Ⅰ. 研究に関する中期計画

今期の中期計画においては、研究の高度化が教育の高度化を牽引し、研究活動と教育活動の高度化が地域貢献・地域連携活動の高度化を推進することで、「地球社会の明るい未来を拓く(他者のために自己を磨く)」ことを目指している。とりわけ起点となる研究活動においては主体的に社会の課題に取り組むことで、新しい価値を創造し明るい未来を描くことを期待している。

しかしながら複雑化した現代社会の課題に取り組むためには、一つの分野の研究では足りず、多分野の研究者がチームとなって課題に対峙することが必須である。現在、東洋大学では重点研究プログラム制度を設け、多分野の研究者で組織された申請研究の中から、大学として取り組むべき方向性に合致したプログラムを採択して重点的に予算を配分し、その成果をもって社会に貢献することを目指している。研究に関する今期の中期計画は、この重点研究プログラムを中心に、組織的に取り組むものを以下のように推進していく。

研究に関する中期計画

 

01.共存共栄の世界を創るための価値創造

SDGsの達成に貢献する研究

  • 「開発途上国における生活環境改善による人間の安全保障の実現に関する研究-TOYO SDGs Global 2020-2030-2037-」

この重点研究推進プログラムでは、多分野の専門家の知見を活かし、アジア、アフリカ、中南米、太平洋の途上国の生活環境の改善に取り組む実践を通じて、インフラ建設、経済、社会、マネジメントなど、SDGsの多くの目標の達成に貢献することを目的としている。本研究は2022年度から新たな重点研究プログラム「レジリエントな社会に向けたSDGsの包摂的実現に関する研究」に継承される。

  • 「極限環境微生物の先端科学をSDGs達成のために社会実装する研究」

この重点研究推進プログラムでは、高温、高 pH、高塩濃度、放射線、有機溶媒といった過酷な極限環境でも生育可能(利用可能)な極限環境微生物(Extremophiles)を新たな生物資源として研究の対象とし、SDGs達成のための課題解決策の切り札として社会実装し利用することを目的としている。

  • 「安全な水を未来へ ~有用細菌による排水処理技術の開発と普及に向けて~」

この重点研究推進プログラムでは、新しい生化学反応を有するアナモックス菌を利用することで、排水処理に関わるエネルギーを半減できるプロセスを開発し、早期実用化のためのアナモックス細菌の大量培養、大型デモプラントの製作について研究する。さらに温室効果ガスやエネルギー削減量をCO2削減量に換算するLCA評価により優位性を総合的に評価する。最終的には本システムの途上国へ展開を視野に入れる。

グローバルな社会課題に取り組む研究

  • 「持続可能なインフラの提案によりグローバルな協調の再構築に貢献する研究」

この重点研究推進プログラムでは、深刻化する世界の社会経済インフラの不足や老朽化対策として、「経済性・社会性評価アプリケーション」制作を行い、各国政府に持続可能なインフラメニューと実現戦略の提案を行うことを目的としている。

  • 「産業のイノベーション力の創造的開発とそれを強化する社会システムの革新研究」

2016年1月に開設したグローバル・イノベーション学研究センターの目的は、国際社会の多様なシステムのイノベーション理論と方法の研究、その活動を担う人材育成方法の研究であり、未来世代のために真に公正で豊かな、活力に満ちた国際社会の動向を先導する役割を担うことを目指すものである。今中期計画では、諸外国との知的交流の機会提供を目的としたシステム構築に注力する。

アジアの発展に資する研究

  • 「インドネシア国におけるJICA政策提言研究」

東洋大学とJICA(国際協力機構)との間の政策提言研究に関する契約に基づき、インドネシア国の地方自治体におけるPPP (公民連携)案件の推進に必要なボトルネックの抽出・改善と関係者の能力強化を通じて、同国の地方自治体におけるPPP 推進のために必要な諸点について政策提言を行う。

02.すべてのいのちを守るための価値創造

幸福という概念における「個」と「全」の関係性にみる価値研究

  • 「つながりがある社会を支える価値と支援システムに関する研究」

この重点研究推進プログラムでは、加齢や障害のために身体的・知的機能に制約がありながら、社会的な支援につながらない人たちの実態や要因等を解明し、ICT 等を用いた持続可能な包括支援システムの構築を行うことを目的としている。本研究は 2022年度から新たな重点研究プログラム「福祉社会における新たな価値の創発と支援システムの構築」に継承される。

医療・健康福祉や食環境、生命科学分野等の先進国をリードする研究

  • 「多階層的研究によるアスリートサポートから高齢者ヘルスサポート技術への展開~社会実装に向けての研究組織連携の構築~」

この重点研究推進プログラムでは、多階層的に生体のストレス反応、メンタル不調を可視化し、IoTによるアスリートサポート技術、さらには高齢者の健康サポート技術を確立するとともに、その研究成果を産官学連携により、スピーディーに社会実装化を行うことを目的としている。

  • 「東洋大学のブランド力向上のための分野横断型アスリートサポート研究」

この重点研究推進プログラムでは、本学のこれまでのアスリートサポート/ヘルスサポートの知的資源を活かし、アスリートのパフォーマンスが最大限に発揮できるような運動能力の向上やコンディショニング維持に関する研究、アスリートのキャリア形成、法的問題及びそれらの心理的影響に関する研究など、未解決・未着手の課題を分野横断的に取り組み発展させることで、東洋大学のブランド力を更に強化し、その成果を国内外に強く発信することを目的としている。

  • 「生育のdiversityを生むメカニズムの解明とwell-beingな社会の実現に向けた支援体制の構築」

この重点研究推進プログラムでは、生育多様性に関する生命科学研究で得られた知見を文理融合によって社会還元することを目指す。格差問題の背景にある性差、発達障害、ストレス性障害、精神疾患、老化などの生物学的基盤を明らかにするとともに、社会還元のための学際的な取り組みとして文理融合のチームを編成し、生命科学研究と児童福祉施設、特別支援学校等の現場をつなぐ活動を展開し、誰もがwell-beingな生活を送れる社会の実現を目的としている。

多様性ある社会システムの実現に向けた研究

  • 「ダイバーシティ・インクルージョンの推進による活力のある、多様性に富んだ、差別のない社会の実現への貢献」

性別、年齢、障がい、国籍などの外面の属性や、ライフスタイル、職歴、価値観などの内面の属性にかかわらず、それぞれの個を尊重し、認め合い、良いところを活かすことができるように、ダイバーシティ・インクルージョンをいかに推進するか、プロジェクトを立ち上げ研究を進める。また、学校法人東洋大学及びその設置学校において多様性に富み、活力や変化への対応力のある、強くしなやかな職場を実現するため、「ダイバーシティ・インクルージョン宣言」を策定し、社会に向けて発信する。

  • 「多様性と調和に価値を置く多文化共生とダイバーシティマネジメントに関する研究」

2021年4月に開設予定の社会学部国際社会学科では、多様性と調和に価値を置く多文化共生とダイバーシティマネジメントに関する研究を推進し、もって多様性ある社会システムの実現と、研究成果をもって学部教育では多様な価値を理解し、多文化共生社会の確立を目指すglobal citizenを育成する。

03.人と情報を高度に融合させた価値創造

AI・IoT等の情報通信技術を国民生活分野に資する独自研究

  • 「都市のIoT化のためのプラットフォーム構築の検討プロジェクトへの参画、推進」

情報連携学学術実業連携機構(INIAD cHUB)は、情報連携学部(INIAD)とINIAD外(企業・団体・組織)との「オープンな連携」のための結節点として2017年4月に設立された。EUとの都市のIoT化のためのプラットフォーム構築プロジェクトCPaaS.ioなどを経て、今中期計画においては、東京都や北区、UR都市機構と連携し、都市のIoT化のためのプラットフォーム構築の検討プロジェクト推進を始めとして、「オープン・イノベーション」を加速することを目指している。

