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【著作紹介】社会保障法における連帯概念─フランスと日本の比較分析

社会保障法における連帯概念著者伊奈川 秀和 (社会学部社会福祉学科 教授) 
出版社: 信山社出版
出版年:2015年 9月発行 
価格:7,800円+税
ISBN: 9784797267440
所蔵館:白山


内容変化の激しい社会の今日において、いかに「連帯」概念は、規範的意義をもち、有効に機能するのか。社会保障の安定化のために。

信山社出版の紹介ページ

 

教員メッセージ

 本書は、これまでの研究成果の一端をまとめた研究書です。本の基本コンセプトは、題名のとおり連帯です。

 この言葉との出会いは、私が1982年に厚生省(現厚生労働省)に入省したときに始まります。当時、社会保障、特に社会保険は社会連帯だということを省内でよく耳にしました。今でも、政府の文書には、よく社会連帯という言葉が出てくるはずです。
この社会保険といえば、ドイツかフランスであり、省内でも両国の制度は常にフォローしていた時代です。とはいえ、ビスマルクの社会保険以来、日本への影響が大きかったのはドイツですので、社会連帯というのは、ドイツ法の概念だと思っていました。
 ところが、入省2年目にフランスに勉強に行くことになり、そこで出会ったのが連帯という言葉でした。そこで調べてみると、実は連帯の母国はドイツではなく、むしろフランスだということが分かりました。また、1984年当時、フランスでは社会的排除に当たるexclusion socialeという言葉がよく登場するのですが、何を意味するのかピントきませんでした。更に言えば、nouveaux pauvres(新しい貧困者)という耳にし、訊くと成金(nouveaux riches)の反対語だというのですが、当時の日本人には理解が難しかった概念でした。

 それ以来、この連帯と社会的排除の二つの概念にこだわり、実務の傍ら細々と研究をしてきた成果がこの本に反映しています。必ずしも読みやすい本ではありませんが、日本の社会保障、特に社会保険を理解するには、ドイツ法とフランス法の理解が必要不可です。また、歴史の偶然かもしれませんが、フランスと日本の社会保険制度には、結構共通点があります。
社会保障に対する理解を深めたい方は、手にとって目を通していただければ幸いです。
 

目次

◆第1章 はじめに
1 社会保障が直面する状況
2 問題の所在
3 検討の進め方・手法

◆第2章 基本概念としての連帯の意義
1 社会保障の原点としての連帯
2 現代の社会保障の先端に位置する連帯
3 連帯概念の整理
(1)連帯の語義
(2)連帯の社会性と集団性
(3)連帯の類型
(4)友愛との関係
4 小 活

◆第3章 連帯概念の歴史的な生成発展
1 フランスにおける連帯概念
(1)政治的・哲学的概念
(2)法的概念への昇華
(3)実定法上の概念としての連帯の確立
2 連帯概念の我が国への影響
(1)戦前の影響
(2)戦後における連帯概念の発展
(3)裁判規範としての連帯
3 小 活

◆第4章 社会保障法の基礎としての連帯
1 分析の視座・アプローチ
(1)制度体系に関する本書の立場
(2)本書が依拠する連帯原理の類型
2 フランスに関する分析
(1)社会保険法の場合
(2)社会扶助法の場合
(3)日本の分析に向けての予備的整理
3 日本に関する分析
(1)社会保険法の場合
(2)社会扶助法の場合
(3)社会扶助の権利性
4 小 活
(1)連帯類型と社会保障各制度との関係
(2)社会保障の権利義務関係における連帯の機能

◆第5章 社会保障の権利義務に関する論点の検討
1 社会保障の基礎としての連帯
(1)我が国における連帯と生存権保障のこれまでの理解
(2)フランス法を踏まえた連帯と生存権との関係の整理
(3)社会保障の水準設定における連帯の意義
2 社会扶助の権利性
(1)社会扶助の権利義務関係
(2)個人給付化による権利性の強化
(3)社会扶助のパラダイム転換
3 社会保険の権利性
(1)社会保険の権利義務関係
(2)保険料拠出を巡る連帯の射程と限界
(3)財政調整を巡る連帯の射程と限界
(4)給付を巡る連帯の射程と限界
4 連帯による平等権保障
(1)連帯と平等権の関係
(2)連帯と平等の規範的意義
5 小 活

◆第6章 社会保障の主体に関する論点の検討
1 連帯の根底にある集団性
2 連帯による多様な当事者関係の形成
(1)社会保険の場合
(2)社会扶助の場合
3 小 活

◆第7章 日仏の比較分析の総括と我が国への示唆
1 比較分析の総括
(1)総括の進め方
(2)集団性から見た連帯の作用
(3)ま と め
2 我が国への示唆等
(1)持続可能な制度構築に向けた重層的な支え合い
(2)多様な主体の参画と協働
(3)連帯による権利性の強化
(4)基本的な方向としての国民連帯の強化
(5)ま と め
3 おわりに
 

[著者] 伊奈川 秀和(イナガワ ヒデカズ)

伊奈川秀和先生1959 年    長野県生まれ
1982 年    東京外国語大学外国語学部フランス語学科卒業
1982 年    厚生省入省
1998 年    九州大学法学部助教授
2001 年    年金資金運用基金福祉部長
2003 年    内閣府参事官
2005 年    内閣参事官
2007 年    厚生労働省社会・援護局保護課長
2008 年    厚生労働省年金局総務課長
2009 年    厚生労働省参事官(社会保障担当)
2011 年    内閣府大臣官房少子化・青少年対策審議官
2013 年    厚生労働省中国四国厚生局長
2014 年    全国健康保険協会理事
2016 年    東洋大学社会学部社会福祉学科教授 / 博士(法学)(九州大学)
 

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