ショートヒストリー東洋大学
81/326

文部省の反論翌二九日、文部省は『読売新聞』に「当事者たる隈本視学官の談」として反論を発表した。隈本は、「もし目的が善ならば手段は構わぬとすれば、伊庭想太郎や島田一郎、来島恒喜、西野文太郎も否認されぬわけとなり、日本の国体上容易ならぬことになりましょうから、学説は学説として、講師たる人は学生の誤解を避けるため、説明を加え、批評を添えねばなりませんが、これをせぬのは注意を欠いたもので、文部省はこれを過失と認めたのです」と主張した。ここに出てくる人物の、伊庭想太郎は星亨元逓相刺殺事件、島田一郎は大久保利通参議斬殺事件、来島恒喜は大隈重信外相襲撃事件、西野文太郎は森有礼文相刺殺事件のそれぞれの犯人で、いずれもテロリストである。またこの記事の前段では、文部省での手続きがこう記されていた。哲学館での試験終了後、文部省に帰り問題を指摘した意見書を上申し、その後、菊池大麓文部大臣がそれを取り上げ、哲学館への事実確認の手続きを経て、大臣が「参事官ならびに学者に諮問」した第三章 「哲学館事件」79   

元のページ  ../index.html#81

このブックを見る