異分野融合の研究推進

  • 「『文・芸・理の融合』の新学問領域の創造」

高いレベルで「文・芸・理」の知恵を融合したIoT時代のサービス構築は一人で全てを行うことはできない。必要なのは、自分の得意分野を確立した上で、他の分野の人とも高度な連携をしプロジェクトを達成できる能力である。2017年度に開設した情報連携学部(INIAD)は、その「文・芸・理」の連携のあり方を研究する「情報連携学」を創造し、その実践教育を行う。

  • 「日常生活を豊かにするためのデジタルトランスフォーメーション(DX)に係る研究」

この重点研究推進プログラムでは、機械学習の最新技術を活用し,一般生活者目線で見たDX(Digital Transformation)本来の視点に基づいて応用を推進することで,新たな技術基盤をつくる。自然言語,音楽・音声,画像,動画の大規模データの機械学習により、問題解決手法を人間の生活に直結させ、生活の質の向上へ応用する。

04.哲学を基礎とした価値創造

哲学と科学の融合から導かれる価値創造

  • 「22世紀の世界哲学の構築に向けて」

この重点研究推進プログラムでは、東洋大学の建学の理念である「諸学の基礎は哲学にあり」を22 世紀まで社会に発信し続けるために、閉鎖的な哲学研究のあり方を脱却し、主体的に社会の課題に取り組む哲学を理論と実践の双方から提示することを目的としている。

井上円了理念の継承

  • 「井上円了研究の世界的研究拠点ネットワーク組織化」

2021年4月に井上円了哲学センターを設立することにより、創立者井上円了博士の建学の精神、教育理念、思想及び事績の研究を推進し、それらの普及を図ることにより、哲学館以来の東洋大学の特性を内外に示し、その歴史と伝統を継承し発展させて、世界及び日本の文化の向上に貢献することを目的として、今中期計画において井上円了研究の世界的研究拠点ネットワーク組織化を推進する。さらにオンラインやオンデマンドによる公開講座や出張講座の拡充等、リカレント教育における手法を革新することにより、その世界展開を目指す。

05.知的財産の創出(ベンチャー)

知的財産の実用化

  • 「熱中症の予防、軽減のための機能性食品の開発,微生物を利用した廃水処理技術の開発」

現在、生体医工学研究センターで進められている熱中症対策(予防)飲料や食品の開発成果は、食品・飲料・製薬企業との共同研究で実用化する。すでに暑熱ストレスに対して保護作用のある食品成分を発見(特許登録)しており、実用化が期待されるものである。

  • 「バイオミメティクス(生体模倣)を取り入れた国産カヌーの開発」

本プロジェクトでは、人間工学・運動生理学・流体力学・バイオミメティクスによる大学の知および産業界が有する技術を融合させた産学連携による国産初の競技用カヌーの開発を行っている。船艇流体力学およびバイオミメティクスの応用により生物の機能を最大限に生かし水の流れを掴む設計を行い、オリンピックなど国際試合での活躍が期待される。

  • 「バイオミメティクスによるウイルス感染症簡易検出システムの開発」

生体と人工物は接触する以上、必ず境界面(バイオ界面)が存在する。生体医工学研究センターで進めているバイオ界面とバイオミメティックスに関する研究の成果は、バイオセンシングに資するものであり、将来的には迅速・簡便・低コストにウイルスを検出できる次世代型ウエアラブルデバイスの開発が期待されるものである。

大学発ベンチャーの推進

  • 「大学発ベンチャーの起業、ファンドの設立」

各種の研究成果を活用した大学発ベンチャーの起業、ファンドの設立を今中期計画の期間に5件実施する。

  • 「ベンチャー起業の支援」

本学学生や卒業生の若い起業家を支援し、今中期計画中に資金支援型、コンサルテーション型、関連企業・人材紹介型の3 つのタイプでベンチャー企業を支援する体制を整備する。

産官学連携推進

  • 「産官学連携の活性化」

産官学連携推進センターを中心に共同研究、受託研究、技術移転・ライセンス、成果有体物の提供、奨学寄付等の形態で産官学連携を推進し、特に受託研究・共同研究の件数と研究費収入の向上を目指す。具体的には今中期計画において、受託研究・共同研究において、国内大学上位30位以内に入ることを目指す。

06.制度・体制の整備

研究支援制度・体制の整備

  • 「論文投稿支援制度」

研究の国際化を促進し、本学の国際的なプレゼンスの向上に寄与することを目的に、国際学術誌へ投稿を行う際に必要となる経費の助成を拡充する。また、今中期計画において、論文投稿の基本的な技術、アクセプト率の向上、リジェクトの修正等の講習体制を整備する。

  • 「研究専念制度の実施(インセンティブ)」

研究業績の高い研究者には、授業や学部・研究科の委員会業務等の校務の負担を軽減する等の配慮を行い、今中期計画において、研究により専念できるような制度の設計を行う。

  • 「論文発表数、外部研究費獲得額等の研究成果に基づく研究予算の重点配分の実施(インセンティブ)」

論文の発表数や被引用数が多い、また、外部研究費の獲得額が多い等の研究業績が特に高い教員に対しては特別に配慮し、今中期計画において大学の研究予算をより重点的に配分できる制度の設計を行う。

  • 「国際学術誌への論文投稿数の増加及びFWCI値の向上策の検討とそれに基づく助成制度の実施」

国際学術誌への投稿数の増加、論文の被引用数を基にした影響力を表すFWCI値の向上のために、今中期計画において、教員に対してのインセンティブ、講習、助成制度について制度の設計を行う。

外部資金の獲得支援

  • 「URAによる研究計画調書のライティング支援」

外部資金獲得のための研究計画調書等の作成時に、URA によるコンサルティングやライティングサポートを行う体制を今中期計画において整備し、外部資金の獲得を支援する。

  • 「URAによる研究シーズの探索と外部研究費とのマッチングの実施」

外部資金獲得のための教員の研究シーズの探索と外部研究費のマッチングをURA(ユニバーシティ・リサーチ・アドミニストレーター)によって行う体制を、今中期計画において整備し、外部資金の獲得を支援する。

優秀な研究者の獲得支援

  • 「研究人材モビリティ増大(クロスアポイント制度等)」

クロスアポイント制度等も含め、国内外の研究人材の交流を増加させる体制を、今中期計画において整備し、研究のイノベーションやグローバル化を支援する。

  • 「採用の柔軟化により研究の実績に基づく研究人材の獲得(研究専念人材)」

現行の制度では専任教員は学部・研究科の教育を担当する責務がある。今中期計画において、卓越した研究業績を上げている者を研究に専念する人材として採用を可能にする等、採用の形態を柔軟化する制度の設計を行う。

  • 「戦略的な海外研究派遣と研究ネットワークの形成」

国際共同研究プロジェクトを推進するために、研究業績を考慮し、海外特別研究(サバティカル)を行う研究者、派遣先等を戦略的に決定する体制を、今中期計画において整備し、研究のグローバル化を支援する。

図書資料の充実

  • 「貴重資料の組織的な収集」

東洋大学図書館に所蔵する貴重書は、東洋大学の研究・教育活動を支え、学術機関として社会において果たすべき東洋大学の役割の一端を担っている。この貴重書をさらに充実させるために、貴重書の収集方法を改善し新たな方法を導入したが、今中期計画においてその効果を検証し、より本学に適した貴重書の収集に努める。

Ⅱ. 教育に関する中期計画

各学部・研究科ではディプロマポリー(DP)、カリキュラムポリシー(CP)、アドミッションポリシー(AP)の3つのポリシーに基づき、教育・研究に関して別途、それぞれで中期計画を策定している。13学部50 学科・専攻、15研究科37専攻で3万人を超える学生を有する東洋大学において研究の高度化が教育の高度化を推進することは言うまでもなく、この点において、研究と教育をつなぐ基軸として、大学院の充実が強く求められる。

