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トビタテ生(第8期)活動レポート vol.4


報告レポート(稲子きよみ)


東洋大学国際地域部国際地域学科学科
トビタテ8期新興国コース 稲子きよみ

トビタテ留学計画のタイトル : “酒育” 新たな文化をラムで、日本で、ラオスで、世界で創る

留学期間:20189月~20198
                
(20189月~5月:フランス,20196月~8月:ラオス,計11か月間)

 

<活動総概要>

まず、フランスで交換留学生として経済を学びながら、フランスにおけるお酒と人の関係性について調査をしました。次にラオスにあるラム酒メーカーでインターンシップをおこない、そのメーカーの販売戦略や工場見学ツアー改善を行い、世界に通用する企業として成長するために貢献を試みました。またお酒の基本知識を同世代に広めるために、日本で「酒育」という基礎飲酒リテラシーワークショップも実施しました。

<フランス-交換留学>

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活動概要:東洋大学の交換留学制度でフランス・ストラスブール大学へ留学し、主に経済を学びながら人とお酒の関係性を学びました。当初の予定では次のインターン先であるラオスのラム酒会社に対するビジネスプラン提案のためにビジネスを学ぼうとしましたが、経済学部所属になったので少し方向転換をし、飲酒による経済的インパクトを調べることにしました。

 

 

活動内容:普段フランスにいるときは経済の勉強をすることが多く、経済的視点からお酒を捉え、学部中間レポートを飲酒による経済的インパクトというテーマで執筆をしました。フランスのマルセイユやパリで開催されていた世界5大ラム酒イベントにも足を運び、生のヨーロッパのラム酒マーケットの偵察にも出向きました。そこではインターン先のラム酒メーカーのお酒と競合になりうるブランドを試飲したり、それらが製造され、どこで販売されているかなどを調査しました。

正直に言いますと交換留学先の勉強も多く、当初に計画していた経営学部に所属とはならなかったので、ビジネスをアカデミックにずっと学ぶということはあまり出来ませんでした。それでも日常的にフランスの人がお酒をどのくらいの頻度でどの程度飲むのかという飲酒習慣を目の前で長期間観察することができ、フランス人のお酒に対する意識というものをダイレクトに知ることができました。

お酒を飲める量は身体的に欧米人とアジア人でそもそも異なるという点を除いたとしても、フランス人は総じてお酒をあくまで会話のおつまみとして上手に飲むことができると言えます。

またEU全体のお酒に関する規制も私が帰国後に東京で実施した「酒育=基礎飲酒リテラシー」に関してとても参考になることが多くありました。EUでは北欧を初め、多くの国が日本以上にお酒に対する規制を厳しくしています。フランスではテレビやマスメディアでのお酒の広告は禁止されており、日本のように気軽にお酒の広告を見ることはあまりありません。また日本のように飲食店で利用できる飲み放題のプランも法律で禁止されています。健康面に対する配慮のためです。日本は2013年にアルコール健康障害対策基本法というものを制定し、アルコール依存症対策などを中心に酒類の規制に乗り出していますが、EU諸国に比べるとまだまだ未熟といえます。

   またエヴァンジェリストの活動のひとつとして日本の大学生向けストラスブール留学紹介動画を現地の学生と共に作成し、YouTubeに動画をアップロードしました。ストラスブール街歩きの動画はあっても、実際にストラスブールでの生活や学生生活はどういったものなのか、ということをイメージしてもらう動画が見つからなかったからです。そのため、生活圏や留学生活にフォーカスしてストラスブールの紹介ビデオをまとめました。

https://www.youtube.com/watch?v=X3EP3ih2_H0
【5分で分かる】フランス・ストラスブール留学生活(トビタテ)

