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【著作紹介】観光と福祉

観光と福祉

著者:島川 崇(国際観光学部国際観光学科 教授)
出版社:成山堂書店
出版年:2019年10月発行
価格:2,800円+税
ISBN:9784425929313
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内容:
2020年東京オリンピック・パラリンピック開催を契機として、交通のバリアフリーや様々な場面でのユニバーサルデザインの導入など、日本国内のハード面での整備は進んでいる。観光に関わるモード(陸海空の交通機関、旅行業者宿泊業者、地方自治体)がどう福祉に取り組んでいるのか、また、介助士や補助犬などの福祉のサポートシステムがどう関わっているのか、具体例を挙げながらその現状を紹介する。そしてこれらの取り組みを一過性で終わらせないための今後の課題を提起。観光を推進するだけでなく、心のバリアフリーが定着する真の意味での福祉社会の在り方を考える一冊。

成山堂書店の紹介ページ

 

教員メッセージ

 「日本には『お・も・て・な・し』の心がある」とのプレゼンテーションで、2020年の東京にオリンピック・パラリンピックが舞い込んできた。 2020年に向けてバリアフリー、ユニバーサルデザインのハード対応は急ピッチで進められている。 しかし、日本人の心は果たして高齢者や障がい者にやさしいのだろうか。例えば、電車に乗って、高齢者や障がい者が乗車してきても、席を譲らない人はかなり多い。私がかつて暮らしていた英国や韓国では、さっと席を譲る人が必ずいる。そして、譲らなかったときの周囲からの白い目がある。最近出張で頻繁に訪れるマレーシアでも、街は段差だらけであるけれど、その段差を越える人の優しさがある。マレーシアはもともと多様な民族が集まり、違いを受け入れるってことが自然にできるから、余計に障がい者にもやさしい。 それに比べて日本は無関心があふれている。困っている人がいても、視界に入っていないかの如くふるまう人ばかりである。日本人は優しく親切だなんて過大評価もはなはだしい。日本人が誇っている「おもてなし」だって、一つひとつをよく見てみると単なるマニュアルをなぞっているだけのものに過ぎないのではないか。 バリアフリー、ユニバーサルデザインのハードの整備も、2020年が終わったらどうなることやら。今は特需に沸いているだけで、2020年以降、予算が付かなくなったらぴったりと止まってしまうのではないか。 そうならないように、そして2020年以降も多くの人に福祉に関心を持ってもらいたいと願って、本書を執筆した。 福祉を知ることは、生き方を考えることだと常々感じる。この生き方で果たしてよかったのだろうか。自分はちゃんと人間らしく生きているのだろうか。 そもそも人間らしさとはいったい何なのだろうか。福祉から多くのことを学ぶことができる。特に第10章の板垣さんのコラムを是非一読してもらいたい。 私も生き方に迷ったとき、花巻を訪れ、板垣さんに会う。これこそ、旅の醍醐味だ。

目次

第1章 福祉と観光
1-1 福祉とは―福祉という言葉のもつ意味
1-2 観光と福祉を結びつける用語
コラム ロナルド・メイスがデザインという言葉に託した想いとは
1-3 福祉の考え方の国際比較
1-4 観光に関係する日本の福祉の法整備
1-5 すべての人々を幸せにする観光のあり方 ー 受け入れ側の視点から
1-6 観光地に住む地域住民からも求められる観光の福祉的対応

第2章 旅行会社の取り組み
2-1 旅行業法、旅行業約款との関連
2-2 現状の取り組み状況
2-3 バリアフリー旅行の取り扱い事例
2-4 ホールオブライフ、生涯を通した観光の実現
コラム チックトラベルセンターの取り組み

第3章 空港の福祉的対応
3-1 空の福祉とは
3-2 空港の福祉的対応
3-3 空港ユニバーサルデザインの先駆者―中部国際空港
3-4 「 2020年」を見据えた空港ターミナルビルの福祉的対応―羽田・成田の新たなる挑戦

第4章 航空会社の福祉的対応
4-1 健康状態に起因する航空機への搭乗不可・搭乗制限ケース
4-2 制度・サービス面での福祉的対応
4-3 航空実務における福祉的対応について
4-4 これからの福祉的対応に期待すること
コラム プライオリティ・ゲスト・カードのアイディア

第5章 陸上交通の福祉的対応
5-1 鉄道の福祉的対応
5-2 バスの福祉的対応

第6章 宿泊施設の取り組み
6-1 宿泊施設に関する法令―旅館業法
6-2 宿泊施設における福祉的対応に関する法令
6-3 宿泊施設の福祉的対応
6-4 宿泊施設における福祉的対応の現状

第7章 福祉的対応を考えた観光まちづくり
7-1 観光と福祉
7-2 観光とまちづくり
7-3 移動弱者の旅行ニーズ
7-4 観光まちづくりと福祉的対応
7-5 観光まちづくりの福祉的対応に向けた制度作り
7-6 高山における観光まちづくりと福祉的対応
7-7 福祉的対応としての観光まちづくりと今後
コラム 特定非営利活動法人湘南バリアフリーツアーセンターの取り組み

第8章 サービス介助士の実践
8-1 サービス業で活躍するサービス介助士
8-2 サービス介助士広がりの背景
8-3 超高齢社会の進行とサービス介助士
8-4 合理的配慮の提供とサービス介助士
8-5 サービス介助士資格所得講座とは
8-6 サービス介助士が身につける介助技術
8-7 心のバリアフリー
8-8 サービス介助士の観光分野への展開

第9章 身体障がい者補助犬の対応 ー 身体障がい者補助犬を理解する
9-1 身体障害者補助犬法とは
9-2 盲導犬とは
9-3 介助犬とは
9-4 聴導犬とは
9-5 サポートの方法
9-6 身体障害者補助犬法による認定
9-7 身体障害者補助犬法成立のきっかけ
9-8 補助犬同伴受け入れについて…

第10章 障がい者とアートの可能性 ー 観光へのまなざし
10-1 障がい者とアートの関わり方
10-2 アール・ブリュットとは
10-3 障がい者アートで共生社会の実現へ
10-4 ソーシャル・インクルージョンとアート
10-5 アートで目指す共生社会―観光へのまなざし
コラム るんびにい美術館の事業と、その目指す社会について

第11章 ホスピタリティを学ぶ対象としての福祉
11-1 ホスピタリティ=おもてなし?
11-2 安心保障関係
11-3 相互信頼関係
11-4 福祉の現場から着想を得た新たな関係性としての「一体関係」
11-5 既存学問からのインプリケーション
11-6 先を行く福祉施設のマインド

第12章 福祉的対応の今後の展開
12-1 旅行会社における今後の展開
12-2 公共交通機関の今後の展開
12-3 宿泊施設における今後の展開
12-4 まちづくりにおける今後の展開
12-5 補助犬を巡る新たなる問題点

[著者] 島川 崇(シマカワ タカシ)

国際基督教大学教養学部卒業、ロンドンメトロポリタン大学MBA観光学修了、東京工業大学情報理工学研究科情報環境学専攻博士後期課程満期退学。
日本航空、松下政経塾、韓国観光公社、日本総合研究所、東北福祉大学を経て、本学着任。
専門は観光マーケティング、サステナブル・ツーリズム、福祉観光、航空経営論。

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