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【TOYO GLOBAL DIAMONDS】理事長メッセージ

新しいグローバリゼーションの胎動


学校法人東洋大学 理事長  安斎 隆
2020年10月1日

世界中が敗戦となったコロナ戦

 新型コロナウイルスの世界的蔓延は、これまでのグローバリゼーションの息の根を止めんばかりであった。国境の壁はかつての戦時体制時を凌ぐほど、より強固により高く築かれた。このコロナウイルスの蔓延はグローバリゼーションによる過度の経済成長志向と都市集中化によって速められたことは否定できない。鎖国と同様の国境管理は、国内の地域間移動や外出の規制、自粛等と同様に蔓延拡大を抑えるためである。しかしこの対コロナ戦争で人類は完全に敗北を喫した。勝利した国は何処にもない。むしろすべての国が敗戦国となってしまった。将来ともこのウイルスを完全に制圧することはできない。人類がワクチンで自らを一時的な防御態勢に変えることによって耐えていくしかない。だからこそ、このような生き方にスムースに移行していくためにも全ての国が参加して、知見、治験を共有し、医薬、設備、治療法の効能と有用性、警戒すべき諸点の情報等を交換する緊要性が待ったなしである。また全ての国が敗戦国となり、経済が落ち込み、経済構造が大きく変わろうとしているため、世界の分断とは真逆の協力と提携の強化という、新しいグローバリゼーションの胎動を促していかなければならない。


歴史は変わる

 世界の歴史が変わろうとしている。何よりも人々のものの考え方を変えつつある。経済成長一辺倒から、人類と地球の将来を見据えた考え方への変化である。持続可能な発展へとSDGsの目標を明確にした生き方が国民ベースから沸き上がるようになってきている。先進諸国では都市集中化にブレーキがかかりつつある。併行して働き方も変わりつつある。在宅勤務の広範化は世界的である。芸術、スポーツも商業主義から愛好者との共存型へと変質していくように見える。

 衝撃を受けたのは、米国における凄まじい感染拡大と医療体制の不備であり、また大統領制と連邦制の下における危機管理の脆弱さである。これらを露呈させた背景には根強い人種的分断、分裂状況、そしてあまりに大きい所得・貧富の格差があることは言うまでもない。そのため世界から米国に向けられてきた自由主義、民主主義、人権尊重・平等主義、法治主義のリーダーに対する尊敬の念はかなり後退してしまったのではないかと懸念している。他方中国の成長力に期待を寄せていた先には中国の強権的姿勢の強まりを批判し、遠ざかろうとしているように窺われる。また自らの行方を米国の対極になっている中国とロシアに委ねてきた強権国家は、いずれも国内政治が不安定化してきている。

 そこで期待されているのはわが国のリーダーシップである。覇権主義を露骨にしてきている米中に対し、対等にものが言える立ち位置にあるからだ。しかもわが国は英、EU、豪、印、アジア諸国からも協力を得やすい。何を目指すかだが、今、世界の若者たちが未来の人類、地球のためにと声高に主張し始めている、①核廃絶、②SDGsの実現、特に急ぐのは脱炭素と所得・貧富の格差是正であろう。若い世代の本能的な直観力に敬意を表し、私も同調し、新しいグローバリゼーションを後押ししたいと思う。