一方、「諸学の基礎は哲学にあり」等の建学の精神のもと、哲学を礎として始まった東洋大学には、学部を超えて展開すべき教育があり、時代とともにその形を模索し、拡充してきた。創立125周年に発した「未来宣言」(2012年)では、「哲学教育」「国際化」「キャリア教育」の3つの柱によるグローバル化教育を唱え、TOYO GLOBAL DIAMONDS 構想(2014年)では、社会の中核を担う「東洋グローバルリーダー」を育成する人材像に掲げ、さらに「東洋大学スタンダード」(2016年)では、学部の枠組みを超えた基盤教育体系を構築し、グローバル化教育のより一層の深化を目指した。その精神は、2021年度の全学カリキュラム方針にも受け継がれ、専門教育と並び教育活動の根幹を担う指針として位置づけられている。また、このことは東洋大学にとどまらず、附属高等学校・中学校、幼稚園にも共通するものであり、本法人の設置校全体の目標となっている。

今中期計画では、東洋大学を頂点とした総合学園として、変化の激しい時代の中で、変化に動じない自分の哲学を持ち、明るい未来を担える人材を育てるために、教育に関して以下の計画を進めていく。

教育に関する中期計画

 

01.深い哲学教育

基盤教育(考える力の養成)の充実

アクティブラーニングの充実

総合大学に相応しい学部間連携授業の創出

初年次教育の充実

  • 「2021 カリキュラム編成全学方針等に基づく考える力の育成」

2021年度のカリキュラム編成の全学方針において、基盤教育の哲学・思想の区分について「諸学の基礎は哲学にあり」の精神に基づき、生涯にわたって本質に迫って深く考え抜く力の養成を各学部に求めている。また、学力の3要素である「知識と技能」、「思考力・判断力・表現力」、「学ぶ力や人間性」の伸長を図りながら、課題に取り組む力を涵養する「課題解決型教育」も重視している。これらの編成方針に基づき、東洋大学らしい深く考える力を育てる教育を推進する。

SDGsに繋がる教育の展開

  • 「学生へのSDGsの啓蒙活動」

学生一人一人がSDGsで掲げられている課題を自らの問題として捉え、実際に身近なテーマに取り組む(think globally、act locally 地球規模で考え、足元から行動する)ことが出来るよう、SDGs理解促進のためのワークショップの開催、学生によるSDGsの課題解決活動の支援を行う。また、学生の活動成果が広く共有されるように外部への積極的な発信を行う。

02.高度なグローバル教育(TOYO GLOBAL DIAMONDS 構想(TGD構想)の推進)

基盤教育の充実と各種講座による語学力の向上と世界的視点の涵養

留学の推進(アウトバウンド・インバウンド)

海外の大学との協定推進

教職員の国際化

  • 「TGD構想の推進」

平成26年度(2014年度)に文部科学省のスーパーグローバル大学創成支援事業に採択されて以降、東洋大学をはじめとした本法人の設置校ではTGD構想によるグローバル化教育を推進しており、今中期計画においても同構想で定める留学推進や海外大学との協定推進等の目標を確実に達成していく。また、2023年度に採択期間が終了することを踏まえ、それに続く自走可能な”NEXT SGU”計画を2023年度中にまとめ公表し、2024年度からリスタートする。

入学試験の国際化

  • 「グローバル人材の資質を有する学生獲得」

グローバル人材養成という教育目標にかなう入学生をより確実に獲得するための入学試験を、今中期計画において拡充する。具体的には一般入試にとどまらず、大学入学共通テスト利用入試、推薦入試等においても、英語外部試験を積極的に活用する。

03.広いキャリア教育

基盤教育(社会人基礎力の養成)の充実

  • 「情報教育を含む教養教育の充実」

2021年度のカリキュラム編成の全学方針において、基盤教育のキャリア・市民形成の区分について「独立自活」の精神に基づき、社会的に自立した人間として主体的に判断し行動できる力の養成を各学部に求めており、その指針として全学カリキュラム委員会が作成した「キャリア教育ガイドライン」を示している。また、今後ますます重要となっていく情報教育については、情報連携学部(INIAD)や総合情報学部が牽引し、大学全体で強化していく。

  • 「Society5.0に向けた就業意識の醸成」

学生が就職と起業のどちらを選択するとしても、独創的なアイデアやシーズをビジネスに繋ぐオープンイノベーション志向のマインドセットが必要である。そのため今中期計画において、多様な人材と交流し、多様な価値観を身につけ、多様な働き方を考えられるようになるための、Society5.0を見据えた就業意識の醸成に取り組んでいく。

産学連携教育の充実

  • 「産学連携教育の充実(企業人参画プロジェクト、グローバル企業等との産学連携等)」

学問分野に応じた産学連携教育や、企業のトップ・各界のリーダー等を招聘するトップリーダー連携教育支援プログラムを全学的に実施する。多彩な教育ツールを積極的に活用することでカリキュラムを充実し、様々な外部人材とのコネクション構築によって発展的な連携に繋げていく。

教職課程の充実

  • 「学び続ける教員の養成・研修プログラムの充実」

教育職員免許法施行規則の一部改正及び教職課程認定基準の改定により再課程認定を受けた教職課程について、2023 年度の改訂に向け、カリキュラム全般の見直しと、教育理念に基づく本学の特色ある科目などの配置による充実を図る。また、本学で教員免許状更新講習を実施し、多数の卒業生を含む現職教員の資質能力の維持及び向上のための支援も充実させる。

  • 「教職センターの組織的整備と機能の充実」

教職課程・現職研修の中心を担う教職センターを有機的に機能させるため、組織的な体制の強化を行う。卒業生組織や近隣地域の学校及び教育委員会等との連携強化、教職アドバイザーの拡充、研修等による教職支援担当職員の高度化等により、教職を志望する学生及び継続的な研修を要する現職教員の支援体制を全キャンパスにわたって充実させる。

実践的なキャリア教育

  • 「インターンシップの充実」

実践的なキャリア教育の充実のため、学部独自のインターンシップから全学的なインターンシップまで幅広い機会を提供し、訪問先や参加機会の充実を図る。低学年を対象としたインターンシップも設け、インターンシップで発見した課題を大学の授業で補う往還型の学びを浸透させることによって、課題解決力や行動力を養ったグローバル人材の育成に寄与する。

  • 「一貫教育による社会に貢献できる起業家の育成」

近年、世界におけるステータスが降下傾向にある日本が、再び活気を取り戻すためには、アントレプレナーシップを持った若い人材の成長が待たれる。社会に貢献できる起業家を育てるためには、若い年代からの涵養が必要であるが、本法人が設置する中学校・高等学校・大学それぞれの教育を通じて、自ら社会の課題を見いだし、その解決の方策を考え抜き、周囲と協働してそれを実現していくことで社会貢献に資するための力を養う授業を展開し、長いスパンで育成に努めていく。

多様な就職支援

  • 「企業との連携(鉄紺企業の選定)」

従前からの著名企業への就職支援だけでなく、学生が認知しにくい優良企業への就職を支援する。今中期計画においては優良な地方企業や、スマートワークを実現している首都圏のBtoB企業などを基準により100社程度「鉄紺企業」として選定し、学生の就職支援とすると共に、企業とのネットワークを確立する。

  • 「アスリートのデュアルキャリア支援」

強化・準強化運動部だけでも約900名(全学年)を数える本学運動部学生の多くはスポーツ以外の経験に乏しいため、卒業後のキャリア選択が大きな課題である。今中期計画において、課題解決のためアスリート学生や保護者、指導者にデュアルキャリアの重要性を正しく理解させ、アスリートのデュアルキャリア支援の先進大学を目指す。

社会人リカレント教育の充実

  • 「Open IoT 教育プログラム」

高度なIoT技術を身に付けたい社会人を対象に、IoT関連分野のクラウドコンピューティング、人工知能等の体系的な知識とスキルを短期間で身につけることのできる「学び直し」のためのコースである「Open IoT 教育プログラム」により、産業界のニーズを踏まえた実践的なカリキュラムを提供する。

04.高度な大学院教育

優秀な大学院生の獲得

  • 「異分野学部出身者等、優秀な人材の獲得」

大学院研究科とは異なる分野の学部出身者の入学を認める学内推薦入学制度等、柔軟な入試制度による優秀な大学院生の獲得を推進する。例えば理工学部出身学生が国際学研究科に入り、学部時代に学んだ建築の専門知識を生かしてJICA協力隊として発展途上国で活動し、研究を進めるといった例などである。

