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事業内容

(1)事業目的

東洋大学は様々なスポーツ分野で活躍するトップアスリートの育成を積極的に行ってきたが、そこには科学的な研究の知見の裏づけがあること、また、文系のみならず理系も含めた高度な研究・教育が行われている総合大学であることのイメージを浸透させることを本事業の実施により図りたい。そして本事業の成果を、①アスリートサポート技術としてフィードバックするだけではなく、②地球規模の温暖化で増加している熱中症に対する予防医学的な見地に立ったヘルスサポート技術として確立し、③高齢者を始めとした国民の健康の維持・増進を図り、幅広く社会に還元することを目的とする。
 

①科学的根拠に基づいたアスリートサポート技術の多階層的研究:

アスリートが国際舞台で日々の練習成果を100%発揮して、結果を残すには、メンタル面、フィジカル面、双方のサポートが必要で、特に競技を含めた日常生活における様々なストレスにどう対処するかは大きな課題である。本学では平成22年度から、私立大学戦略的研究基盤形成支援事業「脳科学を基盤としたストレスの可視化とヘルスサポートシステムの開発研究」において、ストレスの可視化機器の開発や、ストレス生体応答の測定方法の開発研究を実施し、その成果を産学連携で実用化してきた。本研究ブランディング事業では、この研究基盤をアスリートサポート技術として更に発展させて、生体のストレス反応、特にアスリートのメンタルヘルス不調を可視化し、ストレスコーピング法(ストレス対処法)を確立することを目的とする。

②暑熱ストレスの可視化研究と熱中症サポート法の開発:

アスリートサポートに加えて、2020年オリンピック・パラリンピック東京大会は、酷暑の中での開催となるため、国内外の競技関係者および観戦者を熱中症から守る対策も必須である。熱中症は生体に過度な暑熱ストレスが負荷されることが原因とされ、ヒートアイランド現象や地球規模の温暖化の影響により日本全土およびアジア諸国でも深刻な社会問題となっている。現在、内閣官房・環境省が主体となり、酷暑からアスリートおよび観戦者の健康を守るために、都心の緑化計画や飲料水・冷却グッズ提供、緊急医療体制の整備といった対処療法的施策を講じているが、根本的な問題解決には至っていない。本事業では、この緊急性を有する熱中症問題に対して、遺伝子レベルから個体レベルに至るまで多階層的に暑熱ストレスを可視化し、根本的な熱中症対策の実用化を目指すことを目的とする。

ブランディング事業_実験風景_細胞観察

③高齢者ヘルスサポートシステムの開発:

東洋大学では、「東洋大学ビジョン Beyond 2020」を提唱し、日本や世界が抱える課題を創造的に解決する事を宣言している。特に、少子高齢化社会を迎える我が国では、国民の健康の維持・増進、予防医学的な見地に立ったスポーツの理解と振興は危急の課題である。スポーツは、体力の増進や維持に加え、ストレスマネージメントなどの効果を持つ。身体的な意味での健康増進に加え、精神的にも健康な生活を送るための重要な活動である。そこで、これまで培ってきたアスリートサポート技術の研究を基に、一般国民、特に高齢者の体力レベルや嗜好に沿った正しいスポーツの知識とトレーニング方法および、医学的・生理学的・栄養学的なサポートに加えて、心理・精神的サポートを総合的に構築したヘルスサポート法の確立を目指す。

 

(2)期待される研究成果

①科学的根拠に基づいたアスリートサポート技術の多階層的研究:

東洋大学はこれまでに、箱根駅伝、オリンピック競技大会を始めとして、多くのアスリートを輩出している。アスリートのパフォーマンスを100%発揮するために、運動生理学・神経生理学および循環生理学の多階層的なサポートを目標に、トレーニング過程において負荷のかかる様々なストレス(フィジカル・メンタルストレス)を客観的に可視化し、それを解消するコーピング法の確立を目指す。さらにIoTを用いたセルフコンディショニングシステムの構築を目指し、収集したデータをAIにより競技力向上指標として選手にフィードバックする。

