【TOYO GLOBAL DIAMONDS】理事長メッセージ

未来を担う皆さんへ

学校法人東洋大学 理事長  安斎 隆
2021年9月1日


  かつてある先輩から「今さえよければ、ここさえよければ、自分さえよければ」を悪魔のささやきとし、人類はそれとはまったく真逆の「長期的視野で、全体最適の視点で、そして利他の心で」を戒めとして生きなければならないと教えられた。

  今、この言葉は我々にとって極めて大きな重みをもって迫ってきている。

  この夏、我々はオリンピックの最中、全国的な酷暑に見舞われた。その上に台風が3つもきた。線状降水帯の下で集中豪雨が頻発し、河川の氾濫、土砂崩れを招いた。

  地球温暖化はこれまでヒマラヤ山脈の氷河や北極海の海氷の変化といった次元で語られてきたが、最近は世界的に「地球が燃え始めた」感が迫ってきている。カナダ北西部で記録した49度を超えた熱波。カリフォルニア、オーストラリア、ギリシャと山林火災も各地で深刻だ。永久凍土が溶け出し、地中のガスや細菌が放出されているという。またロシアで泥炭に覆われた土地に落雷があって燃えているという恐るべきニュースもあった。海水温の上昇は台風発生の頻度を高めている。島嶼国は海面上昇により、いつまで島と国家を維持できるかという不安が募っている。


  人類が直面しているもう一つの問題は新型コロナウイルスである。昨年から感染が世界的に蔓延し、最近は感染スピードが速く、致死率も高いといわれる変異種感染が拡大してきている。我が国ではワクチン接種が遅れ、オリンピック・パラリンピックも無観客で行われ、主催国としての実感を味わうことなく終わってしまった。しかしこれも地球温暖化と同様、我が国一国だけで解決できる問題ではない。世界的に今後の感染拡大を防遏する体制をどのように築いていくのか。WHOをはじめ世界の中・低所得諸国を巻き込んで、ワクチンの製造、価格設定、供給網の整備、援助の仕方等を策定して世界中が連帯して、将来不安を除去するように早急に動き出すべきであろう。世界経済は企業の需要と供給というネットワークで互いになくてはならない存在として繋がっている。ワクチンが世界中に行き渡らない限り、世界経済には絶えず下押し圧力がかかり続けよう。今年で終わる保証はない。連帯して事に当たらなければならない所以である。

  気候変動の危機に対してはようやく世界が動き始めた。トランプ大統領の時代にパリ協定から離脱した米国がバイデン大統領によって同協定に復帰し、欧州、中国、日本とともに炭素排出量の削減に取り組むことを約束した。

  世界の期待は高まっている。まずは炭素排出量の多い日米等の先進諸国と中国は脱炭素の成果を、目に見える形で出していくことが求められている。そうしない限り経済水準が低い国々がついてくるとは思われない。それだけに目標未達は世界の政治や経済からの孤立、最悪の場合は経済取引からの排除といった事態も予想される。政府は方向性を明確に打ち出し、経済界は具体的に動き出し、国民一人一人が協力していかなければならない。このようにして世界の国々が協調、連帯して事に当たらなければ、人類のみならず地球上の生きとし生けるすべての動物と植物に未来はないということになる。その原動力となり、世界政治を動かす主役となるのは未来を担う若い世代である。


  人類は地球の王者ではないし、いかなる国民も王者になることはできない。人類はじめ地球上の生き物はすべてが地球というノアの方舟に乗っているのだ。沈没しかけているタイタニック号から、われ先に脱出しようとする「今さえ、ここさえ、自分さえよければ」とする生き方では地球の未来はないし、人類の未来もない。化石燃料の活用により経済を発展させてきた「産業革命」は200年余で終りを告げようとしている。これからは脱炭素により「地球と人類の生き残りを懸けた革命」へと変わっていくのだ。