  • 「スカウティングの推進」

大学院の指導教員が、海外における研究活動等を通じて形成した人的ネットワークを活用し、博士後期課程を中心に、海外活動のカウンターパートや研修生などに積極的に声をかけ、研究科に優秀な人材を獲得するためのスカウティングを積極的に推進する。

高度で実践的な大学院教育の充実

  • 「連携教育の実践」

理系の研究科を中心に、大学院の指導教員が外部研究機関と連携して幅広い分野での研究指導が行えるような環境を整備したり、実業系の研究科を中心に、文部科学大臣により職業実践力育成プログラム(BP)と認定された社会人や企業等のニーズに応じた実践的・専門的なプログラムを展開したりして、実践的連携教育を実践していく。

  • 「ダブルディグリーの活用」

学際融合研究科の例に続き、各研究科が英語トラックを質、量ともに充実させ、海外の大学とダブルディグリー協定を結んだ上で、留学生の増加を図る。また、各研究科がダブルディグリー制度を活用し、アジア、アフリカ、ラテンアメリカ、大洋州等を指向する大学院生を積極的に海外に送り出し、国際人の養成を推進する。

キャリアパスの形成

  • 「専門的職能研究機能-技術研究者養成コースの開設」

経営学研究科ビジネス・会計ファイナンス専攻の「中小企業診断士コース」や、同専攻や法学研究科法律専攻における「税理士コース」などを中心に、専門的職能研究機能-技術研究者養成を一層推進する。

  • 「博士後期課程の指導体制の強化(英語論文ブラッシュアップ、国際論文投稿支援、国際共同研究)による専門研究者養成及び大学教員養成の推進」

英語による教育科目の増加とともに英語論文の作成・投稿に関する教育支援を強化し、大学院生による国際論文投稿を支援する。また、カリキュラムの国際通用性を高めた上で、他国との部局間協定を拡大し、院生の海外留学や海外協定校との連携教育を推進する。これらにより専門研究者養成及び大学教員養成を推進する。

  • 「研究室と企業等との継続した連携関係の強化や、長期インターンシップの推奨による優良就職先の確保」

大学院修了生の就職先を学部卒のそれと差別化し、学生本人や保護者に対して大学院進学のメリットを説明できるようにする。具体的には国内外の研究教育機関や産業界との協力関係に基づくインターンシップや共同研究、国際キャリアの育成や国際社会貢献のための国際インターンシップを実施するなど、総合的で継続的な就職支援を行い、FD 活動により他の研究科に横展開する。

  • 「大学院教育・研究の活性化を目指した自校出身教員の採用拡充」

大学の研究力が向上するためには、大学院生の活躍が必要不可欠である。一方で、自校での研究職の受け皿が十分にないことから大学院生が十分に確保できず、活発な大学院研究活動を継続する体制が確立していない。そのため、修了後は他の大学や研究機関でキャリアを積まざるを得ない。自校出身教員の採用を拡充することで、学内でのキャリアの形成を可能とし、もって優秀な大学院生の獲得や教育研究の充実に繋げていく。

  • 「研究協力機関への就職促進」

今中期計画において、研究協力協定締結先や海外共同研究相手である高度研究機関や海外研究機関、グローバル企業等との関係を発展させ、指定研究室の位置づけにより、それらの研究機関への大学院生の就職を促進する。

05.多様な課外教育

多様な課外活動の支援

  • 「『創る・つながる・挑戦する』学生の支援」

学生が主体的、積極的に自己を磨き、活動を通して成長できるよう、学生の自主性・主体性を引き出し、彼らがゼロから何かを創出し、他者とともに挑戦する学びの機会を提供する。具体的には今中期計画において学生発案(提案)型プロジェクトの企画・立案から実現までを支援し、「SDGsへの貢献」及び「TOYO SPORTS VISION の実現」をテーマとする。

アスリート活動の支援

  • 「TOYOスポーツセンター設置と全学体制の学生アスリート支援」

2019年3月、一般社団法人大学スポーツ協会(UNIVAS)が設置され、本学はこれに加盟した。これを機に、あらゆる面での学生アスリートサポートを充実させるため、包括的な機能を担う「TOYOスポーツセンター」を設置する。トップアスリートサポートセクション(専門スタッフによるメディカル・フィジカルサポート)、スポーツ連携セクション(運動部による社会貢献・地域連携の活動推進)、マネジメントセクション(学修支援、学生生活支援、就職・キャリア支援、指導者支援、法務支援、広報等)の3セクションを柱に、東洋大学のアスリート/運動部に対する支援を全学体制で推進する。

修学支援の充実

  • 「高等教育の修学支援新制度を中心とした修学支援の充実」

2020年4月から国による高等教育の修学支援新制度が実施されることに伴い、本学奨学金を新制度を補完するものとして制度設計をする。具体的には、今中期計画において東洋大学第2 種奨学金を新制度の不採用者の支援に適したものと位置づけ、また、同第3種奨学金(家計急変者奨学金)は、短期的な経済支援要請に迅速に応えられるものと改める。

ウェルネスの充実

  • 「学生一人ひとりのウェルネスの実現」

本学ウェルネスセンターは、学生一人ひとりのウェルネス(Wellness)の実現を支援することを目的とし、2018年10月開設されたが、今中期計画において従来の学生支援の機能を統合し、「心身の健康面のサポート」、「修学環境の調整支援」、「障がい学生支援」、「ピアサポート活動」を柱として、全学体制の整備を進める。

06.幼中高大一貫教育

キャリアフロンティア・国際教育の推進(附属姫路中学校・高等学校)

  • 「キャリアフロンティアの推進」

アクティブ・ラーニングメソッドを取り入れたプログラムにより、文章を書くことで「物事の本質を深く考える力」を、発表や討論を重ねることで「コミュニケーション力」を、探究活動により「課題発見力」「課題解決力」を育てる。さらに、時代に対応した多様な設定で、豊かな人間力を備えた人材の育成を推進する。

  • 「国際交流の活性化」

これからの社会に求められる、生きた英語力、多文化理解、日本人としてのアイデンティティを育成するために、学校内外における国際交流機会の活性化を図る。実践機会の拡大のために、ALTの配置、英語検定試験対策等のサポート、国内外における語学研修等の充実を図り、自信と実践力を育てる教育を進める。

グローバル教育・ICT教育の推進(附属牛久中学校・高等学校)

  • 「グローバル人材の育成」

複数回の海外語学研修や交換留学の実施により、国際人としての素養を育てる。特に、日常生活の中での多様な文化を学ぶ国際経験を目的とする交換留学の受け入れについては、ホームステイを含めた交流機会の充実を図る。また、中国語学習者を増やすことで、特色あるグローバル人材育成を発展させていく。

  • 「ICT による教育の情報化」

一人一台のPCを所持し、学校生活の管理や計画を生徒自らが考える自立型教育を実践していく。日常的な授業の他、部活動の記録や資格への取組み、自宅学習など、生徒自身でポートフォリオの充実を目指す積極姿勢を育成していく。教員は生徒一人ひとりと繋がり、教員間で情報共有することで活用を的確にサポートする。

哲学教育・理科教育の推進(京北中学校・高等学校)

  • 「哲学教育の推進」

哲学教育として、名著精読、生き方講演会、哲学ゼミ、哲学エッセーコンテスト、刑事裁判傍聴学習会、哲学の日の6テーマで、より良い生き方を探究する「生き方教育」を実践している。今後も多様な機会を提供し、自らの人生観や価値観を陶冶する力、物事を俯瞰して見る思考力を育て、自主性を持つ人材の育成に推進する。

  • 「理科教育の推進」

中高大連携による理系志向生徒の育成を推進する。「未来の科学者育成プロジェクト」では、生徒の自主性を尊重した実験体験により、思考から実験への過程、成功や失敗の結果も受け止める経験を通じ、理科分野への興味関心を育てている。今後も、多様な機会の設定により、理系志向生徒数の拡大を目指す。

京北幼稚園将来構想の検討(京北幼稚園)

