Ⅰ.研究に関する中期計画

研究今期の中期計画においては、研究の高度化が教育の高度化を牽引し、研究活動と教育活動の高度化が地域貢献・地域連携活動の高度化を推進することで、「地球社会の明るい未来を拓く(他者のために自己を磨く)」ことを目指している。とりわけ起点となる研究活動においては主体的に社会の課題に取り組むことで、新しい価値を創造し明るい未来を描くことを期待している。

しかしながら複雑化した現代社会の課題に取り組むためには、一つの分野の研究では足りず、多分野の研究者がチームとなって課題に対峙することが必須である。現在、東洋大学では重点研究プログラム制度を設け、多分野の研究者で組織された申請研究の中から、大学として取り組むべき方向性に合致したプログラムを採択して重点的に予算を配分し、その成果をもって社会に貢献することを目指している。研究に関する今期の中期計画は、この重点研究プログラムを中心に、組織的に取り組むものを以下のように推進していく。

1.共存共栄の世界を創るための価値創造

・SDGs の達成に貢献する研究

「開発途上国における生活環境改善による人間の安全保障の実現に関する研究-TOYO SDGs Global 2020-2030-2037-」

この重点研究推進プログラムでは、多分野の専門家の知見を活かし、アジア、アフリカ、中南米、太平洋の途上国の生活環境の改善に取り組む実践を通じて、インフラ建設、経済、社会、マネジメントなど、SDGs の多くの目標の達成に貢献することを目的としている。

「極限環境微生物の先端科学をSDGs達成のために社会実装する研究」

この重点研究推進プログラムでは、高温、高 pH、高塩濃度、放射線、有機溶媒といった過酷な極限環境でも生育可能(利用可能)な極限環境微生物(Extremophiles)を新たな生物資源として研究の対象とし、SDGs達成のための課題解決策の切り札として社会実装し利用することを目的としている。

・グローバルな社会課題に取り組む研究

「持続可能なインフラの提案によりグローバルな協調の再構築に貢献する研究」

この重点研究推進プログラムでは、深刻化する世界の社会経済インフラの不足や老朽化対策として、「経済性・社会性評価アプリケーション」制作を行い、各国政府に持続可能なインフラメニューと実現戦略の提案を行うことを目的としている。

「産業のイノベーション力の創造的開発とそれを強化する社会システムの革新研究」

2016 年1 月に開設したグローバル・イノベーション学研究センターの目的は、国際社会の多様なシステムのイノベーション理論と方法の研究、その活動を担う人材育成方法の研究であり、未来世代のために真に公正で豊かな、活力に満ちた国際社会の動向を先導する役割を担うことを目指すものである。今中期計画では、諸外国との知的交流の機会提供を目的としたシステム構築に注力する。

・アジアの発展に資する研究

「インドネシア国におけるJICA 政策提言研究」

東洋大学と JICA (国際協力機構)との間の政策提言研究に関する契約に基づき、インドネシア国の地方自治体における PPP (公民連携)案件の推進に必要なボトルネックの抽出・改善と関係者の能力強化を通じて、同国の地方自治体における PPP 推進のために必要な諸点について政策提言を行う。

2.すべてのいのちを守るための価値創造

・幸福という概念における「個」と「全」の関係性にみる価値研究

「つながりがある社会を支える価値と支援システムに関する研究」

この重点研究推進プログラムでは、加齢や障害のために身体的・知的機能に制約がありながら、社会的な支援につながらない人たちの実態や要因等を解明し、ICT 等を用いた持続可能な包括支援システムの構築を行うことを目的としている。

・医療・健康福祉や食環境、生命科学分野等の先進国をリードする研究

「多階層的研究によるアスリートサポートから高齢者ヘルスサポート技術への展開~社会実装に向けての研究組織連携の構築~」

この重点研究推進プログラムでは、多階層的に生体のストレス反応、メンタル不調を可視化し、IoT によるアスリートサポート技術、さらには高齢者の健康サポート技術を確立するとともに、その研究成果を産官学連携により、スピーディーに社会実装化を行うことを目的としている。

