総長

学校法人 東洋大学 総長 福川 伸次

メッセージ

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、これまでの感染症よりも各段に深刻な脅威を世界に与えています。病原体の解析も、ワクチンの製造も、今後の調査と研究が期待されるところですが、日本ではとりあえず「3密」回避という伝統的な手法で何とか食い止めています。本学においても、教職員と学生の方々の協力でオンライン授業の実施に切り替え、教学水準の維持に努めています。

私は、この問題が発生したとき、1994年に国連開発計画(UNDP)が提案した「人間安全保障」を思い出しました。これは、政治及び経済の安全保障と並んで、貧困、感染症、健康障害、環境破壊、自然災害など「人間」生活への危険が増大していることへの警告でした。国際連合は2015年に「持続可能な開発目標(SDGs)」を採択しましたが、これも「人間安全保障」の重要性に根差したものです。

国際社会においては、コロナウイルス発生の原因、感染の経路、検査方法の改善、ワクチンの開発、治療体制の改革などをめぐって、活発な議論と研究活動が展開されています。我々は、医療研究の国際協力によって一日も早く解決方策を見つけ出さねばなりません。

感染に悩む各国は、感染を防止するため、当面、移動の禁止、都市の閉鎖、接触の抑制、オンライン教育、在宅勤務などの対策で対応せざるを得ませんでしたが、その結果、経済は停滞し、国際信頼が崩れ、深刻な状態にあります。構造的に改革するため、「デジタル・ニュー・ディール」とでもいうべき革新的手法で世界の政治、経済の再建の道を見出すことが喫緊の課題です。

人類は、感染症以外にも、自然災害、地球温暖化、生活環境の悪化など多くの危機に直面します。こうした人間安全保障リスクに加えて、政治上の安全保障リスク、経済上の市場リスクも高まっています。我々は、総合的な安全保障の確保に向けて国際社会の協調を取り戻さなければなりません。

その根底で重要な役割を果たすものは、人間価値尊重の哲学であり、国際協調の精神であり、人間能力高揚の努力であります。私は、本学が創立者井上円了先生の教えを生かし、国際社会に協調の精神と革新の意欲を取り戻すことに貢献することを期待しています。

2020年7月

 

略歴

1955(昭和30)年 4月

通商産業省入省

1986(昭和61)年6月

通商産業事務次官

1990(平成2)年 6月

株式会社神戸製鋼所代表取締役副社長

1994(平成6)年 6月

株式会社神戸製鋼所代表取締役副会長

1994(平成6)年11月

株式会社電通顧問、株式会社電通総研代表取締役社長兼研究所長

2003(平成15)年3月

学校法人 東洋大学理事

2012(平成24)年12月

学校法人 東洋大学理事長

2018(平成30)年12月

学校法人 東洋大学総長