フランス留学で得られた成果:少し方向転換をする必要があるフランスでの留学でしたが、留学タイトルにあるように「酒育」という基礎飲酒リテラシーワークショップを行う上で必要であるお酒による社会的・経済的影響を学べた点はとても有意義な体験です。私の場合、ラム酒メーカーでのインターンシップをフランスの次に予定していたため、人とお酒の関係性というものは非常に興味深いものでした。特にラオスを含む東南アジアは経済的にもまだ発展途中なので飲酒に対するリテラシーはまだまだ低いと言えます。ですから、この東南アジアのラオスでまだあまり馴染みのないラム酒を売る、そしてどうお酒というものを啓蒙していくかということはメーカーにとっても忘れてはいけない視点だと考えています。ただお酒を売って儲けて喜ぶのではなく、長期的視点でお酒と人を考えるならば少し矛盾するようでも最低限のお酒の影響を伝えつつも、お酒の楽しみ方を同時に伝えていくことが売る側にとっても買う側にとっても必要な教養だという考えに至りました。

<酒育日本>
実施日:2019年5月19日

 

 

 活動概要:大学生を中心とした同世代向けにお酒の基礎的な知識を身に着けてもらい、飲酒によるネガティブな影響を減らし、自分自身で正しく判断してお酒を楽しんでもらうことを目的としたお酒のいろはを学ぶセミナーを実施しました。

以前から同世代の友人たちに「お酒の〇〇が分からない」や「酔うって結局どういうことなの?」とお酒に関する疑問を多く投げかけられていました。そんなこともあり、改めて時間を割いてみんなでお酒のことを考えてみようということでこの酒育セミナーを開催しようと考えたのです。

フランスにいるときからかなり準備をし、お酒の酔うメカニズムやお酒の製造方法、そしてお酒を嗜むとはどういうものかという3点に絞って分かりやすく伝えることを心掛けました。お酒の勉強と聞くとウイスキーの銘柄や日本酒の銘柄などを覚えたり、どのお酒が美味しいかということを想像しがちですが、そうではなくその前の段階に必要な知識を改めてみんなで学んでみようというものです。お酒の銘柄や種類よりも先にお酒の基本的な製造工程や飲んだことによる身体への影響を学ぶことのほうが重要だと考えているからです。それらを学んだうえでお酒を飲むほうが無理なく安全に飲めると思います。
そういった基礎的な部分を徹底的に解説したので、参加者の方々からとても分かりやすかったというコメントを頂くことが出来ました。少しでもお酒はよくわからない、難しいといったイメージを和らげることができたならば、今回の酒育セミナーを行った意味があったと思います。

<ラオス-インターンシップ> 

活動概要:今回のラオスでのインターンシップでは工場見学ツアーを担当しながら、お土産プロジェクトを主に実施しました。

inako2内容はラム酒メーカー会社のアメニティグッズを作成するものとお土産クッキーの製作を任されました。なぜなら「ラオスに来たらこれを絶対買うべき!」
という目立ったお土産が存在しないからです。ですから、当初のラオスでの主な活動計画ではお酒の販売戦略と工場見学ツアー改善という2点でしたが、
インターン先の要請でお土産プロジェクトがこの2か月半のインターンシップのメーンテーマとなりました。アメニティーグッズはラオスの女性デザイナーチームがつくる織物ブランドとコラボレーションし、クッキーもハンディキャップのラオスに人々が運営するカフェの皆さんと一緒にレシピを製作しました。

活動内容:お土産プロジェクトひとつめのクッキーはハンディキャップのラオスの方々が運営されているカフェに週2、3回お邪魔し、一緒にクッキーレシピを試案、試作するというものです。まずどんなお客様に購入して頂きたいかというペルソナをつくり、その結果甘すぎない米粉クッキーというものをつくることにしました。ターゲットは30~40代の女性観光客です。ちょうどそのカフェに対象年齢の女性がいたので、その方々にクッキーに関するインタービューを実施したり、ラオスにあるバーの方々にクッキーを試食してもらうことを繰り返し、外部からの意見も集めました。

 そのカフェに通い続け、新しい環境で新しい方々と一から物事を作り上げ、自分で毎回最終決断を下しながら、物事を進めていくというプロセスは今までにないくらいの負荷でした。周りの方には「これがいいんじゃないか」と言われ、「そうなのかもしれない」と自分の求める方向性を迷うことが多々ありました。例えば、当初想定したクッキーから全く違うクッキーへと方向転換する際も、自分にとってかなりの勇気が必要でした。しかしその過程でも妥協せず、「美味しいと思ってもらえるものとつくろう」という信念で、なんとか最終期限までにクッキーのレシピを完成させることが出来ました。残念ながら発売はまだ先ですが、価格に関しては大まかな販売利益試算をインターンシップ先に提出することで引継ぎを行いました。

