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【著作紹介】悪いヤツらは何を考えているのか ゼロからわかる犯罪心理学入門

[2020年11月更新]

悪いヤツらは何を考えているのか ゼロからわかる犯罪心理学入門

著者:桐生 正幸(社会学部社会心理学科 教授)
出版社:SBクリエイティブ
出版年:2020年7月発行
ISBN:9784815604448
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内容:
心理学のなかでも、とくに「犯罪者」の心の中を掘り下げるのが、「犯罪心理学」という学問分野です。
なぜ、私たちの社会では犯罪が起きてしまうのでしょうか?
そして、なぜ犯罪はなくならないのでしょうか?
本書は、豊富なビジュアルと共に、犯罪心理学の基礎をわかりやすく解説した入門書です。

 

教員メッセージ

大学教員になる前の21年間、山形県科学捜査研究所で、心理学担当の研究員として働いていました。
最初は、犯罪に関わった者しか知り得ない記憶情報の有無を調べる「ポリグラフ検査」に携わり、後半は「犯罪者プロファイリング」の研究と実践にも従事しました。
山形県は犯罪の少ないところです。それでも毎日、何らかの事件が発生します。
空き巣(侵入窃盗)、ストーカーなどはもとより、殺人、強盗、放火といった凶悪事件、さらには覚せい剤や大麻などの薬物事犯、公職選挙法違反などなど……。
盆暮れも休祭日も関係なく、各地の警察署から要請があれば、事件発生時から駆けつけ、現場観察し、目撃者や被害者の話を聞き、 容疑者が浮上した際には、面接・検査を繰り返していました。拘置所で容疑者の面接をしたことや、鑑定人として裁判所に出廷したこともあります。
殺人事件の現場では、すべての感情を押さえつけ、事実だけを見る研究者に徹しました。子どもや女性が性的被害に遭った事件では、 わきあがる加害者への憤りや、被害者が抱く恐怖心への共感を隠し続けました。
大学教員になった今でも、講義中などに、そのときの状況が突然思い出され、言葉に詰まることがあります。
犯罪は、当事者や被害者、周辺の人たちに多大な負の影響を与えます。同様に、捜査や矯正に関わる者にも知らぬ間に心へ傷を与えています。
犯罪心理学とは、そのような痛みが伴う事象を冷静に科学的に扱う学問なのです。

当時、働きながらわかったことが1つありました。それは、犯罪という稀な出来事は、間違いなく私たちの日常生活の中で起きているということ。
そして、犯罪者は私たちと同じ生活空間を生きており、私たちが大なり小なり犯している過ちの延長上に犯罪があるということです。
無論、犯罪といってもさまざまタイプがあり、同じようにくくることはできないでしょう。
しかし、ほとんどの事件は、決して別世界の出来事ではなく、まぎれもなく私たちの社会の出来事です。
そして、犯罪者もまた、私たちと同じ人間なのです。

私たちは、世の中が不安な状態になると、得てして身勝手になります。自己保身の度合いが高まり、不安の原因を誰かのせいにしないと安心できなくなっていきます。
結果的に誰かを傷つけ苦しめるような行為を、大なり小なり、知らぬ間に行ってしまう負の側面が、私たちの心の中にも内在しているといえます。
犯罪心理学とは、私たち自身の心の闇にも切り込んでいく、痛みを伴う学問でもあるのです。

とはいえ、犯罪心理学で研究対象となるのは、現実の「犯罪者」です。法を犯し、人を傷つけ、ときにはその生命や尊厳さえも奪う彼らは、一体何を考えているのでしょうか?
本書では、犯罪心理学がこれまで明らかにしてきた研究を中心に、その問いにアプローチしてみました。
女性や子どもが巻き込まれる凶悪犯罪についても、具体的な対策を盛り込みながら、コンパクトにまとめました。
「悪いヤツら」の心理と行動を読み解き、犯罪から身を守る一助として、本書がお役に立てばと願っています。

[著者] 桐生 正幸(キリウ マサユキ)

桐生正幸先生

山形県生まれ。東洋大学社会学部社会心理学科教授。日本犯罪心理学会常任理事、日本心理学会代議員。
文教大学人間科学部人間科学科心理学専修。博士(学術)。
山形県警の科学捜査研究所(科捜研)で主任研究官として犯罪者プロファイリングに携わる。その後、関西国際大学教授、同大防犯・防災研究所長を経て、現職。科捜研時代には、ほぼ全罪種の犯罪現場に立ち会った。現在も、その豊富な経験を活かして、実際の捜査に協力することもある。また、兵庫県尼崎市の地域防犯アドバイザーなどを務めながら、「人を犯罪に走らせる要因」を総合的に検討し、データ分析を駆使した実践的な犯罪心理学の研究を行っている。新聞、ワイドショーや報道番組での事件解説や、テレビドラマ・映画の監修など、さまざまな分野で活躍中。主な著者に『司法・犯罪心理学』(北大路書房 編著)、『基礎から学ぶ犯罪心理学研究法』(福村出版)などがある。

関連リンク

東洋大学研究者情報データベース(桐生正幸教授)