ショートヒストリー東洋大学
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視学官のヨーロッパ派遣という(菊池大麓は津山藩の出身で、視学官の隈本有尚の大学時代の学部長である)。このときの「穏やかならぬミュアヘッドの学説を完全な倫理として教授したことに問題がある」という意見を受けて、「授業で説明を加えず、批評をしなかった」ことを「過失」と省議で決議して、哲学館の無試験検定の認可を取り消したが、自分としては「教授法を改正すれば、認可の取り消しにまでおよぶことはない」という考え方であったと、隈本は語った。二月三日と四日に、中島徳蔵はミュアヘッドの学説が「不穏当である」との文部省の考え方が明らかになったとして、『読売新聞』に反論を展開した。二月一六日、『時事新報』に「哲学館事件に関する文部省当局者の弁疏(弁解)」が掲載され、文部省の見解が公表された。文部省は、視学官の報告を会議にはかった結果、哲学館は国体にそぐわない危険な内容の講義をしたのだから、他校と比べて格別な特権を与えておく必要もないと決議し、それで無試験検定の認可を取り消したのだと説明した。80   

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