一方、アメニティーはクッキープロジェクトと比較するとトントン拍子に物事が進みました。つくりたいアメニティーの種類は予め決まっており、そのデザインをブランドメンバーと構想し、完成形まで持っていくことができました。しかし最後の段階で少し問題が発生しました。それは会社のロゴをアメニティに印刷するにあたり、サイズや配置の微調整がブランドメンバーと上手くいかなったことです。言葉の壁もありますが、ほんの数ミリ単位まで直してくださいとお願いをすると、やはり相手も嬉しい表情にはなりません。しかし、なんとか交渉し、納得のいくものを完成させることが出来ました。こちらもまだ販売には至ってませんが、クッキープロジェクト同様に価格試案などを会社に提出し、引継ぎを行いました。

まず全く経験したことのないお土産コラボレーションを同時に2つ行うことは当初相当なストレスでした。なぜならお酒以外は自分にとって分野外だったからです。加えて、初めての環境に飛び込みこみながら、決められた期間の中で製品を完成させなければならない上に新しい関係性を築きながら、物事を進め、自分で最終決定を下す責任の重い経験は初めてだったからです。

 ラオスでのインターンシップで得られた成果:今回の活動で学んだことは決断力行動力です。

一つ目の決断力は記述したように、クッキーやアメニティプロジェクトにおいて物事の様々な要因を把握したうえで最終的な決断を自分自身で下すことです。これは今までやってきたようでやってこなかったことでした。自分のことは自分で決定してきましたが、大人数でひとつのことを目標にして一緒に進んでいくなかで、自分がリーダーとしてひとつひとつの判断を下していくこの経験は初めてです。どこに辿り着かなければいかないのか、そこだけを考え、進めたことにより、なんとかクッキーもアメニティも形になったと思ってます。

二つ目は物事への粘りです。それはクッキープロジェクトで経験しました。このプロジェクトは大きな方向転換を迫られたと前述しましたが、そのため3D プリンターでクッキーの型抜きを作成依頼する必要がありました。その際に、ラオスへ来る人に買って持ってきてもらう必要があったため、思いついてから大急ぎで注文する必要がありました。なんとかギリギリ間に合いましたが、そこで少しでもためらっていたらタイミングを確実に逃していました。

このように今回のラオスではインターンシップ先を介しながら、様々な国籍の人と働くことや新しい物事に挑戦しました。フランスや酒育セミナーとは一段と違い、「仕事」ということを体感できた期間でした。自分のやりたいことだけを行うのではなく、ひとつの目標に向かい、チームとして自分が貢献できることをする。それを学ぶことが出来た2か月半でした。

<トビタテ留学総括>

今回の留学目的は「酒育」という基礎飲酒リテラシーを軸にラオスのラム酒企業が興隆する貢献を行うことでした。フランス留学では人とお酒の関係性を経済的・社会的側面から学び、お酒を販売する企業が知っておくべきであろう考え方を学ぶことが出来ました。そして日本では酒育セミナーを開催し、フランスで学んだことをもとに基礎飲酒リテラシーを同世代の学生へ伝えました。最後にラオスのインターンシップ先では主に2種類のお土産プロジェクトを立ち上げ、お酒だけではない新たな側面からラオスの現地ラム酒企業へ貢献しました。

一見、酒育からお土産は関係ないのではと思えますが、あくまでラオスの企業に貢献することが最大の目的であったため、そのお土産を通じてその企業の認知度を引き上げ、ラム酒販売促進になることを目指しました。それにより間接的ですが世界に通用するラオスのラム酒メーカーのブランド価値が上がると思うからです。

結果としてフランスで学んだ経済における各国の世界的立ち位置を理解し、基礎飲酒リテラシーという概念を軸にラオスのラム酒企業へ貢献することは先進国からの経済的自立や世界へ挑戦していく人材育成を促すことにつながると考えています。今後はフランスやラオスで経験したことを同世代に共有し、自ら国内だけでなく海外でも挑戦し続けながら、そうすることの必要性も訴え続けていきたいです。