・多様性ある社会システムの実現に向けた研究

「ジェンダーによる差別のない社会の実現への貢献」

男女共同参画状況の把握や推進の一助になることを目指し、2017 年に開発した、男女別の平均継続勤務年数、管理職に占める女性労働者の割合など7 項目の、企業や団体で推進されている女性の活躍状況を客観的に評価する指標「女性活躍インデックス」を用い、ジェンダーフリーな社会の創造に貢献する。

「多様性と調和に価値を置く多文化共生とダイバーシティマネジメントに関する研究」

2021 年4 月に開設予定の社会学部国際社会学科では、多様性と調和に価値を置く多文化共生とダイバーシティマネジメントに関する研究を推進し、もって多様性ある社会システムの実現と、研究成果をもって学部教育では多様な価値を理解し、多文化共生社会の確立を目指すglobal citizen を育成する。

3.人と情報を高度に融合させた価値創造

・AI・IoT 等の情報通信技術を国民生活分野に資する独自研究

「都市のIoT 化のためのプラットホーム構築の検討プロジェクトへの参画、推進」

情報連携学学術実業連携機構(INIAD cHUB)は、情報連携学部(INIAD)とINIAD 外(企業・団体・組織)との「オープンな連携」のための結節点として2017 年4月に設立された。EU との都市のIoT 化のためのプラットホーム構築プロジェクトCPaaS.io などを経て、今中期計画においては、東京都や北区、UR 都市機構と連携し、都市のIoT 化のためのプラットホーム構築の検討プロジェクト推進を始めとして、「オープン・イノベーション」を加速することを目指している。

・異分野融合の研究推進

「「文・芸・理の融合」の新学問領域の創造」

高いレベルで「文・芸・理」の知恵を融合したIoT 時代のサービス構築は一人で全てを行うことはできない。必要なのは、自分の得意分野を確立した上で、他の分野の人とも高度な連携をしプロジェクトを達成できる能力である。2017 年度に開設した情報連携学部(INIAD)は、その「文・芸・理」の連携のあり方を研究する「情報連携学」を創造し、その実践教育を行う。

4.哲学を基礎とした価値創造

・哲学と科学の融合から導かれる価値創造

「22 世紀の世界哲学の構築に向けて」

この重点研究推進プログラムでは、東洋大学の建学の理念である「諸学の基礎は哲学にあり」を22 世紀まで社会に発信し続けるために、閉鎖的な哲学研究のあり方を脱却し、主体的に社会の課題に取り組む哲学を理論と実践の双方から提示することを目的としている。

・井上円了理念の継承

「井上円了研究の世界的研究拠点ネットワーク組織化」

2021年4月に井上円了哲学センターを設立することにより、創立者井上円了博士の建学の精神、教育理念、思想及び事績の研究を推進し、それらの普及を図ることにより、哲学館以来の東洋大学の特性を内外に示し、その歴史と伝統を継承し発展させて、世界及び日本の文化の向上に貢献することを目的として、今中期計画において井上円了研究の世界的研究拠点ネットワーク組織化を推進する。さらにオンラインやオンデマンドによる公開講座や出張講座の拡充等、リカレント教育における手法を革新することにより、その世界展開を目指す。

5.知的財産の創出(ベンチャー)

・知的財産の実用化

「熱中症の予防、軽減のための機能性食品の開発,微生物を利用した廃水処理技術の開発」

現在、生体医工学研究センターで進められている熱中症対策(予防)飲料や食品の開発成果は、食品・飲料・製薬企業との共同研究で実用化する。すでに暑熱ストレスに対して保護作用のある食品成分を発見(特許登録)しており、実用化が期待されるものである。

「バイオミメティクス(生体模倣)を取り入れた国産カヌーの開発」

本プロジェクトでは、人間工学・運動生理学・流体力学・バイオミメティクスによる大学の知および産業界が有する技術を融合させた産学連携による国産初の競技用カヌーの開発を行っている。船艇流体力学およびバイオミメティクスの応用により生物の機能を最大限に生かし水の流れを掴む設計を行い、オリンピックなど国際試合での活躍が期待される。

「バイオミメティクスによるウイルス感染症簡易検出システムの開発」

生体と人工物は接触する以上、必ず境界面(バイオ界面)が存在する。生体医工学研究センターで進めているバイオ界面とバイオミメティックスに関する研究の成果は、バイオセンシングに資するものであり、将来的には迅速・簡便・低コストにウイルスを検出できる次世代型ウエアラブルデバイスの開発が期待されるものである。