  • 「京北幼稚園将来構想の検討」

出生者数の減少、文京区への人口流入の鈍化、近年の同区内私立認可保育園の急増等、取り巻く社会情勢が厳しさを増すなか、学校法人と幼稚園とが一体となった改革の体制を整備し、創立百十余年の歴史を有する京北幼稚園を、社会や地域の要望にさらに応えられる存在として発展的に存続させる。

「生きる力」教育の推進(京北幼稚園)

  • 「未来につながる基本的な『人間力』を養う園づくり」

予測困難な時代にあっても、自ら課題を見つけ、自ら学び、行動し、明るい未来を創造していく「生きる力」を、子どもたちの集団生活の第一歩となる幼稚園で、仲間との共生、遊びを通して育てる。すべての行事の目的を明確にし、周囲との関りの中で、自立心、共同性、道徳性、社会性、豊かな感性と表現力等を育成する。

07.制度・体制の整備

学生の教育情報の統合とAI解析の活用

  • 「"3万人のLearning Journey"の羅針盤となるCLMSの構築」

2021年度より教育DX推進本部を設置し、全学部生を中心とした教育・学修データを統合する、データ統合基盤を構築したうえで、入学から卒業・卒業後までの学び=「知」の旅(Learning Journey)の羅針盤として高度なデータ活用を実現する。またオンキャンパスとオフキャンパスでの学習スタイルを高度化し、学生一人一人の学びのスタイルを支援できるように体制を整える。

全学的内部質保証推進体制の整備

  • 「自己点検・評価体制の確立とその検証の推進体制の構築」

各学部・研究科の自律的な自己点検・評価体制を確立する。DP、CP、AP の3つのポリシーの達成を念頭に、各学部・研究科が策定した中期計画等に対し、学部・研究科内の自己点検組織による点検を行い、さらに大学評価統括本部による「点検の質」の確認を行う。その結果を踏まえ、学部・研究科の自律的な改善に加え、全学としての質保証の在り方を検証し、質向上に向けて取り組む。

教育の外部評価の導入

  • 「カリキュラムの検証等における外部評価の導入」

カリキュラムの検証を含む自己点検・評価体制について、社会からの視点を採り入れるよう、外部評価を導入する。全学としては、大学評価統括本部が主体となり、年1回の外部評価を必須とし、各学部・研究科では、中長期計画の状況を勘案し、評価指標等を作成したうえで、カリキュラムの外部評価を受ける。

学修成果測定指標の策定と活用

  • 「学修成果(Learning Outcomes)指標の開発と授業シラバスとの連動」

DPに示す学生の能力等について、客観的な測定を行い、カリキュラムの改善、FDの充実等に活用する。学科ごとにDPとカリキュラム、DPと各科目の関係性対応表を作成し、指標作成のための枠組みとする。また、授業ごとの「学修到達目標」を、DP 達成のための妥当性の観点から見直す。学修成果測定にあたっては、GPA、各種アセスメントテストといった定量的な指標以外に、学生の成長に対する多面的な測定を行うため、学修者本人による学修到達確認、成長実感などを加味していく。

教育体制・制度の整備

  • 「多様な分野からの高度な能力を備えた教育人材の登用」

学問分野の特性に応じた柔軟な雇用形態を整備し、高度な教育人材を登用する。外部人材の特任教員ポスト創設等により、学部・研究科の教育の特徴をより一層際立たせ、学問分野に応じた教育効果の向上を図る。

  • 「ICT活用支援等の授業改革支援体制の強化」

現状のICTインフラをさらに充実させ、教育の場や機会を柔軟にし、学習可能時間の増加を目指すとともに、カリキュラム設計や教育プログラム開発をより多様なものにする。国内外のMOOCs(Massive Open Online Courses/大規模公開オンライン講座)への参画も視野に入れる。

グローバル化事業の自走化

  • 「東洋大学グローバルサービス株式会社による自走化」

2018年3月に学校法人の100%出資で設立した事業法人「東洋大学グローバルサービス株式会社(TUGS)」は、法人全体のグローバル事業を推進するため、事業による収益を学校法人に寄付金として還元することでスーパーグローバル大学創成支援の補助終了後もグローバル事業を持続可能とするためのものである。今中期計画において、その自走化を一層進める。

学生支援システムの整備

  • 「学生支援システムの整備(施設借用、緊急時対応、拾得物検索、安否確認、防犯)」

今中期計画において大学施設の借用、緊急時の対応、遺失物の検索、安否情報の確認、防犯の推進等のための学生情報システムを整備、改善することで、学生の課外活動を支援し、学生生活の安心・安全を確保する。あわせて窓口業務のスリム化を図り、学生の負担を軽減するとともに、窓口における対面支援の質を向上させる。

08.教育環境整備

情報環境(ICT・IoT・NW 等)整備

  • 「次世代に対応するネットワーク基盤強化」

2020年度に赤羽台キャンパスB地区に竣工する新校舎や、2022 年度に竣工する同キャンパスC地区の新校舎、ライフデザイン学部移転後に再開発し2023年度に竣工する朝霞キャンパスの新校舎など、キャンパスの再編に合わせて必要な情報環境整備に取り組む。

  • 「Society5.0に向けた情報環境整備」

ICT、IoTの活用において不可欠なネットワーク基盤に関し、今中期計画においてネットワーク基盤も大容量、高速化に向けた環境整備を進める。具体的には無線LAN 環境の強化として、アクセスポイントの増設、 Wifi6への移行、 学内ネットワークバックボーンの増速化を5か年計画に従い、年度ごとに進めていく。また、2020年度新型コロナウイルス感染症の対応として実施することになった多様な授業運営方法をさらに発展させることを目指し、情報関連設備を拡充する。

Ⅲ. 社会貢献・社会連携に関する中期計画

身近な地域から遠い世界まで、広く社会と連携し、深く貢献していくためには多分野の「知」が必要である。13学部50学科・専攻、15研究科37専攻を有し、3万を超える学生・生徒が学ぶ東洋大学や附属学校は社会貢献・社会貢献のための十分なリソースを持つとともに、社会貢献・社会連携活動を推進することが責務である大きな教育機関である。

今中期計画では、研究活動と教育活動の高度化が社会貢献・社会連携活動の高度化に繋がることを前提に、教職員や学生が活動の中で奮闘し、より多くの人に明るい未来を届けるための社会貢献・社会連携活動の推進を計画している。

社会貢献・社会連携に関する中期計画

 

01.生涯学習

人生100年時代の学びのサポート

  • 「生涯学習のための多様な機会の提供」

人生100年時代において、「学ぶ→働く→休む」という3ステージの単線的な人生ではなく、様々なフェーズを並行して進む「学ぶ/働く/学び直す」といったマルチステージの人生を送る人々を支援するため、全国各地への講師派遣、資格取得講座、卒業生を中心とした講座の実施等、人生100年時代に合った生涯学習のための多様な機会を提供する。

グローバル時代の幅広い学修機会の提供

  • 「全世代型グローバル教育の提供」

グローバル時代において、大学生だけでなく幼稚園から小、中、高までの児童・生徒、社会人から高齢者まで、すべての世代に向けて幅広い学修機会を提供するため、英会話を中心に、基礎能力やビジネスイングリッシュの向上、TOEIC 等のスコアアップ等を目的とした各種講座に加え、宿泊型のプログラムを実施する。

02.ボランティア活動

ボランティアマインドの涵養

  • 「学生のボランティア活動の推進と支援」

学生のボランティア活動の推進のため、日常的活動、地域おこし、被災地支援、オリンピック・パラリンピック・ボランティア活動等、様々なフェーズのボランティア活動の機会を提供する。また、人間力の向上を目的とした「社会貢献活動入門」等の科目の開講や、全学的なボランティア支援体制の整備等により、ボランティアマインドを醸成するための環境も充実させる。

社会的課題に対応したボランティアの推進

  • 「学生と教職員が共同して進める地域活性化」

社会的課題に対応したボランティア活動の一環として、学生が地域住民とともに課題解決を行う機会を提供し、地域への理解、学生自身の成長、地域で活躍する人材(学生、地域住民)の育成に貢献する。また、ゼミ活動等と連動させることによって、教員の指導の下、地域の課題を分析、質の高い活動を展開し、単年度では解決できない問題の解決に継続的に支援していく。

