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NPO法人ねりまねこ:「地域猫のすすめ」を通しての住民組織化活動

NPO法人ねりまねこ:「地域猫のすすめ」を通しての住民組織化活動

代表教員:佐藤 亜樹

社会学部社会福祉学科

■活動内容

 2019年118日(金)の3限目の社会福祉学専門演習IB(佐藤ゼミ:3年生14名)に、NPO法人「ねりまねこ」の副代表 亀山嘉代氏を招聘し、社会貢献活動としての野良猫問題への取り組みの経緯について話を伺った。さらに、地方自治体職員や各町の自治会を巻き込んでの野良猫対策の実情(去勢・避妊後、一代限りの猫生を住民が情報共有し見守る、野良猫に餌をやる人たちは、決まった時間に決まった場所で提供し残飯を残さない、糞尿の始末を徹底する、必要があれば第三者としての「ねりまねこ」が、猫好き住民と猫嫌い住民の間に入り協働システム構築を支援する)、この10年間での実績(10町会32地域で、野良猫数は850頭から311頭に減少)、ソーシャルワーク専門職に望むこと等について話を伺った。本講義の中で、「ねりまねこ」がUTB映像アカデミーからの取材を受けたビデオを視聴した。このビデオに登場した住民のAさんは、地域から野良猫を排除することを望んでいたが、地域猫活動に出会い、その結果、地域猫を家庭内で飼養するに至った。Aさんは、「今ではこの猫が家庭の中心です。彼女は女王様のように振る舞っているのよ。人間の家族は、それを微笑ましく受け入れています。」と語っていた。このように、本地域猫活動は、野良猫問題を機軸にした、住民相互の関係性を変化させるための活動であるともいえる。また、地域という生態系に属する動物と、多様な価値観を有する住民との「共生」を実現する活動でもある。
ねりまねこ」副代表の亀山氏からは、当会の最近の取り組みとして、新たに生まれた子猫や、高齢者の多頭飼養崩壊による飼い猫を保護し、その後、譲渡会を開催し里親につなげる活動についても話を伺った。講義終了後、学生は、11月24日(日)に練馬区で開催された保護猫譲渡会にてボランティア活動(13:0-17:00)を行った。当初は、行政と自治会の協働場面の観察や、実際の地域猫活動への参加を計画していたが、個人情報保護の観点から難しいとのことであった。そのため今回は、保護猫譲渡活動を支援するという形で地域活性化活動を行った。

■活動の成果概要

 参加学生は5名(五十嵐寛太、リョウ・ビン、小田幸、丸野妃奈子、川口真澄)であった。教員も当初は参加する予定であったが、大学院入試監督のため参加できなかった。学生の役割は、(1)会場設営、(2)建物入口付近での案内・誘導、(3)実際の譲渡プロセスの観察、(4)主催者への質問(なぜ野良猫を助けるのか、ソーシャルワーク援助職はなぜ地域猫活動に参加しないのか、この活動が住民組織化にどのように役立っているのか、であった。学生は、「ねりまねこ」副代表の亀山氏だけではなく、他のボランティアにも同様の質問を投げかけた。その結果、ボランティア・スタッフは、それぞれの考えや価値観を元に、本活動に従事していることがわかった。例えば、野良猫を助ける理由として、「野良猫を助けているのではなく、人間を助けている」という回答が大半を占める中、「猫に幸せになってほしいから」と回答するスタッフもいた。また、ソーシャルワーク援助職に対しては、「行政がもっと関わるべき(行政=ソーシャルワーク・福祉という意味合いで使われている)」という意見や、「福祉(ケアマネージャー等)は、何もせずこちらに丸投げ」、「多頭飼養崩壊現場では、緊急事案が多いため、利用者に指示したり対峙したりすることも必要なのに、福祉の人たちは、相手の考えや感情を受け入れることに偏りがち。そのため、事態が一向に解決しない」等という回答も寄せられた。一方で、「高齢者がペットを残して死亡する事例や、多頭飼養崩壊事例は増えていくだろうから、ソーシャルワーカーが関わる必要性は、今後ますます増えると思う」という意見もあった。
 本活動に東洋大学の学生が参画する必要性については、主催者より、「この活動への参加者は中高年が多く、若い世代の参加が非常に少ないため、そのような人たちが地域猫活動に関心を持ち関わってもらえることは、次世代に当該活動を継承する上で役立つ」とのことであった。また、「若くて柔軟な考えを持つ学生たちが関わることが、他地域で同様の困りごとを解決する際の活動モデルになる可能性があるため、もっと関わってほしい」「会場の設営には人手が必要。若い力はありがたい」ということであった。
 また、地域猫活動は、単なる野良猫問題ではなく、「人間の問題」であるという視点を、日頃から地域福祉の重要性を学んでいる社会福祉学科の学生が理解し、その実状に触れることは、将来ソーシャルワーク援助職として利用者と関わり、彼らの幸福とは何かを考え支援する際に、生かされるのではないだろうか。因みに、「人間の問題」とは、(1)猫の繁殖は、去勢避妊をせずに猫を徘徊させたり、無責任に捨てる人がいること多いことが原因であり、単に野良猫を非難したり、野良猫にえさをやる人だけを悪者にし、猫を殺処分して終わるものではないことを示している。このような「人間の問題」を解決するには、(2)住民同士が困りごとやニーズを出し合い、コミュニティとして意思決定を行うことが重要である。このようなプロセスを通して、地域住民の間に社会・対人関係のネットワークが形成され、誰もが住みやすい街づくりが可能になると考えられる。また、(3)そのような大人同士の交流が、子どもの共感性を育み、その地域を安心・安全なものにすることに繋がると考えられる。そのような観点から、「地域猫活動」は、単なる野良猫問題の解決ではなく、人間の問題を解決することに焦点を当てた住民組織化活動として捉えられるのではないだろうか。
 さらに、地域を新しい切り口から捉え、住民組織化をサポートする取り組みに学生を参加させることにより、東洋大学が時代を先読みする社会貢献活動を行っていることを社会に知らしめる絶好の機会になるのではないだろうか。
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