・大学発ベンチャーの推進

「大学発ベンチャーの起業、ファンドの設立」

各種の研究成果を活用した大学発ベンチャーの起業、ファンドの設立を今中期計画の期間に5 件実施する。

「ベンチャー起業の支援」

本学学生や卒業生の若い起業家を支援し、今中期計画中に資金支援型、コンサルテーション型、関連企業・人材紹介型の3 つのタイプでベンチャー企業を支援する体制を整備する。

・産官学連携推進

「産官学連携の活性化」

産官学連携推進センターを中心に共同研究、受託研究、技術移転・ライセンス、成果有体物の提供、奨学寄付等の形態で産官学連携を推進し、特に受託研究・共同研究の件数と研究費収入の向上を目指す。具体的には今中期計画において、受託研究・共同研究において、国内大学上位30 位以内に入ることを目指す。

6.制度・体制の整備

・研究支援制度・体制の整備

「論文投稿支援制度」

研究の国際化を促進し、本学の国際的なプレゼンスの向上に寄与することを目的に、国際学術誌へ投稿を行う際に必要となる経費の助成を拡充する。また、今中期計画において、論文投稿の基本的な技術、アクセプト率の向上、リジェクトの修正等の講習体制を整備する。

「研究専念制度の実施(インセンティブ)」

研究業績の高い研究者には、授業や学部・研究科の委員会業務等の校務の負担を軽減する等の配慮を行い、今中期計画において、研究により専念できるような制度の設計を行う。

「論文発表数、外部研究費獲得額等の研究成果に基づく研究予算の重点配分の実施(インセンティブ)」

論文の発表数や被引用数が多い、また、外部研究費の獲得額が多い等の研究業績が特に高い教員に対しては特別に配慮し、今中期計画において大学の研究予算をより重点的に配分できる制度の設計を行う。

「国際学術誌への論文投稿数の増加及びFWCI 値の向上策の検討とそれに基づく助成制度の実施」

国際学術誌への投稿数の増加、論文の被引用数を基にした影響力を表すFWCI 値の向上のために、今中期計画において、教員に対してのインセンティブ、講習、助成制度について制度の設計を行う。

・外部資金の獲得支援

「URA による研究計画調書のライティング支援」

外部資金獲得のための研究計画調書等の作成時に、URA によるコンサルティングやライティングサポートを行う体制を今中期計画において整備し、外部資金の獲得を支援する。

「URA による研究シーズの探索と外部研究費とのマッチングの実施」

外部資金獲得のための教員の研究シーズの探索と外部研究費のマッチングをURA(ユニバーシティ・リサーチ・アドミニストレーター)によって行う体制を、今中期計画において整備し、外部資金の獲得を支援する。

・優秀な研究者の獲得支援

「研究人材モビリティ増大(クロスアポイント制度等)」

クロスアポイント制度等も含め、国内外の研究人材の交流を増加させる体制を、今中期計画において整備し、研究のイノベーションやグローバル化を支援する。

「採用の柔軟化により研究の実績に基づく研究人材の獲得(研究専念人材)」

現行の制度では専任教員は学部・研究科の教育を担当する責務がある。今中期計画において、卓越した研究業績を上げている者を研究に専念する人材として採用を可能にする等、採用の形態を柔軟化する制度の設計を行う。

「戦略的な海外研究派遣と研究ネットワークの形成」

国際共同研究プロジェクトを推進するために、研究業績を考慮し、海外特別研究(サバティカル)を行う研究者、派遣先等を戦略的に決定する体制を、今中期計画において整備し、研究のグローバル化を支援する。

・図書資料の充実

「貴重資料の組織的な収集」

東洋大学図書館に所蔵する貴重書は、東洋大学の研究・教育活動を支え、学術機関として社会において果たすべき東洋大学の役割の一端を担っている。この貴重書をさらに充実させるために、貴重書の収集方法を改善し新たな方法を導入したが、今中期計画においてその効果を検証し、より本学に適した貴重書の収集に努める。


研究教育社会貢献・社会連携新規事業ガバナンス・マネジメント