災害等緊急支援ボランティアの推進

  • 「学生と教職員による首都直下型地震・南海トラフ巨大地震等の対策」

災害等緊急支援ボランティア活動を推進するため、学生ボランティアの育成と支援体制の整備を行う。防災教育の充実、ボランティア経験者数・防災講習会受講者数の増、防災・減災リーダーの育成等によって学生ボランティアを充実させ、学生と教職員が連携・協力したボランティア体制を構築する。

03.アジアのハブとしての貢献

福祉社会デザインの展開

  • 「健やかに子どもが育ち、高齢者が生き生きと、障がい者が障害なく、マイノリティもストレスなく、誰もが住みやすい街で暮らせる社会のデザインを世界に発信」

2023年度に開設する「福祉社会デザイン学部」の研究教育を通じて貢献していく。国内外の研究機関との連携による世界的な教育・研究の実現、また、地球規模の視野と豊かな国際感覚を持った人材の輩出を通じて、日本国内における振興はもとより、広く世界へ福祉社会のデザインを発信していく。日本人によるアジア諸国への展開、留学生による母国への還元、更には、東洋大学のアジアのハブとしての拠点形成による貢献を目指す。

健康社会デザインの展開

  • 「スポーツを通じて人々が繋がり健康を増進する社会のデザインを世界に発信」

2023年度に開設する「健康スポーツ科学部」では、様々なスポーツコンテンツを通じた社会課題の解決を通して、人々の健康や幸福への貢献と高いQOLの提供、人間価値の創造を目指す。それらを日本国内において新興させることはもとより、アジア諸国へも、健康スポーツの科学的情報の提供、ヘルスプロモーションの教育研究の展開、体育科教育・学校保健の指導法の提供等を展開していくことで、アジアのハブとして貢献する。

  • 「栄養を通じて人々の健康を増進する社会のデザインを世界に発信」

SDGsで明文化されている「栄養状態の改善」に基づき、健康関連産業はESG投資に合致する経営に主軸を置く。日本の栄養士養成カリキュラムは、単位互換や人事交流が積極的に行われ始め、ベトナムを起点として東南アジアで創成期の段階にある。これらを踏まえ、2023年度に開設する「健康スポーツ科学部」は国際展開を行っている健康関連産業との共同研究や海外大学との連携を通して、日本国内における振興はもとより、アジア諸国を対象に地球規模の視野と豊かな国際感覚を持った人材を輩出することで貢献する。

04.官、民との連携

学部の教育活動をいかした自治体や企業との包括的な連携

  • 「地域連携プラットフォームに基づく東京都北区との連携推進」

東京都北区との包括協定に基づき組織した地域連携プラットフォームをベースに、2023年度に開設を予定する福祉社会デザイン学部、健康スポーツ科学部の東京都北区をフィールドとした教育・研究を生かし、健康・スポーツ、子ども、高齢者・障害者、地域福祉、まちづくり等の分野に関する連携事業を推進する。

05.ステークホルダーとの連携

保護者と支え合い助け合う関係の構築

  • 「父母・保証人向けサービス向上による東洋ONE TEAM化の促進(保証人マイページの導入)」

保護者との支え合い助け合う関係を構築するため、成績表のダウンロード、就職セミナー映像の閲覧、学費等のキャッシュレス決済等が可能な保証人マイページを導入し、大学と保護者が一体となった学生支援を実現する。併せて、保証人の会である東洋大学甫水会と連携して、学生の各種試合・イベントのチケットの無料配布等限定サービスを行い、東洋ONE TEAM化を促進する。

卒業生と支え合い助け合う関係の構築

  • 「卒業生サービスの向上(卒業生システムの強化)」

卒業生との支え合い、助け合う関係を構築するため、大学主催のイベントへの参加機会の充実、大学に関する情報提供の充実等、卒業生向けサービスを向上させる。また、サービスの認知度アップ、利用の促進によって、卒業生との広く深い関係を構築する。

06.広報活動

「応援したい」と思ってもらえる広報の展開

  • 「学生のスポーツや教育活動等の積極的な配信による、「応援したい」と思っていただける広報の展開」

創立者井上円了の「建学の精神」に基づく活動、スポーツ振興・アスリート支援(東京オリンピック・パラリンピックを含む)、社会連携・社会貢献活動等、本学の特徴的な取組みをWeb メディアを活用して積極的に発信することで、「応援したい」と思っていただける広報を展開し、社会への貢献や、組織の更なる活性化に繋げる。

「期待したい」と思ってもらえる広報の展開

  • 「教育・研究活動の国内外への積極的な配信による、「期待したい」と思っていただける広報の展開」

卓越した教育研究活動や、新しい分野の学部・学科の設置、国内外のさまざまな機関・研究者との連携等、教育・研究に関する本学の先進的な取組みを積極的に発信することで「期待したい」と思っていただける広報を展開し、社会への貢献、教育研究の更なる活性化に繋げる。

Ⅳ. 新規事業計画

教育のグローバル化、人口の減少と地方の過疎化等、教育機関を取り巻く環境の急速かつ激しい変化や、予期せぬ突発的な事態に的確に対応するためには、常に変化に備えた態勢でいることが求められる。社会から求められ、かつ東洋大学をはじめとした各設置学校において必要な教育を展開し続けるためには、何をどのように教育するのが最善かを、常に考えていなければならない。

今中期計画における新規の事業計画は以下の通りであるが、大規模なキャンパスの再編、学部・学科の改編等、2037年の150周年に向けて、今後の東洋大学の在り方に大きなインパクトを与えるものである。

新規事業計画

 

01.赤羽台キャンパスの整備

B 地区開発(校舎建設)
ライフデザイン学部の移転
C 地区開発(アリーナ・図書館等の建設)
D 地区開発(学生寮の建設)

  • 「ライフデザイン学部の赤羽台キャンパス移転」

2021年度に、ライフデザイン学部、ライフデザイン学研究科を現在の朝霞キャンパスから赤羽台キャンパスに移転し、修学キャンパスとする。北区との連携による教育・研究の推進、新設の施設・設備による教育効果の向上と研究環境の充実を目指す。

  • 「赤羽台キャンパス新校舎建設計画(赤羽台敷地B・C)」

ライフデザイン学部移転(2021年)に伴い、赤羽台キャンパス敷地A(情報連携学部使用)隣地の敷地Bへの新棟WELLB HUB-2(床面積 21,980.12㎡、2021年1月竣工)の建設に続き、健康スポーツ科学部、福祉社会デザイン学部の設置(2023年)にあたり、敷地Bの隣地の敷地Cに、体育館アリーナ、実験室、実習室、研究室、図書館、食堂等(計画床面積32,000㎡程度、2023年1月竣工予定)を建設する。新学部設置を見据え、次世代の教育研究環境の実現を目指す。

  • 「学生寮建設計画(赤羽台敷地D)」

赤羽台キャンパス敷地A(情報連携学部使用)隣地の敷地Dに、外国人留学生と日本人学生が混住する学生寮AI-House HUB-4(床面積9,340.03㎡、2022年1月竣工)を建設。この混住型学生寮の建設により、外国人留学生に対する本学のプレゼンスを向上させるとともに、日本人学生との交流の機会を増やすことで、大学のより一層の国際化を図る。

  • 「キャンパス再編・学部改組における情報環境整備」

建設が予定されている赤羽台キャンパスの新棟(赤羽台キャンパス敷地B、C)の情報環境整備を行う。整備にあたっては、ICT 活用計画、ネットワーク基盤強化といった全キャンパスにおける計画を念頭に、データ収集・分析等に適した環境整備を行うことで、Society5.0 時代に求められる教育研究環境の構築を目指す。

02.福祉社会デザイン学部の設置

社会福祉学科の再編:福祉教育の一体化による教育研究の発展
子ども支援学科の設置:現代的課題に対応できる保育専門家の養成
人間環境デザイン学科の再編:デザインを通じた社会課題の改善