本研究テーマの成果をアスリート個々に適応できれば、更なるパフォーマンスの向上を見込むことができ、オリンピック東京大会に限らず、様々な国内外の大会に持続的にアスリートを輩出することで、本学のブランド力を高めることが期待できる。

ブランディング_実験風景_温熱治療器 ブランディング事業_実験風景_光トポ

また、人間工学・運動生理学・流体力学・バイオミメティクス(生物模倣)による大学の「知」と、産業界の「技術」を融合させた産官学連携プロジェクトとして、初の競技用国産カヌーも制作プロジェクトを開始します(http://mitsuha.tokyo/)。

②暑熱ストレスの可視化研究と熱中症サポート法の開発:

我が国では、熱中症による死亡者数が昨年は約1000人、救急搬送者は5万人超、潜在的な熱中症発症者は高齢者を中心に約100万人に達しており、非常に大きな社会問題となっている。2020年オリンピック東京大会は7月後半の猛暑と多湿の季節に開催されることから、世界各国から訪れる競技選手・競技関係者および観戦者の熱中症発症者数が、激増することが予想されている。東洋大学ではこの急務の社会問題に対しても熱中症対策研究チームを昨年度から設立し、多階層的に熱中症を解析し、そのコーピング法の開発研究を行っている。(http://www.toyo.ac.jp/site/bme/bme-index.html)。具体的には、暑熱ストレスが生体に与える影響を、遺伝子・細胞・動物レベル、そしてヒト個体レベルで可視化し、熱中症の発症メカニズムを根本的に解明する。さらに、熱中症発症前に特徴的に現れる生体バイオマーカーや生体信号を非侵襲的に測定できるウェアラブル装置の開発、熱中症対策(予防)効果が期待できる機能性成分を含む飲料や食品および衣服の開発を、食品・製薬・繊維企業と共同で実施する。これらの研究成果が実用化され、熱中症の発症者数が半減すると、2020年オリンピック東京大会のみならず、グローバルな社会問題(環境、健康、産業)に対しても持続的に寄与することができる。

ブランディング_暑熱ストレスコーピング

③高齢者ヘルスサポートシステムの開発:

アスリートおよび熱中症を対象に開発したサポート技術は、一般国民への健康サポート技術への展開も容易であり、2020年オリンピック・パラリンピック東京大会以降も引き続き、日本が抱える超高齢社会を支える一助となる。現在我が国では、65歳以上の高齢者が約3400万人に達し、うち要介護者数は600万人を超えている。さらに、ストレスに対する脆弱性が亢進している「フレイル」と呼ばれる要介護予備群の高齢者が増加している。このような要介護予備軍に対して、運動習慣、栄養および心理社会的な適切なサポートの提供により、心身の状態を改善し、要介護に至るのを防ぐことができると日本老年医学会では提唱している。そこで本研究では、要介護予備軍の高齢者に対して、身体的および精神的サポートを計画している。身体的サポートでは、前述したアスリートサポート技術の研究を基に、高齢者の体力レベルや嗜好に沿った正しいスポーツの知識とトレーニング方法に、医学的・生理学的側面を取り入れた、総合的なサポート技術を構築する。特に高齢者の筋力低下は、ロコモティブ症候群や筋肉減弱症を引き起こすことから、早期の介入プログラムを導入することにより、健康寿命の延伸が期待できる。さらに前述の熱中症対策を応用することで、熱中症による死亡者数の5割を占める高齢者の重症化を防ぐことが可能となる。このように本研究テーマの成果は、高齢者ヘルスサポートの社会実装化が可能となり、今後予想される要介護高齢者の増加を防ぐ一助となることから、社会的かつ経済的意義は大きく、全国的および国際的にも重要な研究として位置づけられる。