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【著作紹介】小さな民のグローバル学-共生の思想と実践をもとめて-

小さな民のグローバル学著者長津 一史 (社会学部社会文化システム学科 准教授) 【共編著】
出版社: ぎょうせい
出版年:2016年1月発行 
価格:2,500円+税
ISBN: 9784324099445
所蔵館:白山、板倉


内容:  「小さな民」とは――
東南アジア地域研究を専門とした社会経済学者、村井吉敬氏が提唱した概念で、権力やお金がなくても、伝統的な自分たちの生活やそれをとりまく自然に誇りをもって生きる人々をさす。
本書の中では、インドネシア・バリ島の観光施設で働く人々、ジャワ島で生薬飲料(ジャムー)を売る行商、中国から他国に移住する朝鮮族の家族、タイ南西部で国籍を持たずに海上で移動生活を営むモーケン人、等々を取り上げる。
かれらは、強大な権力と市場(資本主義経済)によって生活圏を歪められ、権力側からの差別を受けながらも、現実に立ち向かい、日々の生活をたくましく生きている。そのような生活や市民運動から、人々のつながり、生き方、モノの流れ、世界のあり方を考察する。
「小さな民のグローバルなつながり」から、“多文化共生の時代”を生きるヒントを示唆する論考集。
「フェアトレード」や「少女に対する暴力(女性割礼等の伝統的慣習)」、「人間の安全保障」など、社会的問題も取り上げる。


ぎょうせいの紹介ページ

教員メッセージ

本書は、東南アジア地域研究を専門とした社会経済学者、村井吉敬(1943-2013年)が提唱した「小さな民」の概念を手がかりとして、既存の資本主義経済や国民国家体制が主導するのとは異なるもう一つの(オルタナティブな)グローバル化と共生社会のあり方を模索しようとするものである。

同書の主役は、権力も富もなく、多国籍企業の物質主義、消費文化に生活圏を浸食されながらも、伝統的な相互扶助のネットワークと助け合いの文化を土台として民衆生業で支えあい、したたかに現実を生きる人々である。インドネシア・西ジャワの貧困線以下の収入で暮らす稲作農民、山村の鍛冶屋、町の人力車曳き、生薬の行商人、移動屋台のそば屋等々――こうした人々を村井は「小さな民(オラン・クチル“orang kecil”、インドネシア語で「小さな人(人々)」の意味)と呼んでいる。

「小さな民」とかれらを脅かす権力や市場との非対称的な関係は、『小さな民からの発想』が出版されてから30年以上がたった現在、経済のグローバル化を経てよりいっそう顕在的になり、また世界のいたるところでみられるようになった。市場経済中心のグローバル化は、地域社会(ローカルな社会)が培ってきた伝統や生業に多大な影響を与える。しかし同時に、地域社会は新しい行動や運動を創出することによって、そうしたグローバル化状況に対峙しようともしている。

こうした「ローカル・グローバルの相互作用」という視点が生まれてからすでに10年がたつ。この視点もまた、「小さな民対大きな(多国籍)企業」の構図の延長上にある。本書は、こうした視点をふまえつつ、ローカルな空間と小さな民の生活世界に焦点をおいて、地域社会や人々が国民国家の枠組みにとらわれずに運動や生活実践を創りあげていく過程、あるいはローカルな運動が地域や国境を越えて連帯・連携していく過程、つまりもうひとつのグローバル化を描き、発信しようとする。『小さな民のグローバル学』という主題には、そうした思いが込められている。(序章から)

目次

第1部 小さな民の生き様――民衆生業と移住
第1章 観光という日常 ――バリ島の小さなホテルで働く人々
第2章 民衆生業の社会経済圏 ――インドネシア・ソロ地方出身のジャムー売りの世界
第3章 移動する朝鮮族と家族の分散 ――国籍・戸籍取得をめぐる「生きるための工夫」
第4章 四国の山村における国際結婚 ――フィリピンからの「小さな民」の生き方
column 「小さな民」としての日本農民

第2部 人権と援助――少女・先住民・地域住民の声
第5章 少女に対する暴力 ――「伝統」に挑む権利ベース・アプローチ
第6章 〈他者〉との共存を求めて ――フィリピン先住民族の自己表象
第7章 開発と紛争 ――インドネシア・アチェのODA事業による土地収用と住民の周縁化
第8章 「普遍的価値」と「人間の安全保障」 ――ODA大綱の見直しをめぐって
column ジェンダーと人権 失われた女性:インドの性比問題

第3部 モノからみる世界と日本――グローバル化と民衆交易
第9章 コーヒーから見える世界 ――東ティモールのコーヒー生産者とフェアトレードを考える
第10章 インドネシア・パプア州でのカカオ民衆交易 ――共に生きる関係を目指して
第11章 グローバル市場とフェアトレードの課題 ――南米コロンビアの伝統的金採取業の挑戦と挫折
column モノから小さな民に思いを馳せるということ

第4部 海の民の豊かな世界――国家と国境の向こうへ
第12章 海民の社会空間 ――東南アジアにみる混淆と共生のかたち
第13章 ひとはいかに海を利用してきたか ――海域東南アジアの海民社会から考える
第14章 フィリピンとマレーシアのあいだの海域世界 ――スル諸島ムスリム社会の周辺化と自律
第15章 海民と国境 ――タイに暮らすモーケン人のビルマとインドへの越境移動
column 海道の起源を求め、海域世界を歩く インドネシア・北マルク諸島のフィールドから

[著者] 長津 一史 (ナガツ カズフミ)

長津一史先生【学歴】
1993年04月 - 1998年03月, 京都大学, 人間・環境学研究科, 文化・地域環境学
1992年04月 - 1993年03月, 上智大学, 大学院外国語学研究科
1987年04月 - 1992年03月, 上智大学, 外国語学部, ロシア語学科

【学位】
人間・環境学修士, 京都大学
博士(地域研究), 京都大学

【経歴】
  2006年04月 - 現在, 東洋大学, 社会学部, 准教授
  2017年10月 - 2018年03月, シンガポール国立大学, アジア研究所, 客員上級研究員
  2017年04月 - 2017年09月, 京都大学, 東南アジア研究所, 客員准教授
  2005年05月 - 2006年03月, 京都大学, 東南アジア研究所, 助手
  2000年05月 - 2005年04月, 京都大学, 大学院アジア・アフリカ地域研究研究科, 助手
  1998年04月 - 2000年04月, 日本学術振興会, 特別研究員(PD)

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