  • 「福祉社会デザイン学部の設置」

2023年度に、ライフデザイン学部、社会学部第1部社会福祉学科を改組し、赤羽台キャンパスに「福祉社会デザイン学部」を設置する。福祉系学部学科の統合による福祉系教育体系の一本化、学部・学科、研究科・専攻の教育・研究体系の一体化、北区との全面的な連携による教育・研究の質向上等を目指す。ソフト・ハード両面での福祉の一大拠点とし、国内外、とりわけ「アジアのハブ大学」としてアジアに向けて福祉分野の知見を発信する。

  • 「社会福祉学研究科の再編」

新学部「福祉社会デザイン学部」の設置に伴い、関連する大学院を再編する。改組対象は、現在の社会福祉学研究科社会福祉学専攻、ライフデザイン学研究科生活支援学専攻、人間環境デザイン専攻。新学部の学科・教員構成を基に、研究科・専攻を再編する。

03.健康スポーツ科学部の設置

健康スポーツ科学科の設置:スポーツ科学による健康づくりとアスリートの競技力向上
栄養科学科の設置:栄養科学による健康づくりとアスリートの競技力向上

  • 「健康スポーツ科学部の設置」

2023年度に、ライフデザイン学部健康スポーツ学科、食環境科学部食環境科学科スポーツ・食品機能専攻を改組し、赤羽台キャンパスに「健康スポーツ科学部」を設置する。スポーツ系の学科・専攻の統合、「スポーツ」と「栄養」の連携による高度な健康科学の追求、「健康」と「福祉」の連携、「健康」と「情報」の連携等、総合的なアスリート支援体制の構築を目指す。これからの日本及び国際社会が抱える少子高齢化・人口減少といった諸問題に、スポーツ科学、栄養科学、健康科学等の研究成果によって貢献し、「スポーツの知の拠点」となることを目指す。

  • 「健康スポーツ科学研究科(仮称)の設置」

新学部「健康スポーツ科学部」の設置に伴い、2023年度に、関連する大学院を改組し、「健康スポーツ科学研究科(仮称)」を設置する。改組対象は、ライフデザイン学研究科健康スポーツ学専攻、食環境科学研究科食環境科学専攻。新学部の学科・教員構成を基に、研究科・専攻を再編する。

04.朝霞キャンパスの整備

キャンパスの再開発(校舎建設・保存書庫整備)
板倉・川越キャンパスからの移転

  • 「朝霞キャンパス再整備計画」

生命科学部、食環境科学部、理工学部生体医工学科の移転(2024年)に伴い、朝霞キャンパスに、新棟(計画床面積30,000 ㎡程度、2024年1月竣工予定)を建設する。移転時の学部再編を見据え、次世代の教育研究環境の実現を目指す。また、現在板倉キャンパスで活動する運動部の活動環境の整備も同時に行う。

  • 「キャンパス再編・学部改組における情報環境整備」

建設が計画されている朝霞キャンパス新棟の情報環境整備を行う。整備にあたっては、ICT活用計画、ネットワーク基盤強化といった全キャンパスにおける計画を念頭に、データ収集・分析等に適した環境整備を行うことで、Society5.0時代に求められる教育研究環境の構築を目指す。

  • 「生命科学部、食環境科学部、生体医工学科の朝霞キャンパス移転」

2024年度に、生命科学部、食環境科学部、生命科学研究科、食環境科学研究科を現在の板倉キャンパスから朝霞キャンパスに移転し、また、理工学部生体医工学科、理工学研究科生体医工学専攻を、現在の川越キャンパスから朝霞キャンパスに移転し、修学キャンパスとする。社会が抱える要求に応えることができる多様な人材、新しいアイデアから社会的意義のある価値を創造できる人材、地球規模の視野を持ち考えることのできる人材を育成し、SDGs達成とSociety5.0社会実現への貢献を目指すキャンパス・学部とする。

05.生命科学部の再編

生命科学科の再編:地球環境維持と人類社会の発展
生物資源学科の設置:有用生物資源利用による人類社会の発展
生体医工学科の再編:生命工学技術を応用した生活の質の向上

  • 「生命科学部の再編」

生命科学部(板倉キャンパス)、理工学部生体医工学科(川越キャンパス)の朝霞キャンパスへの移転(2024年)に伴い、現在の生命科学部と理工学部生体医工学科を、新学科を含む新たな生命科学部へと再編する。入学生の多様化促進と連携教育によるカリキュラムの高度化、学問の垣根を超えたプロジェクト研究によるイノベーション、外部機関との共同研究・産学共創による高い研究能力の醸成、学際領域で活躍する優秀な若手研究者の積極的雇用等を目指し、新コース制による「広く、そして、深い教育」を実現する。

  • 「生命科学研究科の再編」

生命科学部、理工学部生体医工学科の再編に伴い、2024 年度に、関連する大学院を再編する。改組対象は、現在の生命科学研究科生命科学専攻、理工学研究科生体医工学専攻。再編後の学部の学科・教員構成を基に、研究科・専攻を再編する。

06.食環境科学部の再編

食環境科学科の再編:低環境負荷で持続可能な食環境の創造
フードデータサイエンス学科の設置:データサイエンスによる食の偏在・ロスの解消
健康栄養学科の再編:次世代のライフスタイルに向けた新たな栄養管理

  • 「食環境科学部の再編」

食環境科学部の板倉キャンパスから朝霞キャンパスへの移転(2024年)に伴い、現在の食環境科学部各学科を、新学科を含む新たな食環境科学部へと再編する。食に関わる全ての問題に対応する唯一の学問領域として、低環境負荷で持続可能な先駆的食環境産業の提案・開発・推進、データサイエンスを駆使した食の偏在・ロスの解消、人間活動の高度化に対応した新しい栄養管理の提案・実現により、「食の高次化」「次世代の食」を提案・実現し、「健康寿命の延伸」を図る。

  • 「食環境科学研究科の再編」

食環境科学部の再編に伴い、2024年度に、関連する大学院を再編する。改組対象は、現在の食環境科学研究科食環境科学専攻。再編後の学部の学科・教員構成を基に、研究科・専攻を再編する。

07.板倉キャンパスの利活用

板倉キャンパスの跡地利用の検討

  • 「板倉キャンパスの跡地利用」

生命科学部、食環境科学部の朝霞キャンパス移転(2024年)に伴い、板倉キャンパスの活用方法について検討・決定する。教育研究施設のほか、運動部合宿所、グラウンドも含めて検討する。群馬県及び板倉町とも協議のうえ、本学にとり有効な活用方法を模索する。

08.社会学部の再編

国際社会学科の設置:ダイバーシティ・マネジメントを担えるグローバルシチズンの育成

  • 「国際社会学科の設置」

2021年度に、社会学部社会文化システム学科を改組し、国際社会学科を設置する。在日外国人数の急激な増加等にみられる日本社会の変化、環境破壊や紛争等国境を超える課題にみられる世界情勢の変化のなかで、多様性を積極的に活用し、課題を創造的に解決してく現場立脚型の「グローバル・シチズンシップ(地球市民としての資質・態度)」教育及び人材育成を目指す。

09.川越キャンパスの整備とアカデミックプランの検討

川越キャンパスにおけるアカデミックプランの検討

  • 「生体医工学科移転後の川越キャンパスにおけるアカデミックプランの策定」

現在理工学部に所属する生体医工学科が朝霞キャンパスに移転することを好機として、2024年4月以降の川越キャンパスのアカデミックプランについて、2025年度以降の学部学科等の再編や、施設の建替え及び改修、設備の更新等も含めて検討し、2023年度中にプランを策定する。

10.大学創立150周年を見据えた計画の策定

創立150周年を見据えた長期計画の策定

  • 「次期中期計画及び創立150周年を見据えた長期計画策定のための体制の整備」

現在、進行中の中期計画「TOYO GRAND DESIGN 2020-2024」が終了する2024年度を見据え、次期中期計画「TOYO GRAND DESIGN 2025-2029」の策定の準備を2023年度下期に開始する際に、東洋大学創立150周年を見据えた長期計画の策定を並行して行うための全学体制を構築する。体制の構築に当たっては全学から広く人材を募り、新しい世代による、新しい東洋大学を描く。

