MENUCLOSE

修了生・在校生が語る大学院の魅力(大村美保さん)

社会福祉学専攻 博士後期課程修了生

筑波大学人間系障害科学域 助教 大村美保さん

 大村美保先生

社会福祉分野において伝統のある東洋大学大学院は、「地を這う実践」を知り、そのうえで研究者を養成できる場所です。


Q.大学院に、進学しようと思った動機・経緯は?

大学卒業後に就職した全国社会福祉協議会(全社協)では地域福祉や高齢者福祉など社会福祉の様々な分野を経験をさせていただきました。それらはとても貴重な経験ばかりでしたが、障害福祉を担当した2003年に、この分野で継続して仕事をすることを強く希望するようになりました。全社協は異動があるため、退職して大学院進学と障害福祉の現場経験を積むことを選択。大学院進学は、学部時代では政治学を勉強していたこともあって専門的に社会福祉を勉強したかったことが最も大きな動機です。また、当時は措置から支援費制度への切り替え前後だったこともあり全社協での仕事は日々深夜に及び、当時3歳だった上の子どもとは朝30分程度しか会うことができず、子どもの愛着形成に不安を覚えるようなことがままあったことも背景にありました。もう少し緩やかな仕事に切り替え、子どもとの関わりを増やしつつ、専門性を高めてゆこうと考えました。 

Q.なぜこの大学院を選んだのか?

障害者福祉の第一人者である指導教授が東洋大学大学院にいらっしゃったことが一番の理由です。また、自宅や職場から比較的通いやすい、交通の便がよいというのも大きな魅力でした。さらに、夜間大学院もあるため18時以降に履修できる授業がたくさんあり、働きながら学ぶ環境としては非常によいと思いました。 

Q.大学院で学んでみて気づいたこと・発見したことはありますか?

自分が知らないことやわからないことを具体的に体系的に教えてもらうところが大学院だというイメージを漠然と持っていましたが、それは違うのだと気付きました。自分で調査や研究をし、様々な角度から分析をすることで、新しい発見ができます。それを学会発表や論文等の形で発表することで間接的に対象者や関係者のよりよい人生に貢献できますし、これまで発展してきた概念自体を問い直すことも含めて学問の世界に対して貢献できます。研究は、そういう意味では極めて社会的な活動ですし、大学院は知を「教えてもらう」ところではなくて、知を「創り出す」研究という活動を先生に指導していただく場所なのだと気付きました。 

Q.大学院の魅力は?

教員の層が非常に厚く、社会福祉の様々な分野の第一人者に直接教わることができるのは大きな魅力だと思います。また、学術に優れた者を表彰する制度や、奨学金制度、井上円了助成金など、大学院生にとって研究活動の励みになる制度が充実しています。さらに、大学院の先輩や後輩は、同じ社会福祉学でも専門とする分野が違うことがほとんどですが、今なお困った時には頼れる貴重な存在です。 

Q.大学院での学びを通して得たもの

自分が行っていた研究は、一般企業で就労する知的障害のある人の勤労収入と所得保障との関係から地域生活の可能性を考えるという、障害者の福祉の中でも非常に限定された部分を突き詰めて考えていったのですが、このことを通して、わが国に社会保険、社会手当、社会福祉、労働を統合的に捉えた社会保障のグランドデザインが存在しないという、日本の社会福祉全体にかかる問題性を発見できたと思います。また、大学院時代の研究仲間が日本だけでなく世界各国で活躍しており、社会福祉分野においてグローバル視点で問題関心を高めることができるようになったのも大きな収穫でした。

Q.論文の研究テーマ・授業の内容

 一般就労する知的障害者の経済的事実と地域生活−通勤寮の自立支援モデルとその評価−    

Q.指導を受けた教員とのエピソードを教えて下さい。

①修士論文で収集したデータについてさらに分析をすすめるようご助言いただき、丁寧に分析のプロセスをご指導いただきました。学会や研究会での発表の機会があり、機会ごとに適宜ご指導いただけたことで、学会誌投稿ができるレベルまで問題構成を洗練させることができました。研究会や研究室を訪問してのご指導はもちろんのことですが、「ちょっとよろしいですか」「ディスカッションしたい論点が◯個あります」とお電話をいただくこともままありました。指導教授のご指導なしに博士論文を書き上げることはできなかったと思います。 

②F先生に師事する大学院生の層が厚く、研究発表ではF先生からだけでなくゼミ生から厳しくご意見をいただけますので、毎回、緊張感をもって臨んでいました。迷ったり悩んだりする部分についてF先生から大所高所から的確なご指摘をいただけるのが非常にありがたかったです。

Q.大学院での学びが、今どんな形で役立っていますか?

