広いものがあると思われるし、また、竹中平蔵・前センター長の知名度を借りながら、政財界にも広くアプローチするといった方向も考えられるのではないか。
もちろんこれは、アイディアベースであり、すぐに実現を望むものではないとはいえ、新年度からの体制のなかで、より効果的な発信力の拡大を考えていただきたい。
(4)昨年度からの継続になってしまい心苦しいのだが、セミナーの動画公開を提言したい。2023年度は、研究助手に加えて、事務作業を担当するアルバイトを雇用する予定と伺ったので、より効果的かつ積極的な広報活動が期待される。サーバー容量等の問題があるなら、クラウドの活用をはじめとして、いろいろな手段を考えていただきたい。
3.アウトプットについて
(1)たとえば、「ディスカッションペーパー」の積極的な発行があげられる。センターの活動として、たしかに上掲で評価した活動の充実は認められるものの、よりアカデミックな「業績」としての貢献も望まれるのではないか。たとえば、昨年度の提言をふまえれば、大学院生を対象としたワークショップや論文執筆セミナーの開催とともに、センターを構成する教員だけではなく、外部からの投稿を広く呼びかけ、受け入れてはどうだろうか。ただ、この点についても、来年度は、センター長を中心に改善を図るための具体的なプログラムを用意しているとの説明をうけており、期待しているところである。
(2)研究センターである以上は、論文や書籍のかたちで何か「見える化」を試みてほしい。もちろん、「グローバル・イノベーション・ランキング」という大掛かりなプロジェクトを継続している点は大きく評価できる。他方で、ディスカッションペーパーをはじめ、センターの活動をもとにした何らかの「業績」が欲しい。これについては、センターからの説明によれば、奨学寄付金をもとに運用されているプロジェクトでは、論文や報告書としてまとめられているとのことであった。ただ、より広く研究成果を還元するためにも、センターの構成員が中心となって、ウェブサイトに掲載されるディスカッションペーパーのかたちで研究成果をあきらかにしてほしい。
4. センターの今後について
(1)2022年度は、従来の体制の延長線上にあるものと思料され、総合大学としての貴学の強みを活かしきれてないように見受けられる。もちろん、「グローバル・イノベーション学」を主題とする以上、国際学部と経済学部のメンバーが中心になるのは理解できるとしても、経営学部はもちろん、法学部、情報連携学部、さらには、理工学部といったいわゆる理科系の学部にも幅広く呼びかけてほしい。センターからは、来年度は、文学部をはじめとして複数の学部から運営委員を構成する旨の説明を受けており、この点についての課題感を共有してもらっている点を確認できた。
(2)センターには法学部の方もおられるので、イノベーションにおける法律的な側面について、今まで以上に注力してほしい。
日本では、しばしば「岩盤規制」がイノベーションを妨げていると言われるが、法律学の観点からの議論は、あまり見られない。すくなくとも、これまでのセンターの活動では、法学部の教員が中心となったセミナーなどが見られていないようなので、来年度以降は、この点についての充実を提言したい。