Ⅴ. ガバナンス・マネジメントに関する中期計画

2020年4月施行の改正私立学校法により学校法人のガバナンス強化が求められている。また、年々難しくなる社会情勢の中で学校法人や設置学校の持続可能性を考えれば、法人ガバナンスだけでなく、財務マネジメント、人事マネジメント、ファシリティマネジメントをベースとした各種マネジメントの高度化が必須である。今中期計画においては、ガバナンス・マネジメントに重点を置き、以下の通りの計画を立てている。

ガバナンス・マネジメントに関する中期計画

 

01.法人ガバナンス(ガバナンスコードの遵守)

本法人は、日本私立大学連盟が2019年6月に策定した私立大学ガバナンスコード(第1 版)を踏まえ、本法人において一層の強化が必要と考えられるものについて、今中期計画に位置付けている。

長期的戦略の立案

  • 「国内外の教育研究情勢調査及び大学運営戦略能力の強化」

東洋大学創立150周年(西暦2037年)や、22世紀に向けてどのような学校経営をしていくのかを考えるためには、5年程度の展望では足りず、数十年のタームで大学経営戦略を構築する必要がある。そのため、国内外の教育研究情勢や世界の動向を幅広く意識し、高度な戦略を構築する能力を強化する。

信頼性・透明性の確保

  • 「学校法人東洋大学の総合的な広報戦略策定体制の整備及び戦略策定」

本法人の広報は、大学、各高等学校・各中学校、幼稚園と、設置校ごとに異なる社会的位置づけに鑑み、法人全体の戦略と共通の指針を持たず個別に広報活動を展開している。法人構成校の一体感・接続性を高め、共通した「哲学」を伝え、東洋大学像が社会一般により深く認知されるようになるために、学校法人全体として総合的な広報戦略を策定・検証する体制を整備し、広報活動を推進する。

  • 「情報公開体制の整備」

法令で定められた情報の公開はもとより、本法人における教育研究活動や経営に係る公開すべき情報については、公正かつ信頼性の高い情報を迅速かつ網羅的に発信する必要がある。社会的な説明責任を果たすとともに幅広いステークホルダーの理解が得られるよう公開情報へのアクセス方法やわかりやすさなどを更に工夫するとともに情報公開に関する基準等を整備する。

  • 「コンプライアンス基本規則の整備」

本法人における業務は、法令、社会規範、本法人が定めた諸規則、本法人が策定した行動規範に基づき実行されなければならない。その根幹となる本法人におけるコンプライアンス基本規則を整備し、役員、教職員によるコンプライアンスの徹底を推進する。

  • 「法務業務体制の強化」

グローバル化に伴う法務やキャンパスの更なる整備等はもとより構成員による各種のトラブル等の対応に関しては法令に基づく適切な措置が求められる。法律顧問契約による法律相談窓口を設置しているが、法務部門の部署を設置するなど、迅速かつ的確な法的根拠のもと業務に取り組むことができる環境を整備し強化する必要がある。

  • 「監事監査体制の整備」

改正私学法(2020年4月1日施行)では、監事の機能(権限)が強化されたが、法人ガバナンスの監査体制は、監事監査に限るものでなく本法人に著しい損害を及ぼすおそれのある事象について総合的に対応できるようにする体制や、常勤・常任監事の登用を検討し、より一層内部監査室、会計監査人と連携する体制など、監事監査を支える体制を整備する。

継続性の確保

  • 「役員の権限の整備」

本法人における役員の権限は最終決裁権限者である理事長に集中したものになっており、比較的軽微な案件の処理に対するスピード感を欠くものとなっている。役員の権限を再考することにより、合理性とスピードのバランスをとった意思決定ができるように整備を進める。

  • 「危機管理体制の整備」

震災や新型コロナウイルスの発症など、予期せぬ事態により、一瞬にして事業の継続が困難になりかねない事例が続いている。大きなリスクに対しどのように備え、如何に事業の継続を担保するか、今中期計画において危機管理体制を再整備する。

02.財務マネジメント

健全な財政構造の維持

  • 「健全な財政構造維持のための財政計画の実行」

赤羽台キャンパスの開発や朝霞キャンパスの再開発以降を見据え、事業活動収支差額において持続的に5%程度のプラスを確保する計画の実行とあわせ、減価償却費相当分の確実な減価償却引当特定資産への組み入れを行う。

確実な資金運用

  • 「確実な資金運用」

2018年度に資金運用方針を変更して従来の運用をリセットし、2019年度よりポートフォリオを構築して運用を開始した長期資金運用(5~10年程度)と、一部ファンドの運用を開始している超長期資金運用(10年以上)状況の検証を行い、資産配分及びファンドの見直しを行う。

寄付募集の促進

  • 「『応援したい』と思っていただける募金活動の展開」

現時点で事業収入の8割が学納金収入となっている本法人において財政の健全性を維持するためには、新たな収入源の確保が必須である。法人全体のグローバル化やスポーツの強化等によりブランド力が高まってきている状況は寄付募集の促進の格好の時機であり、今中期計画期間で態勢を整備する。

03.人事マネジメント

グローバル化への対応

  • 「教職員のグローバルマインドの醸成」

スーパーグローバル大学創成支援事業の採択期間終了後においてもグローバル化を牽引する大学となるため、教職員のグローバルマインドの醸成を一層推進する。具体的には語学力の強化にとどまらず、異文化理解や海外大学の視察など、より実践的な研鑽を推進する。

ダイバーシティ&インクルージョンの推進

  • 「多様な人材を活用した研究力・教育力・社会貢献力の強化」

本学の研究力・教育力・社会貢献力の強化においては、他大学や公的研究機関及び民間企業等との連携が必要である。具体的には研究者等がそれぞれの機関における役割に応じて研究・開発及び教育に従事することを可能にするクロスアポイントメント制度を導入する。

働き方改革の推進

  • 「ワークライフバランスの実現」

高齢者雇用安定法の改正に対応し、少子高齢化に伴う労働力不足に対応するため、高齢者の労働力活用を促進する。具体的には職員の定年年齢を65歳に引き上げるための環境を整備する。また、働き方改革関連法に基づく法令遵守の観点から就業規則等において未整備となっているものについて検討を進め、ワークライフバランスの充実を図る。

安全で快適な就労環境の実現

  • 「ハラスメントの防止」

年々増加の傾向にあるハラスメント事案を抑止するため、現在の「ハラスメントの防止等に関する規程」を改正し、ハラスメントに起因する懲戒案件事例等の学内公表を行う他、教職員向け研修会の内容の見直し等を行い、ハラスメントの防止を推進する。

教職員の高度化

  • 「専任職員育成システムの改善」

「理想のリーダー像に必要な資質」を身に付けることを目的として、新卒の1年目から10年目、さらに役職別に整備してきた従来の職員研修プログラムのうち、今後大学職員として求められる能力を検証した上で、職場の中心となる管理職の研修や中堅職員層の研修プログラムを改善する。とりわけ、業務のDXのために今後大学職員に広く求められるITスキルの習得について、INIAD(情報連携学部)と連携しながら研修内容を検討して実践する。

04.ファシリティマネジメント

施設の長寿命化と予防保全

  • 「施設設備整備計画(中期5カ年計画)の実施」

大きな投資を伴う事業計画を戦略的かつ計画的、効果的に実行するためには、経常的な中規模修繕等の施設設備の整備を計画的に実施することが必要である。今中期計画期間における具体的な「施設設備整備計画」を立てて施設設備の長寿命化と予防保全に努め、毎年見直しながら各年度の事業として予算に組み入れていく。

地球環境の保全

  • 「温室効果ガス対策」

法人所有施設の有効活用と温室効果ガスの排出削減の両立は簡単ではないが、本法人では両者のバランスを取りながら、地球環境の保全に努めていく。「省エネ」、「脱炭素エネルギーの利用拡大」を国や自治体の取り組みを踏まえて推進し、目標値を設定して温室効果ガスの発生量を削減する。

施設管理の高度化

  • 「施設管理の高度化(品質、安全と環境、コスト)」

施設設備を計画的に高度に管理するため、施設管理業務の仕様を明確にし、仕様に見合った適切な価格で安全と環境に配慮した管理業務を委託する。