修了後に、国立のぞみの園という独立行政法人に就職し、主に知的障害者の支援に関わる政策研究に携わり、高齢知的障害者の実態把握と支援マニュアルづくり、障害者虐待防止及び養護者の支援に関する実態把握、矯正施設を退所した知的障害者等の実態把握と支援モデルの開発、障害者ショートステイ事業の実態把握と事業促進、知的障害を含む世帯の孤立死等ハイリスク世帯に関する研究など、多岐にわたる研究テーマに取り組みました。このとき、大学院時代に取り組んだ研究や、RAとして福祉社会開発研究センターで先生方と取り組んだ研究での、研究デザインの立て方や因果推論の方法、分析の視点の置き方、分析方法など、研究を進めていくためのすべてのプロセスがそのまま役立ちました。筑波大学に移った現在も、自分の研究として進めてゆくにあたっても、所属するいくつかの研究チームでの研究においても、また大学生や大学院生の論文指導にあたっても、大学院での学びは日々役立っています。

Q.お金のやりくり方法や授業料などの捻出方法や、生活費のやりくり方法など工夫した点や家族や職場のエピソードなどがあれば教えてください。

5ヶ年分(修士課程2年、博士課程3年)の大学院への納入金は親から援助を受けました。生活費や子どもの保育費は夫の世話になる部分もありましたし、交通費、図書購入費、コピー代などの学生生活に必要な費用や、家のローン(自分の持ち分)は、全社協時代の退職金を取り崩したほか、障害者生活支援センターでの給与を充てました。成績優秀者への学費一部免除の制度もあり、その分を貯めておいて、学位がとれるまでの後期課程の2ヶ年分の一部に充てることができましたので、とても助かった記憶があります。後期課程に入ると、福祉社会開発研究センターRA、専門学校の非常勤講師などで収入を得ながら研究や教育の経験を積むこともできました。前期課程が終わり後期課程に進学することが決まったとき、夫からは「2年で終わりじゃなかったの?!」と驚かれたのを今でも鮮明に記憶しています。                                 

Q.現在の1週間、または1日のスケジュールは?

曜日 10-12時:ゼミ(論文指導・輪読)、12-15時:授業(地域福祉論)、15-17時:実習ゼミ、17-18時:研究
曜日 9-12時:研究報告作成、15-18時:法務省で中堅保護観察官向けの講義、19時〜:懇談
曜日 10-14時:研究、学務 15時:子ども(高2)の3者面談
曜日 10-12時:他大にて非常勤講師(ソーシャルワーク演習)16-18時:教員会議
曜日 8-11時:授業(社会保障論)、12-15時:研究、学務、15-18時:授業(相談援助の理論と方法)
曜日 9-14時:家事、子どもの習い事の送迎 17-19時:相談支援に関する研究班の会議
曜日 9-11時:家事、子どもの習い事の送迎 13-16時:矯正施設退所者支援の会議、17時〜:懇親

Q.今後、東洋大学大学院を目指される方たちへのメッセージを

社会福祉学の教員層も、現場実践や問題関心の高い大学院生の層も厚く、大学院時代で培う「つながり」や「関係性」は学費を相当に上回る価値があると思います。また、現場が直面する問題や困り感に寄り添い、道筋を考えられる研究者は十分にいるという状況ではありません。社会福祉分野において伝統のある東洋大学大学院は、「地を這う実践」を知り、そのうえで研究者を養成できる場所です。安定した職業に就いてはいたが自分らしい生き方について悩んでいた私にとって、東洋大学大学院はその後の生き方を決定づける「よい研究」へと導いてくれました。悩んでいる人こそ、積極的に進学の相談をされることをお勧めします。

プロフィール

慶應義塾大学卒業後、全国社会福祉協議会で生活福祉資金貸付制度、高齢者福祉、障害福祉を担当、在職3年目に重症心身障害児施設(長崎県)への出向も経験。8年間働いた後に退職。障害者相談支援事業所で働きながら東洋大学大学院社会学研究科社会福祉学専攻博士前期課程、福祉社会デザイン研究科社会福祉学専攻博士後期課程に進学。後期課程在学中には東洋大学福祉社会開発研究センターRAを経験。修了後に国立重度知的障害者総合施設のぞみの園研究部(高崎市)で障害福祉に関わる研究・人材養成・実践に3年間携わる。その後、筑波大学人間系障害科学域の教員として採用され、現在、障害福祉に関する研究と社会福祉士養成・障害者福祉を中心とした教育を行っている。 
(掲載されている内容は2016年5月現在のものです