About Toyo University 理事長あいさつ

戦争は地球上で人間が仕出かす最悪の所業である。2022年2月24日に始まったロシアによるウクライナ侵略は、いかなる理由を並べようと決して許されるものではない。戦争は人間を殺戮し恐怖を与えて希望を抹殺し、そして地球上の自然を破壊し動物、植物の命まで奪っている。

2年前に始まった世界的な新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、グローバリゼーションの流れは足踏みを余儀なくされた。そこに加わった今回の戦争が終結の展望もなく長期化した場合には、世界経済に大きなダメージを与えていくことが懸念される。大学経営もその埒外というわけにはいかず、我々は想定外の事態に直面した時にも機動的に対応できる柔軟性を確保しなければならない。これは強風にも枝をしならせて決して折れない、洪水の時には根っこを決して川底から離さない柳のごとき存在になるということである。

これまでも目指してきたように、未来の世代のために明るい未来を拓く努力を我々は続けなければならない。とりわけ地球温暖化対応の機運は世界的に高まっており、近年主要国は相次いで脱炭素に向けた計画を打ち出してきた。ロシアが仕掛けた戦争により、各国のエネルギー政策は生活水準の維持との関連で厳しい選択に直面しているが、それでも地球と人類の明るい未来を実現するために避けては進めない道であろう。

2015年9月に国連総会で採択された「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」、いわゆるSDGsは17の目標と169のターゲットを掲げて、明るい未来の一つの雛形を示している。SDGsはその中で、「誰一人取り残さない( No one will be left behind )」をコンセプトに挙げている。言葉で書くことは容易であるが、実現は極めて難しい。しかし、諦めてしまえば実現の可能性はゼロである。

日本国内に目を転ずれば、21世紀末には人口が5000万人を割るとも言われているわが国の役割を将来にもわたって維持しようすれば、イノベーションは欠かせない。科学技術政策として内閣府が提唱するSociety5.0も明るい未来の一つの形となりうるが、Society5.0の実現も、「社会の変革(イノベーション)を通じて、これまでの閉塞感を打破し、希望の持てる社会、世代を超えて互いに尊重し合あえる社会、一人一人が快適で活躍できる社会」の実現を目指している。

また人口の減少は、日本の労働力人口の減少でもある。であれば、対策として日本社会のグローバル化やダイバーシティ&インクルージョンの実現は不可欠である。社会が変われば常識も変わる。これまでタブー視されてきたことも含めてあらゆる可能性を模索することがイノベーションを惹起し、明るい未来を呼び起こすのではないだろうか。

明るい未来を模索するとき、教育機関を設置する学校法人の役割は何であろうか。パブリックではなくプライベートとしての学校法人は何をすべきなのか。そして学校法人東洋大学は、東洋大学をはじめとした設置学校を通じて、いかなる役割を果たすべきなのだろうか。

改正私立学校法により、学校法人は中期計画を作成することが求められるようになったことも踏まえ、明るい未来を拓くために、2020年3月に中期計画「TOYO GRAND DESIGN 2020-2024」を策定した。今回、過去2年間の進捗状況や周囲の環境変化を踏まえローリングを行い、目標実現への決意を新たにした。

2022年4月

学校法人東洋大学 理事長 安齋 隆

学校法人東洋大学 理事長
安齋 隆
Takashi Anzai